期限切れの健康保険証、2026年8月からは使えない

~受診前に確認したい「マイナ保険証」「資格確認書」「電子証明書」~

谷口 智明

目次

1.期限切れの健康保険証をめぐる暫定措置が終了

本稿では、期限切れの健康保険証をめぐる暫定措置の終了と、その後の資格確認手段を整理し、医療機関・薬局の受診前に確認すべき点を解説する。従来の紙・プラスチック製の健康保険証は、2024年12月2日に新規発行が終了し、2025年12月1日をもってすべて有効期限を迎えた。ただし、制度移行期の混乱を避けるため、期限切れに気付かず健康保険証を持参した場合でも、医療機関・薬局がオンライン資格確認等で保険資格を確認できれば、通常の自己負担割合(3割等)で受診できる暫定的な取扱いが続けられてきた。この取扱いは、当初2026年3月末までとされていたが、その後、同年7月31日まで延長された。8月1日以降は、この暫定的な取扱いが終了する。

厚生労働省の事務連絡によれば、2026年8月1日以降、期限切れの健康保険証だけを持参し、ほかの方法でもその場で保険資格等を確認できない場合は、従来の健康保険証を忘れた場合と同様の対応となる。医療機関・薬局の取扱いによっては、窓口で通常の自己負担割合による支払いができず、いったん医療費を全額自己負担した上で、後日、加入する保険者に療養費を申請し、保険給付相当額の償還を受ける必要が生じる。受診そのものができなくなるわけではないが、一時的な窓口負担の増加や事後手続きが生じ得るため、注意が必要だ。

2.受診時に使えるのは、マイナ保険証か資格確認書

2026年8月以降、まず確認すべきは、自分がマイナ保険証を利用できる状態にあるかだ。マイナ保険証とは、健康保険証として利用登録したマイナンバーカードを指す。利用登録の状況は、マイナポータルの「健康保険証」画面で「登録済」または「未登録」と表示される。未登録の場合は同画面から登録できるほか、医療機関・薬局に設置された顔認証付きカードリーダーでも、その場で登録できる。

マイナ保険証を保有していない人には、加入する保険者から、従来の健康保険証に代わる「資格確認書」が原則として申請によらず無償で交付される。資格確認書を窓口で提示すれば、従来どおりの自己負担割合で受診できる。資格確認書には有効期限があり、5年以内の範囲で保険者が設定することになっている。制度や加入する保険者によって期限が異なるため、券面に記載された有効期限を確認しておく必要がある。例えば、後期高齢者医療制度や国民健康保険では1年更新が一般的で、健保組合や協会けんぽ等の被用者保険では最長5年となっているケースが多い。

さらに注意したいのは、「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」では位置づけが大きく異なることだ。資格確認書は単体で保険資格を確認できるが、資格情報のお知らせは、マイナ保険証を利用する人に対して、加入する医療保険の資格情報を通知する補助書類であり、原則として単体では保険資格の確認には使用できない。顔認証付きカードリーダーの不具合などでマイナ保険証による資格確認ができない場合に、マイナンバーカードと併せて提示する。こうした名称が類似していることが制度理解を難しくしている点は否めない(資料1)。

図表
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3.後期高齢者全員への資格確認書の一律交付も終了

後期高齢者医療制度では、資格確認書の交付方法も変わる。2026年7月までは暫定措置として、マイナ保険証の保有の有無にかかわらず、加入者全員に資格確認書が職権交付(本人からの申請によらず交付)されてきた。

2026年8月以降は、85歳以上の加入者には、引き続き資格確認書が職権交付される。一方、84歳以下の加入者については、マイナ保険証の保有状況や過去の利用実績に応じて、資格確認書が職権交付されるか、「資格情報のお知らせ」が交付される(注1)。ただし、判定方法は後期高齢者医療広域連合(保険者)によって異なり、マイナ保険証の利用回数等を踏まえる地域と、保有の有無のみで判定する地域もある。このため、年齢やマイナ保険証の利用状況が同じでも、居住地域によって届く書類が異なる場合があり、制度の分かりにくさはなお残る。

