時評『ローコンテクストなコミュニケーション』

寺本 秀雄

コミュニケーションのスタイルの違いとして、コンテクスト(文脈)がどの程度重要な役割を果たすかで区分した「ローコンテクストの文化」と「ハイコンテクストの文化」があります。

ローコンテクストの文化は、言葉が主要な役割を果たす文化で、メッセージは額面通りに伝えられ、額面通りに受け取られます。会話の量は比較的多く、感情も本心の通り言葉で表現されることが多いとされます。明確に伝えるためには同じメッセージの繰り返しも行われます。ローコンテクストの文化は、歴史的に異民族・異文化と接触の頻度が高く、文化的に多様性があり、個人主義が発達している地域に多いとされます。

一方、ハイコンテクストの文化は、文脈に大きく依存する文化、明確な言葉による表現は避けて文脈からお互いの意図を汲み取ろうとする文化とされます。言葉がそのまま正しいメッセージを伝えているとは限らない文化で、「空気を読む」「行間を読む」文化と言えます。配慮、遠慮などの理由から本音とは異なる態度や表現をする場合もあり、このため、真意や本音を汲み取ろうとする意識が必要となります。このようにハイコンテクストの文化は、「話さなくてもわかる仲」「以心伝心」のような状況や相手への心配りや慎みに気を遣う特徴があり、同一民族や集団的・同質的な文化を持つ集団が多いのが特徴です。国や地域の分類としてはローコンテクストに近い順から、ドイツ系スイス人、ドイツ人、アメリカ人、フランス人、イタリア人、スペイン人、ギリシャ人、アラブ人、中国人、日本人という位置づけがされたりしています。

日本は、歴史的、文化的背景や日本語そのものの特徴から、どうしてもハイコンテクストの特徴が強いのはやむを得ないことですが、グローバル展開する企業の増加や、異業種からの転職者、増大する外国人ワーカーへの対応なども含め、ローコンテクストなコミュニケーションを意識した対応が各所で必要となっています。

各企業では、「日本人・新卒・男性」という昭和型で同質な従業員集団を前提としたマネジメントから、「国籍を問わない・中途含む通年採用・D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)」という多様で競争力に富む従業員集団を前提としたマネジメントへの転換が鋭意進められていますが、この下では、明確な言葉による、頻度を上げた会話の実施、英語は勿論、「やさしい日本語」や図表の活用、業務プロセスのスリム化・言語化、などの少し手間暇をかけたローコンテクストな組織運営が極めて重要になると考えられます。経済活性化のために労働市場の流動性向上の重要性が指摘されますが、異なるバックグラウンドの人財が伸び伸び能力を発揮できる職場であるためには、ローコンテクストなコミュニケーションを心掛けることが必要ではないでしょうか。

皆さんの職場では、社内用語・業界用語などが飛び交ってはいませんか。

寺本 秀雄


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。