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マレーシア・アンワル陣営が地方選で2連敗、早期の解散・総選挙か

~金融市場では早期の解散・総選挙観測が強まる一方、政局が流動化する可能性に懸念~

西濵 徹

要旨
  • マレーシアで8月1日に実施されたヌグリ・スンビラン州議会選挙で、国政で連立与党を組む政党連合PH(希望連合)が11議席に後退する一方、BN(国民戦線)は25議席へ躍進し、両連合で全議席を占める結果となった。国政ではPHとBNが連立を組むが、地方選ではBN内でPHに対する不満が高まっていることを背景に対立構図が続いており、PHにとっては7月のジョホール州選挙に続く連敗となった。

  • 背景には、足元の同国経済はAI関連データセンター誘致などで景気は堅調な一方、その恩恵が国民に十分行き渡らず、特にマレー系の支持が低下している事情がある。PH内部でも離反の動きがみられ、次の焦点は11月までに予定されるマラッカ州議会選挙の行方に移っている。

  • こうした地方選連敗を受け、金融市場では早期解散・総選挙の観測が強まっており、連立の先行き不透明感からリンギ相場は原油高という追い風があるにもかかわらず上値の重い展開が続いている。ただし、仮に早期総選挙となってもPHが優位に戦えるかは不透明で、今後のマレーシア政局は流動化する可能性に注意が必要である。

マレーシアでは8月1日、首都クアラルンプール南部に位置するヌグリ・スンビラン州議会(総議席数36)選挙が実施された。同国政界は、国政ではアンワル首相が率いる政党連合PH(希望連合)とBN(国民戦線)が連立を構成している。一方で、2022年の総選挙において、最大与党であったBNの汚職体質を痛烈に批判してきたため、BN内ではPHへの不満が根強いとされる。なかでも地方政界ではそうした色合いが強く、PHとBNが与野党に分かれる動きも散見される。こうした関係について、両陣営は州レベルでの意見相違が国政レベルの連立には影響しないとの見方を示してきた。しかし、このところは与党連立内で政権運営に関する意見対立が表面化しており、アンワル首相は、対立が一段と激化すれば2027年11月の議会下院(代議院)の任期満了を待たず、早期の総選挙に踏み切る可能性に言及していた。このため、金融市場では早期の解散・総選挙が意識される動きがみられる。

こうしたなか、7月に実施された南部ジョホール州議会選挙では、両党は候補者調整を行わず、BNは議席の上積みを、PHも議席の奪還を目指すなど対立構図による選挙戦が展開された。同州は元々BNの地盤であったこともあり、BNが議席を積み増す一方、PHは議席を減らすなど敗北を喫した(注1)。直後にBNのアフマド・ザヒド・ハミディ議長(副首相)は、今後予定される州議会選を念頭に、次期総選挙へ弾みをつけることを目指す姿勢をみせた。このため、選挙前にPHとBNが拮抗していたヌグリ・スンビラン州議会選の行方は、今後の政局に影響を与えることが予想され、注目されていた。

選挙前は、PHとBNがともに17議席、中央政界で野党連合PN(国民連盟)を構成するBERSATU(先住民族団結党)が2議席を保有していた。選挙では、BNが8議席積み増して25議席を獲得する一方、PHは6議席を失い11議席を獲得し、両連合ですべての議席を占めることとなった。同国は多数派を占めるマレー系と少数派の華人系やインド系などが共存しており、アンワル氏は民族融和や政治改革を訴えて2022年の総選挙で勝利して首相に就任した。足元の同国経済は、AI(人工知能)向けデータセンターの誘致などを追い風に堅調に推移しているが(注2)、国民の間にはその恩恵が乏しく、不満が蓄積しているとの見方がある。アンワル氏率いるPHは地方選で2連敗を喫したが、マレー系の支持低下が影響したとみられる。PH内部でもアンワル氏から離反する動きが出ており、次は11月までに実施予定の南部マラッカ州議会選挙の行方が焦点となる。

ジョホール州、ヌグリ・スンビラン州での連敗を受けて、金融市場では早期の解散・総選挙の観測があり、国政での連立の行方に不透明感が高まるとの懸念が出ている。イラン情勢の悪化を受けた原油価格の上昇は、マクロ面で同国景気の追い風になると期待されるにもかかわらず、リンギ相場は上値が重い展開が続いている(図1)。また、仮に早期の解散・総選挙に踏み切ったとしても、PHが優位に選挙戦を展開できるかは見通しが立ちにくくなっている。このため、先行きはマレーシアの政局を巡る動きが一気に慌ただしさを増す可能性に注意が必要である。

図表
図表

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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