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2026.05.22
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トルコの「司法クーデター」、ふたたび
~民主主義の危機と高まる市場の不信、「トリプル安」の動きはどうなる~
西濵 徹
- 要旨
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トルコでは5月21日、アンカラの裁判所が最大野党CHPの2023年党大会を無効とし、現党首オゼル氏を事実上解任する司法判断を下した。これは、2028年の次期大統領選に向けてCHPの有力候補とみられていたオゼル氏の政治的台頭を封じる狙いがあると考えられる。
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背景には、エルドアン政権による司法を通じた野党圧力の強化がある。2025年3月にはイスタンブール市長のイマモール氏が汚職などの容疑で拘束、起訴され、大統領選への出馬が事実上不可能となっており、今回の判決はその流れに続くものと捉えられる。
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CHPは判決を司法の政治利用として拒否する一方、政権側は「法の支配の回復」と主張する。しかし、金融市場ではリラ安、株安、金利高の「トリプル安」で反応しており、政治不信の高まりへの警戒感が鮮明となっている。中東情勢を受けたリラ安に際しては中銀が金を大量売却して対応したが、今回も同様の資本流出圧力が生じることへの懸念が高まっている。
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トルコ金融市場は「司法によるクーデター」と呼ぶべき動きに再び翻弄されている。トルコの司法を巡ってはここ数年、エルドアン大統領の意向を忖度した判断を示すなど、三権分立の事実上の形骸化が進む動きがみられる。こうしたなか、首都アンカラ第36高等裁判所は5月21日、最大野党CHP(共和人民党)が2023年に実施した第38回党大会を無効とする判断を下した。判決では、党大会で党首に選出されたオゼル氏をはじめとする現党執行部について、職務停止による事実上の解任を命じるとともに、前党首であるクルチダルオール氏を復帰させる仮処分を下した。
トルコでは2028年5月までに次期大統領選の実施が予定されている。現行憲法では大統領の3選は禁止されており、2期目の現職エルドアン氏による出馬のハードルは高い。一方、クルチダルオール氏は77歳とエルドアン氏(72歳)より年上であり、同氏は2023年の大統領選に野党統一候補として出馬したものの、高齢であることがネックとなり、政府批判票を十分に取り込めなかった一因になったとみられる。そして、その後の党大会でオゼル氏が党首に選出されることにつながった。オゼル氏は現在51歳であり、次期大統領選の有力候補者のひとりになるとみられたものの、今回の司法判断はその「芽」を摘むことを意図したと考えられる。
CHPに対してはここ数年、司法による圧力が強まっており、党側は否定しているものの、汚職などの容疑で数百人の党員のほか、選挙で選出された公職者が拘束される事態に直面している。2025年3月には、次期大統領選でのCHPの公認候補であり、エルドアン氏の最大のライバルと目された最大都市イスタンブール市のイマモール市長(現在55歳)が汚職、並びにテロ組織への資金提供などの容疑で拘束された。その後、検察当局は同氏を計402名の容疑者が関わる大規模な汚職ネットワークの「組織犯罪の創始者かつ首謀者」と認定した上で、同氏に対して828年から最大2352年の禁錮刑を求刑しており、次期大統領選に出馬することは事実上不可能となっている。
したがって、イマモール氏が拘束されて以降、CHP内ではオゼル氏が求心力を高めてきたものの、今回の司法判断を受けて戦略の立て直しが避けられなくなっている。CHPは判決に対して、政敵を標的とすべく司法を政治利用したものと断じるとともに、拒否する姿勢を示している。その一方、政権はこうした見方を否定するとともに、今回の判決によってトルコの「法の支配」に対する信頼が回復したと主張している。しかし、金融市場では、通貨リラ相場が下落圧力を強めるとともに(図1)、主要株価指数(イスタンブール100種指数)も大幅に下落してサーキットブレーカーが発動する事態となったほか、長期金利も上昇するなど「トリプル安」の様相を呈している。このことは、今回の司法判断が、金融市場が警戒する「政治不信」を一段と助長するとの見方につながっていると考えられる。

トルコでは、中東情勢の緊迫化を受けた金融市場の動揺がリラ安圧力を増幅させる事態に直面した。こうしたなか、中銀は3月に外貨準備における金を大量に売却するなど、外貨流動性の確保に向けた動きを活発化させた。その後は資金流出の動きに落ち着きが戻りつつあるようにみえたものの、今回の司法判断を機に同様の事態に追い込まれることが懸念されるほか、金価格を揺さぶる材料となる可能性にも注意が必要である。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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