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- 内外経済ウォッチ『日本~トランプ当選でどう変わる~』(2024年12月号)
11月5日の米大統領選挙は、トランプ氏が勝利した。日本経済に関しては、短期楽観・中長期悲観のシナリオだろう。これは、日本における衆議院選挙の結果とシンクロして、2025年以降の日本経済に暗い影を落とすと思う。
米国の輸入品に対して、10~20%の関税率が追加されると、米国の物価上昇が進む。ウクライナ支援が絞られると、地政学リスクが高まり、原油価格高騰が促される。イスラエルに肩入れしてイランに敵対的な姿勢を採ることも原油高要因だ。インフレ加速は、米長期金利の上昇を促し、ドル高圧力だ。為替相場には、円安へのバイアスがかかるだろう。
日米株価は、トランプ・トレードの再現で一旦押上げられた後、不安定化するとみる。米国株には相当にFRBの利下げ予想が先取りされているから、それがなくなってしまうと、相当な下げ圧力になるからだ。もしも、トランプ次期政権のネガティブな効果が、経済成長率をじわじわと押し下げ始めれば、米長期金利も下がっていき、今度はドル安・円高の圧力となる。まとめると、①短期では株高と円安、②中長期では株価・為替ともボラティリティが高まると予想される。
保護主義がもたらす低成長
トランプ氏は中国に対して、60%もの追加的な関税をかけることを公約している。中国からの輸入品はその分値上がりして、中国側の対抗措置で米国からの輸出品には報復関税がかけられる。米国と中国の間では、輸出入がともに減少して米国の輸出産業は打撃を受け、消費者は割高になった中国製品を買わされる。米国の成長率は、保護主義によって下押しされる。
米国が保護主義に向かうとき、日本企業はどう対応すべきなのだろうか。例えば、自動車メーカーを考えてみよう。自動車輸出に対して10%の追加関税をかけられるとき、従来までの考え方だと現地生産を活発化させる。米政府も国内への工場誘致を歓迎する。
これをマクロ的に考えると、日本からの対米輸出が減って、国内生産能力が削減されることになる。同様のことが、中国向けの半導体輸出の制限強化によっても起こる。経済安全保障をあまりに徹底させると、これも保護主義の弊害として、日本の国内景気を冷やすことになる。
防衛増税が再燃
トランプ氏は常々、同盟国に負担増を求めることを表明してきた。日本には在日米軍の駐留経費の増額を求めるほか、防衛費を名目GDPの2%超へと増やすことを促すだろう。そうすると、すでに防衛増税を含む財源確保で、2027年度までに防衛予算を計43兆円まで積み増す方針も、さらに上乗せする方向になりそうだ。つまり、1兆円の防衛増税以外に新たな増税の必要性が生じる。このことは、将来の火種として政権運営を揺るがすことになろう。
米国が求める装備品の中には、米国製の調達品もある。すると、ドル高円安になっている分、コスト高になっていて、金額が膨らむ。この点は、トランプ氏が新たに求めてくる負担以外に、岸田前政権が受け入れた計画のところでも、財源確保の見通しにずれが生じてくる可能性があるということだ。
石破政権は岸田前政権以上に安全保障に熱心だと考えられるので、トランプ氏が要求してくる防衛費の負担増にも前向きに応えていく可能性がある。すると、すでに決めている防衛増税以外の増税を甘受しようとする公算は高いのではないか。岸田前政権でさえ、防衛増税が命取りのひとつの要因になった。その二の舞にならないことが願われる。筆者は、トランプ・リスクの最大の焦点はこの東アジアのパワーバランスの変化にあるのではないかと考える。ウクライナの次は台湾へと不安が飛び火するのが怖い。
熊野 英生
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