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2026.04.02
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トランプ大統領演説の影響
今後の攻撃規模とホルムズ海峡の行方が見えるまで不安定な市場は継続
嶌峰 義清
- 要旨
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トランプ米大統領は、4月1日(米国時間)に行った国民向けの演説で、イランでの戦略目標は完了に近づいているとしたものの、攻撃はあと2~3週間継続し、近く激化する可能性があると述べた。
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米軍は、中東に空母3隻のほか、強襲揚陸艦などと合わせて海兵隊を中心に増派しており、報道などで指摘されているようにペルシャ湾内の島などへの上陸作戦を行う可能性も排除できなくなったと判断される。
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短期間での戦争終了の期待もあった市場では、今回の演説を受けて戦闘の長期化に対する懸念に直面せざるを得なくなった。戦闘の展開次第ではホルムズ海峡の封鎖期間が長期化する恐れは高まったと判断され、市場の混乱も長引くリスクがある。
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1. 戦闘継続のお知らせに過ぎなかったトランプ大統領の演説
トランプ米大統領は演説で、イランでの軍事行動に関し、これまでの攻撃で圧倒的な勝利を収めており、核開発施設や攻撃能力の破壊など当初の目的達成に近づいているとした。同時に、これを完了するためにはあと2~3週間の攻撃が必要と、戦闘が継続することを示唆した。
一般的に、戦争当事国の発言は情報統制の観点からも全てが明らかにされているわけではなく、鵜呑みにはできない。先行きの見通しとなれば尚更だ。しかし、ハメネイ師を含むかつてのイラン政府中枢の排除、軍事施設の破壊など、イスラエルと米国の狙いはある程度進んでいるとみられる。同時に、米国が空母や海兵隊などの増派を進めていることから、今後更なる武力攻撃が行われる準備を整えていることも事実だろう。
とはいえ、これまでの攻撃では達成できなかった目的(目標の破壊など)が、トランプ大統領が言うように2~3週間で完遂するかどうかは不明だ。そのために、日本を含む東アジアの米軍戦力を割いてまで行うとすれば、それはより大規模で、且つこれまでになかった戦闘形態を伴う可能性がある。演説では、イランが交渉に応じない場合、これまで攻撃を控えてきた発電所や石油関連施設への攻撃を行うとしている。しかし、目標を完遂するためにはより精緻な攻撃が必要であり、米軍が準備している戦力を勘案すれば、地上戦を含む可能性がある。トランプ大統領はその可能性については、今回の演説では触れていない。
イランへの攻撃の目的について、米国は(少なくとも表向きは)核開発施設の破壊、及び濃縮核燃料の奪取のほか、テロ支援能力の排除としている。トランプ大統領は核についてはこれを封じ込めたと主張しているものの、IAEAは濃縮済みウラン在庫の大部分は存在しているとして、これまでの攻撃ではイランの核開発を数年遅らせる程度、との見解を示している。一方、イスラエルの目的は自国の安全が保障できる状態の確立であり、そのために核開発の排除はもちろんのこと、旧体制の破壊と攻撃能力の相当程度の破壊が必要だと考えられる。しかし、旧体制の指導者層の排除には成功したものの、攻撃的なイラン革命防衛隊の排除には至っていない。
近年の戦争においては、空爆で相手の攻撃能力を相当程度弱体化させ、その後の詰めを地上戦で行うのが常だ。したがって、今後の攻撃は濃縮核燃料の奪取、または封鎖、攻撃的なイラン革命防衛隊の戦力の更なる低下、または無力化が目的となるが、現実的にどの程度の期間を要するかは不明だ。したがって、米国とイスラエルが目的を完遂するまでに、トランプ大統領が述べたように「2~3週間」で終結する確証はない。仮に地上戦に移行すれば、それだけの期間では済まなくなる可能性が高まる。
2. ホルムズ海峡がどうなるのかが市場や経済にとっては重要だが、最も不明瞭
イランがホルムズ海峡の封鎖措置を行って以降、同海峡を通過することができた船舶は、イランの“許可”を受けた中国、インド、パキスタンなど数カ国にとどまっており、その数も100~130隻程度で、そのうちタンカーは20隻程度とされている。
ホルムズ海峡を経由して世界に輸出される原油の量は世界全体の20%程度、その大半がアジアの国々に向けたものとされているが、現状では大半が輸出されていないことになる。今後、ペルシャ湾内の島などで地上戦が行われれば、ホルムズ海峡の通航は一層難しくなるばかりでなく、湾内に滞在している船舶に“飛び火”するリスクもある。トランプ大統領が言うように、イランのミサイルなどを完全に破壊したとしても、ドローン(自爆型の無人ボートなどを含む)や機雷などの小型の攻撃能力を完全に破壊できるまでは、同海峡の航行はリスクが伴う。
ホルムズ海峡を経由した原油の輸出再開には、航行する船舶に対する大規模な攻撃能力の排除だけではなく、小型の攻撃リスクの排除も求められる。そのためにはイラン政府の保障か、またはイラン革命防衛隊の攻撃能力の完全排除が必要になろう。ただし、ハメネイ師死亡後のイラン政府の動向から判断すれば、イラン革命防衛隊が事実上の国家運営を行っている可能性があり、交渉が容易に進むとは考えにくい。
マーケットでは、トランプ大統領の演説前には戦闘の早期終結の期待から原油安・株高の動きも見られたが、演説後はその期待が後退したと捉え、原油高・株安に転じた。演説という形で米国の方針が示されたことから、イラン側が交渉に応じる以外に戦闘が早期に終結する道は閉ざされたとみても良い。したがって、不安定な市場の動きはしばらく継続する公算が大きくなったと考えられ、予想以上に長期化する恐れも否定はできない。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

