インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

四半期見通し『アジア・新興国~イラン情勢、異常気象、通貨安とインフレ要因は山積~』(2026年10月号)

西濵 徹

目次

内需低迷が中国経済の足かせとなる展開が続く

中国当局は3月の全人代で、2026年の成長率目標を「4.5~5.0%」に引き下げた。米国の関税政策による外需への悪影響に加え、内需の低迷など、景気の不透明感が強まったためである。しかし、1-3月の実質GDP成長率は前年比+5.0%となるなど、良好なスタートを切った。

その後も外需は堅調に推移したものの、4-6月の実質GDP成長率は前年比+4.3%に鈍化し、内需の弱さが景気の重荷となった。イラン情勢の悪化に伴う商品市況の上昇を受け、企業部門を中心にインフレ圧力が強まり、4-6月にはGDPデフレーターが3年ぶりにプラスに転じた。一方、家計部門の節約志向は根強く、企業も原材料コストの上昇を製品価格に十分転嫁できず、ディスインフレ圧力は残る。経済全体では物価上昇の動きがみられる一方、部門ごとに対照的な動きが続いており、中国経済は「K字型」の様相を一段と強めている。

内需喚起を目指すも、外需依存の展開が続くか

7月末の党中央政治局会議では、公共投資の進捗加速が表明された。当面は、政府消費の拡大や公共投資の進展を通じた固定資本投資の増加が景気を下支えすると見込まれる。また、当局は個人消費に焦点を当てた5ヵ年計画も発表した。しかし、具体策には不透明な部分が多いうえ、不動産市況の低迷や雇用環境の悪化が消費の重荷となり、内需の先行きは見通しにくい。

供給過剰の状態が続くなかでも、習近平指導部は供給サイドを重視する政策姿勢を維持しており、今後も外需への依存度が高まる展開が予想される。イラン情勢の悪化を受けて世界的に再エネやEVへの需要が高まったことは、これらの分野で国際競争力を有する中国企業の輸出を下支えすると期待される。一方、中国製品の輸出拡大に伴い、中国による「デフレの輸出」への警戒が一段と強まる可能性には要注意である。

イラン情勢の悪影響をAI需要がカバーする

アジア新興国では、米国の関税政策による悪影響が懸念されたものの、米連邦最高裁判決を受けた関税率の事実上の引き下げにより、その影響は比較的小さく抑えられた。しかし、エネルギー輸入依存度が高い国々では、イラン情勢悪化の影響が直撃した。供給懸念や価格上昇に加え、自国通貨安による輸入インフレも重なり、インフレ率が加速した。このため、一部の中銀は物価や為替の安定へ利上げを迫られている。

一方、世界的なAI・半導体関連投資の活発化が輸出を押し上げ、イラン情勢悪化による景気への悪影響を相殺している。とはいえ、イラン情勢は不透明な展開が続いているうえ、事態の長期化が懸念されるなか、原油や天然ガスに加えて石炭価格も高止まりしており、エネルギーインフレが続いている。

イラン情勢、異常気象、通貨安など難題は山積

イラン情勢悪化に伴うエネルギーインフレによる景気への下押し圧力を、世界的なAI・半導体需要の旺盛さが相殺する展開が続いてきた。先行きも、AI・半導体需要が外需や投資を下支えすると期待される。一方で、イラン情勢を巡る不透明感が続いており、商品市況が高止まりするなか、エネルギーインフレの長期化が懸念される。さらに、エルニーニョ現象に伴う異常気象によって農業生産が低迷すれば、化学肥料価格の上昇も重なり、食料インフレ圧力も強まる。生活必需品を中心とする物価上昇が、家計消費など内需の重荷となる可能性は高い。

足元ではドル高の動きは一服しているものの、世界的なインフレ圧力が続くなか、FRBが金融引き締めに転じればドル高が再燃し、アジア新興国通貨に下落圧力がかかる可能性がある。その場合、各国中銀は物価や為替の安定を目的とする金融引き締めを迫られ、それが内需のさらなる下押し要因となり得る。

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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