資格確認書の交付対象とならなかった人には、「資格情報のお知らせ」が送付される。繰り返しとなるが、資格確認書とは位置づけが異なるため、届いた書類の名称と使い方を確認しておく必要がある。なお、マイナ保険証の利用が難しい場合は、市区町村窓口への申請により資格確認書の交付を受けられる。

4.見落としやすい「電子証明書の5年期限」

マイナ保険証の利用登録を済ませても、無期限に使えるわけではない。マイナンバーカード本体と、ICチップに記録された電子証明書では、それぞれ有効期限が異なる。マイナンバーカード本体の有効期限は、カード発行時に18歳以上の場合、原則として発行から10回目の誕生日までである。一方、電子証明書の有効期限は、年齢を問わず発行から5回目の誕生日までである(注2)。電子証明書は、マイナ保険証やマイナポータルへのログイン等に用いられる。政府公表資料によれば、電子証明書の有効期限切れに伴う想定更新件数は、2026年度に約1,430万件、2027年度に約2,100万件と見込まれている(資料2)。

図表
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電子証明書の有効期限が切れると、マイナポータルへのログイン、証明書のコンビニ交付、e-Tax(国税電子申告・納税システム)等の電子申請が利用できなくなる。マイナ保険証については、電子証明書の有効期限が切れた後も、有効期限満了日が属する月の末日から3か月間は引き続き利用できるが、その間に更新手続きを行う必要がある。ただし、この猶予期間中に医療機関等へ提供される情報は保険資格情報に限られ、過去の診療情報や薬剤情報などは提供されない。

電子証明書の有効期限は、カード券面の記入欄またはマイナポータルで確認できる。券面に記載がない場合は、マイナポータルを利用するとよい。医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーでも、期限が3か月以内になるとアラートが表示される。有効期限の2~3か月前を目安に通知書が送付されるが、更新は住民登録のある市区町村窓口で手続きしなければならない。通知を放置せず、早めに更新することが重要だ。

5.マイナ保険証の利用拡大と今後の資格確認

厚生労働省によると、マイナ保険証の利用は増加しており、2026年5月のレセプトベース利用率(マイナ保険証利用人数÷レセプト件数)は68.52%と前年同月から約34ポイント上昇した。一方、残り約3割の資格確認は資格確認書等によるものだ。あわせて、スマートフォンにマイナンバーカード機能を搭載した「スマホのマイナ保険証」(以下、スマホ保険証)の利用も広がり始めているが、すべての医療機関・薬局で使えるわけではない。スマートフォンだけで受診する場合は、利用予定の医療機関・薬局が対応しているか、事前に確認する必要がある。

期限切れの健康保険証を受け付ける暫定措置の終了は、例外的な取扱いを続けてきた移行期を終え、マイナ保険証を中心とする資格確認へ移る節目となる。今後、医療機関・薬局の窓口で用いる主な資格確認手段は、マイナ保険証(スマホ保険証を含む)と資格確認書の二つとなる。これにより、資格確認手段とその取扱いが明確になり、受付事務の負担が一定程度軽減されることも期待される。一方、資格確認書への対応やマイナ保険証を読み取れない場合の確認手続き、デジタル機器に不慣れな利用者への丁寧な案内は、引き続き欠かせない。利用者自身も、受診前に窓口で何を提示すべきかを確認しておくことが重要である。

以 上

【注釈】

  1. 厚生労働省が示した基本的な対応方針では、84歳以下の加入者のうち、マイナ保険証を直近1年間に6回以上利用し、かつ直近3か月以内に利用実績がある人には「資格情報のお知らせ」を交付し、それ以外の人には、本人からの申請によらず「資格確認書」を職権交付する。ただし、後期高齢者医療広域連合は、マイナ保険証保有の有無のみで判定する方式を選択することもできる。なお、マイナ保険証の利用が困難な場合は、市区町村窓口に申請することにより、資格確認書の交付を受けることができる。

図表
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  1. 2026年7月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、券面デザインを見直した「次期マイナンバーカード」について、2029年度中の導入を目指す方針が示された。なお、次期カードでは、電子証明書の有効期間をカード本体に合わせ、現行の5年から10年に延長される予定である(18歳未満は、カード本体・電子証明書ともに有効期間は現行どおり5年)。

【参考文献】

谷口 智明


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。