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- 花見コスト指数は25.0%も高くなっている
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桜が満開になる季節がやってきた。そこで、お花見に携帯する食料品・飲料で構成された「花見コスト指数」を作ってみた(2025年4月の作成データを更新)。2020年平均に比べて、2026年2月の指数は25.0%も上昇していた。砂糖、食用油、米価格などの原材料コストの上昇を受けたものである。こうした上昇を受けて、お花見の予定支出額は少し削減されているようである。
さらに上昇する花見コスト
お花見のシーズンがやってきた。東京の桜の満開は、3月26日頃になるそうだ。平年よりも5~10日ほどタイミングが早まるという。しかし、私たちがお花見を楽しむ環境は、①ガソリン高で外出コストが嵩むことと、②お花見に持っていく食べ物・飲み物のコスト上昇、という両面で逆風が吹いている。春の行楽消費を冷やすような逆風でもある。
筆者は、2025年に花見コスト指数を作成したが、今年(2026年)も通信社からの依頼があったので、データを更新してみた。すると、2020年を基準とする花見コスト指数でみて、直近の2026年2月は1.250倍(25.0%上昇)になっていた(図表1、2)。昨年と比べてもさらに上昇している格好である(2026年2月の前年同月比では4.2%上昇)。2020年平均の消費者物価指数に比べて2026年2月の指数は、1.122倍(12.2%上昇)になっているから、約5年間比較での伸び率は約2倍のペースということになる。


さて、この花見コスト指数とはどういった内容なのか。改めて説明すると、お花見で持っていく代表的な食べ物と飲み物を14種類選んで、その価格指数を加重平均したものである。14種類の品目は、①おにぎり、②弁当、③すし弁当、④調理パン、⑤からあげ、⑥やきとり、⑦だいふく類、⑧まんじゅう、⑨ポテトチップス、⑩茶飲料、⑪炭酸飲料、⑫ビール、⑬ワイン、⑭チューハイ、で構成されている。この14種類を消費者物価指数の構成ウエイトを使って加重平均した指数が、花見コスト指数である。
この構成品目の上昇率を高い順から並べると、まんじゅう(46.1%)、炭酸飲料(45.7%)、おにぎり(45.0%)、ポテトチップス(42.0%)、だいふく餅(39.8%)の5種類が特に高い(図表3)。ここからは、過去5年間での食料品の物価上昇についての傾向が浮かび上がる。すなわち、原料になっている砂糖、食用油、米価格、プラスチック容器などの高騰を受けたものであろう。必ずしも上位ではないが、からあげ(25.9%)、やきとり(21.8%)は、鶏肉の高騰を受けている。鶏は、エサの大豆・トウモロコシがやはり国際商品市況の上昇を受けて上がっていることで、育成コストに跳ね返っている。円安で輸入エサ代が上がっている側面も大きい。

全体的にみると、米以外の種類では、円安と原料の国際市況が高まって、コストプッシュ・インフレが進んでいる要因が背後にはある。お花見の費用もまた見えないところで、国際的なインフレ傾向の悪影響を如実に受けていることがわかる。
原油高も波及してくる
砂糖、食用油の市況高騰の背景には何があるのだろうか。ここには、過去5年間を通じた少し長いスパンでの供給要因の変化がある。砂糖は、世界的な産地であるブラジルやインドのサトウキビの不作がある。食用油も、ウクライナ侵攻でひまわり油の供給が制約されて、大豆・菜種など穀物から取れる食用油の高騰が起こっている。食糧はそうした海外情勢の変化を敏感に受けている。
そして、現在でも、原油が急騰したことで砂糖の市況はつれ高している。その理由は、バイオ燃料の高騰があるからだ。ブラジルなどでは原油が高騰すると、その代替品になり得るサトウキビで作ったバイオ燃料が上がる。すると、砂糖を作るサトウキビの供給が細って、砂糖価格も上がる。食用油も同様にバイオ燃料の原料高騰の影響を受ける。今の花見コスト指数にはすぐに影響してこないが、今後も原油高騰が続くとすれば、まんじゅう、だいふく類、ポテトチップスは上がるだろう。炭酸飲料もプラスチック容器の原料高騰によって価格が上がるだろう。非常に頭の痛い食料品のインフレである。
行楽支出は減少か?
お花見全体支出はこうした物価高を通じてどうなりそうだろうか。調査会社インテージのアンケート(全国2,500人対象)によると、3月時点での予定支出額は6,383円(前年調査より▲13.8%減少)になっていた。コストは上昇しているが、支出全体は減少している点は驚きである。
また、ウェザーニュースのアンケートでは、2026年の予定額は2,730円で、2025年(2,997円)に比べて▲8.9%減少になっている。ともに、昨年比では支出減少となっていて、消費者の財布のひもはコスト上昇を受けて引き締まっていることがわかる。
春闘の集中回答日(3月18日)を受けた賃上げ率(含む定期昇給)は、連合第1回集計(3月23日発表)が5.26%(前年第1回集計5.46%)と高い結果になっている。この数字からは、着地の最終集計でも5.0~5.1%の伸び率が期待できることがわかる。このことは、家計の物価対応力=レジリエンシーを高めるものと理解できるが、まだ物価高のマイナス・インパクトの方が大きい可能性も感じられる。
まだ継続するインフレ圧力
帝国データバンクの調査では、195社を対象にしたヒアリングでは2026年4月に値上げされる食料品の品目数は2,516にもなるそうである。昨年に比べると、値上げペースはいくらか鈍化するようにみえる。しかし、現在の原油高・円安の傾向はそれに再び拍車をかける可能性が高い。石油製品を扱う企業では、2月28日に始まったイラン攻撃の影響がじわじわと浸透し、原材料の仕入価格がすでに引き上げられることを通告されている先も多い。また、政府が原油備蓄を取り崩しているにもかかわらず、当座の原材料の仕入れを増やして先々の供給不足に備えようという動きもある。海外企業には、有事の供給義務を履行できないことが不可抗力であると取引先に通告(フォースマジュール)するケースも散見される。これは、企業にとって不安を増幅されるような動きである。
春先は、寒さが和らいで行楽シーズンが到来する時期であるが、食料品のコスト高や交通手段であるガソリン価格の上昇が起こることで、予想外の冷や水を浴びせられることになりかねない。
熊野 英生
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