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時事雑感(2025年6月号)

嶌峰 義清

第2期トランプ政権(トランプ2.0)が発足して100日が経過した。トランプ大統領はこの100日間を「米国史上最も成功した100日間のスタートだ」と自画自賛した。一方、米国の主要メディアは有権者や識者が、トランプ2.0のスタートに厳しい目を向けているとする結果を公表した。

政権の自己評価と世論の評価が乖離することは世の常だが、それは政策の“時間軸”に対する見方の違いによるものかもしれない。政治は、今直面している問題の解決だけではなく、将来にわたる国家の安定を模索するのに対し、国民は現在の生活を改善するための政治を求めがちだ。

昨年の大統領選挙において、トランプ候補(当時)は「物価を即座に下げる」「ウクライナ問題を1日で解決する」などと訴えていた。それが可能かどうかはよく考えればわかりそうなものだが、選挙結果からみれば、半数をわずかに上回る国民はそれを支持した。しかし、ウクライナ問題では一時的な停戦すらなかなか難しい。物価については“トランプ関税”が押し上げに繋がることが現実のものとなりつつある。米国民にとって今すぐ改善してほしい問題は一向に実現できていないと評価されても仕方が無い。

もっとも、この100日間で行ってきた数々の政策は、長い目で見れば“アメリカを再び偉大な国にする”可能性は否定できない。関税は米国内への製造業の投資を増やし、いずれは錆び付いた生産力が復活するかもしれない。対外軍事関与の後退は、米国の財政赤字の改善に繋がるだろう。環境問題を棚上げにする代わりに資源採掘を優先することで、中国など特定の国への重要鉱物の依存度を引き下げることは安全保障上重要だ。仮に、そうした長期的な戦略に立脚したものだとすれば、有権者が支持するかどうかは別として、米国にとっては一つの正解なのかもしれない。しかし、米国が中長期的な戦略転換を行うのであれば、国際情勢には大きなインパクトを持つ。日本も相応の覚悟を持った対応が迫られよう。

(嶌峰 義清)

嶌峰 義清


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嶌峰 義清

しまみね よしきよ

経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学

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