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- 内外経済ウォッチ『日本~世帯の高齢化が消費を弱くする~』(2025年8月号)
あまりにも当たり前のことだが、日本の家計は著しく高齢化している。この高齢化が最近の消費の弱さにも強く影響している。
以下の分析は、基本的に総務省「家計調査」(2人以上世帯、2024年)のデータを用いている。本当は単身世帯を含んだ総世帯ベースを使った方がよいのは分かっているが、世帯分布の詳細が区分されていないので、やむなく「2人以上世帯」を用いていることをお許し願いたい。
まず、世帯主年齢別にみると、最も割合(ウエイト)が高いのは、70歳以上である。2024年は34.0%に達している。「3世帯に1世帯が70歳以上」という事実にびっくりすると思う。2014年(10年前)は26.9%、2004年(20年前)は16.3%だった。今の70歳以上には、1947~49年に生まれた団塊世代に該当する人々が多い。要するに、人口のボリュームゾーンをつくってきた団塊世代が20年前は56~58歳、10年前は66~68歳、現在は76~78歳へと移行したのが要因だ。加齢に伴って、完全な年金生活者になったので、その購買力が著しく低下したのだ。
高齢化の影響はさらに将来も続いていく。勤労者のライフステージ別の年収をみると、50歳代前半をピークに下がっていき、60歳代は非正規化してさらに下がる。現在、50歳代後半のバブル世代やそれより若い団塊ジュニア世代が、今後、ライフステージの年収ピークとなる50歳代前半を過ぎて、年収減少期に入ると、世帯全体の稼得収入は着実に減っていくだろう。消費水準も2030年頃には相当落ちる可能性がある。
賃上げの限界
こうした悲観論を述べると、賃上げにより若年世代の稼得収入が向上するではないかと反論されるだろう。しかし、40歳代以下の世代の人数は、以前の同年代よりも少ない。すでに、30・40歳代の人数は10年前、20年前よりも減っているのだ。つまり、団塊ジュニアや第二次ベビーブーマーと呼ばれる世代の後の人々は、その人数が漸減している。賃金を総体として捉えると、賃上げ効果よりも人数減少効果の方がマイナス・インパクトが大きい。逆に言えば、わが国は若年人口が減少していく中では、相当ハイペースな賃上げを20~40歳代にかけて行う必要がある。さらに、50・60歳になって給与が年齢を理由にして切り下がるシステムを改善することが望ましい。
社長さんも減った
昔、バブル期にはサラリーマンよりも、自営業や個人事業主などが遥かにリッチだった。近年は、彼らの人数も著しく減り、さらに高齢化が進んだ。総世帯の構成でも、自由業者、商人及び職人、法人経営者、そして自営業などのウエイトは、2024年は11.5%だ。2014年は17.2%、2004年は19.9%だった。背景には、長期不況でスモールビジネスの苦境が続き、新しく自分で自営業を始めようという人が減ったこともある。その結果、彼らが支えてきた消費市場もシュリンクしたのだ。贈答品や接待サービスの分野は打撃が著しい。
昔はよく飲食店には「社長さん!」と呼ばれるお客さんが数多くいた。法人経営者のウエイトは、2024年2.0%、2014年3.0%、2004年3.0%となっている。2024年の法人経営者の人数は大きく減っているようだ。自分で起業して法人経営者になる人が減っていることもあるだろう。日本は起業する人の割合が少ないことは以前から指摘されてきたが、少子化が進んで若年人口が減ることは起業する人を漸減させるだろう。人生の中で何度もやり直しがきくのは、シニアの年代よりも若年層だからだ。
人口に占める年金生活者が増えると、所得格差は拡大する。もっとも、富裕層の人数も減って格差は広がりにくくなるが、個人消費市場は活力を失い、格差拡大より悲惨な状態と言える。すべてが高齢化のせいではないとしても、そうした悪い流れが働いていることは間違いない。
熊野 英生
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

