インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~トルコ中銀、エルカン新体制下でもリラ安に歯止めが掛からない~』(2023年8月号)

西濵 徹

目次

エルドアン政権の下で中銀・リラの信認は低下

トルコで5月に実施された大統領選では、現職のエルドアン氏が決選投票を経て再選を果たした。過去20年に亘る長期政権の下、与党AKPや政府内にはエルドアン氏の『イエスマン』のみが登用され、幅広い政策にエルドアン氏の意向が反映されてきた。経済政策面では、高インフレにも拘らず低金利を志向するなど経済学の定石では考えられない動きがみられ、時に中銀と対立が表面化する動きも顕在化した。さらに、2019年以降は3人の中銀総裁が更迭されるなど、その独立性が危ぶまれる動きもみられた。

こうした対応を受けて、国際金融市場においては中銀、通貨リラの信認が低下しており、昨年には商品高の影響も重なりインフレ率は大きく上振れした。ただし、昨年後半にかけてはインフレ率が頭打ちに転じたことを受けて、中銀は一転して断続利下げに動いた。さらに、今年2月に同国南部において大地震が発生したことを受けて、中銀は復興支援を目的に追加利下げに動くなど一段の金融緩和に舵を切った。さらに、政府はインフレによる国民生活への悪影響軽減を目的に最低賃金の大幅引き上げや年金受給年齢の引き下げなどに動いてきた。足下においては商品高の動きが一巡していることを反映してインフレ率は鈍化しているが、コアインフレ率はリラ安による輸入インフレが影響する形で一転して底打ちする動きが確認されるなど、インフレ収束にほど遠い状況が続いている。

図表1
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新体制下でもリラ安に歯止めが掛からない展開

エルドアン氏は新政権発足に当たり、国際金融市場からの信認が厚いシムシェキ氏を財務相に、中銀総裁には米国の金融業界での経歴が豊富なエルカン氏を指名するなど、国際金融市場に配慮する姿勢をみせた。これを受けて、金融市場では金融政策が『正統的』な方向に舵を切るとの見方が強まった。事実、新体制下で初めて実施された6月の定例会合において、中銀は政策金利を650bpと大幅に引き上げる決定を行い、同行は2年強ぶりに利上げに舵を切った。

しかし、こうした中銀の対応にも拘らず、その後のリラ相場は低迷が続いている。これは中銀の利上げ幅が事前に国際金融市場が抱いた『過大な』期待を下回ったほか、中銀がリラ安阻止に向けた為替介入や事実上の資本規制などの対応を変更するとの思惑が広がっていることも影響している。また、同国では来年統一地方選が予定されているが、過去の経緯から早晩エルドアン氏の『堪忍袋の緒が切れる』との見方がくすぶることも影響していると考えられる。足下では財政赤字と経常赤字の双子の赤字が拡大するなか、外貨準備高も減少するなど対外支払いへの懸念もくすぶる。同国はUAEやカタールなど中東諸国に加え、中国や韓国などとの通貨スワップ協定締結により外貨確保に取り組んできたが、当面は中東諸国やウクライナ情勢を巡って関係深化が進むロシアなどの影響力がこれまで以上に強まることも考えられる。

図表2
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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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