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2021.11.26
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南アフリカ、ワクチン接種が遅れるなかで「新たな」変異株が登場
~米FRBの「タカ派」傾斜やトルコの無鉄砲な政策という環境のなか、ランド相場に新たな悪材料~
西濵 徹
- 要旨
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- 南アフリカでは、昨年来新型コロナウイルスの感染が度々拡大する一方、足下のワクチン接種率は極めて低い状況にある。こうした状況にも拘らず新規陽性者数は7月上旬を境に頭打ちしてきた。しかし、今月半ば以降新規陽性者数が急拡大するなか、保健当局が同国で「新たな」変異株が発見されるとともに、感染再拡大の元凶となっている可能性を明らかにした。現時点で新たな変異株の感染力などは未知数だが、世界的な感染動向が急激に悪化するリスクはある。国際金融市場では米FRBの「タカ派」への傾斜に加え、トルコの無鉄砲な政策運営を機に経済のファンダメンタルズが脆弱な新興国で資金流出が強まっている。南アもトルコ同様の構造を抱えるなか、新たな変異株という悪材料も重なりランド相場は厳しい状況が予想される。
南アフリカでは、昨年来の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)に際して、世界経済の減速やそれに伴う国際商品市況の低迷の影響に加え、同国でも感染が拡大して都市封鎖(ロックダウン)や国境封鎖など厳格な感染対策が実施されたことで、景気に急ブレーキが掛かる事態を余儀なくされた。南アフリカにおいては、感染拡大が広がったことで感染力の強い変異株(β株)が発生するとともに、年明け以降は別の変異株(γ株)の流入を受けて感染が再拡大するなど、その度に政府は感染対策を目的とする行動制限に追い込まれたものの、実体経済への悪影響を最小化すべく都市封鎖など強力な対応は回避してきた。なお、南アフリカ国内における新規陽性者数は変異株の流入を理由に6月以降急拡大したほか、新規陽性者数の急拡大による医療インフラのひっ迫化を受けて死亡者数も拡大ペースを強めるなど感染動向が急速に悪化する動きがみられた。他方、欧米や中国など主要国においてはワクチン接種の進展が感染拡大の一服や経済活動の再開を後押しする動きがみられるものの、南アフリカを含むアフリカ地域においてはワクチン接種が遅れる状況が続いており、今月24日時点における完全接種率(必要な接種回数をすべて受けた人の割合)は23.80%、部分接種率(少なくとも1回は接種を受けた人の割合)も28.42%に留まるなど、ワクチンへのアクセスが極めて悪い様子がうかがえる。こうした状況にも拘らず、南アフリカ国内における新規陽性者数は7月初旬にかけて拡大ペースを強めたものの、その後はワクチン接種が極めて遅れるなど厳しい状況が続くなかでも一転して鈍化する動きをみせてきたほか、医療インフラのひっ迫度合いの後退を受けて死亡者数の拡大ペースも鈍化するなど感染動向は改善してきた。結果、人口100万人当たりの新規陽性者数(7日間移動平均)は今月初めに4人となるなど、ピーク(335人(7月8日時点))から大幅に低下するなど、感染収束が進むと期待された。しかし、今月半ばを底に新規陽性者数は再び拡大傾向に転じるなど一転して感染動向は変化しており、なかでも首都プレトリアや最大都市ヨハネスブルクのある北東部のハウテン州が感染拡大の中心地となっている。事実、今月25日時点における人口100万人当たりの新規陽性者数(7日間移動平均)も61人となっており、半月余りの間に急激に感染動向が悪化している様子がうかがえる。こうしたなか、国立伝染病研究所などが共同で同国において『新たな』変異株が発見されたと発表しており、感染拡大の中心地となっているハウテン州をはじめ全9州で感染が広がっている可能性のほか、隣国ボツワナや同国との直行便がある香港で確認されており、いずれも南アフリカからの旅行者が介在している模様である。この発表を受けて、英国は南アフリカのほか、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、レソト、エスティワニの6ヶ国との直行便の乗り入れを一時的に禁止するとともに、これらの国々からの帰国者に隔離義務を課すことを決定している。WHO(世界保健機関)は変異株の影響を見極めるには数週間掛かるとの見通しを示しているほか、感染力やワクチンへの耐性などについては未知数である一方、タンパク質の変異数が「これまでにないほどある」との情報も伝えられるなど、今後の世界的な感染動向に悪影響を与える可能性がある。足下の国際金融市場においては、米FRB(連邦準備制度理事会)が『タカ派』傾向に傾くとの見方を反映して米ドル高圧力が強まるなか、トルコ中銀による『無鉄砲』な政策運営を契機に経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が脆弱な新興国を中心に資金流出が強まる動きがみられる。結果、南アフリカでは今月18日に中銀が利上げ実施を決定しているものの、経済のファンダメンタルズの脆弱さが注目されるなかで通貨ランド相場は調整の動きを強めており(注1)、今後は通貨防衛の観点からさらなる利上げが迫られる可能性が高まっている。トルコ・リラを巡る不透明感が一段と高まる動きがみられるなか(注2)、トルコと同様に経済のファンダメンタルズの脆弱さが際立つ南アフリカについても資金流出の動きが強まる可能性があるほか、しばらくは新たな変異株の発見という悪材料も重なり一段と厳しい状況に追い込まれることも懸念される。



注1 11月19日付レポート「「カネ余り」の手仕舞いによる利上げ圧力に晒される新興国の体力測定」
注2 11月26日付レポート「底のみえないトルコ・リラ相場に「光」は存在するか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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