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2026.09.15
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インドネシア・プルバヤ財務相、就任1年で更迭
~スアハシル新財務相は財政規律を重視、市場の信認回復につながるか、政策運営に注目~
西濵 徹
- 要旨
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インドネシアのプラボウォ大統領は9月14日に内閣改造を実施し、プルバヤ財務相を更迭して、2019年から財務副大臣を務めてきたスアハシル・ナザル氏を後任に任命した。プルバヤ氏は、反政府デモの拡大を受けて2025年9月に事実上更迭されたスリ=ムルヤニ氏の後任として就任したものの、在任1年で退任することとなった。
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プルバヤ氏の下では、プラボウォ政権が掲げる学校給食無償化事業などを後押しした一方、巨額歳出により2025年の財政赤字はGDP比▲2.92%と法定上限の3%に接近した。財政悪化への懸念からルピア相場も最安値を更新したほか、景気下支えを重視するプルバヤ氏と、物価・為替の安定を重視する中銀との対立も表面化した。足元のルピア相場は落ち着きを取り戻す動きがみられるものの、原油高による物価や対外収支への悪影響も懸念されるなど、政策運営を巡る不透明感は残る。
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後任のスアハシル氏は、財政赤字を法定上限内に抑え、「信頼できる予算運営」を最優先する方針を表明した。同氏は約7年にわたり財務副大臣として財政運営に携わってきたことから、市場では財政規律の回復と政策への信認向上につながるとの期待がある。今後は、政権の重点施策を支えつつ規律ある財政運営へ転換し、ルピアや金融市場の信認を取り戻せるかが焦点となる。
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インドネシアのプラボウォ大統領は9月14日、内閣改造を実施してプルバヤ財務相を更迭した。後任には、2019年から財務副大臣を務め、財政政策や予算運営に携わってきたスアハシル・ナザル氏を任命した。プルバヤ氏は2025年9月、ユドヨノ元政権、ジョコ・ウィドド前政権で長年にわたり財務相を務めたスリ=ムルヤニ氏の後任として就任したものの、1年で退任することとなった。
スリ=ムルヤニ氏の更迭に至る背景には、国会議員に対する高額手当への反発に加え、財政健全化を目的に実施された歳出削減のしわ寄せが幅広く国民生活に及び、不満が蓄積していたことがある。こうしたなかで反政府デモが広がり、政府がデモ鎮圧に向けて強硬姿勢に出た結果、多数の死傷者が出たほか、当局による情報統制を巡る懸念も強まり、国民の反発は一段と高まった。一連のデモでは、地方議会の建物が放火されたほか、議員個人も標的となるなか、歳出削減への不満が強まるなかで財務相を務めていたスリ=ムルヤニ氏の私邸も襲撃された。その後、プラボウォ氏は内閣改造を実施し、反政府デモの標的のひとりとなったスリ=ムルヤニ氏を解任した。
市場からの信認が厚かったスリ=ムルヤニ氏の辞任は、同国に対する評価を低下させる一因となった。プラボウォ政権では、財務省は経済担当調整相の管轄から外れて大統領直属とされるなど、財政運営に対する大統領の関与が強まったことで、市場では財政規律を巡る懸念が高まった。このため、プラボウォ政権は市場から財政運営への懸念払拭を目的に大幅な歳出削減に動いたものの、政権肝煎りの政策を重点化する一方、教育・福祉やインフラ整備など幅広い分野を削減対象とした。こうした予算配分にはプラボウォ氏の意向が強く反映されていたものの、一連のデモでは財務相であるスリ=ムルヤニ氏が批判の標的のひとりとされた。その結果、プラボウォ氏は、財政運営を巡って度々対立してきたスリ=ムルヤニ氏を、この機に乗じる形で事実上更迭したとの見方もあった(注1)。
プルバヤ氏の下では、プラボウォ政権の肝煎りである学校給食無償化事業を後押ししたものの、同事業では大量の食中毒が発生するなど、かえって政権への反発が強まった。そのうえ、こうした巨額歳出が財政を圧迫し、2025年の財政赤字は695.1兆ルピア(GDP比▲2.92%)と政府想定(同▲2.78%)を上回り、法定上限(3%)に近付くなど財政悪化が進んだことが確認された。金融市場においては、通貨ルピア相場が調整の動きを強めて最安値を更新する事態となった。さらに、プルバヤ氏は景気下支えを重視して中銀に市場への潤沢な流動性供給を求める一方、物価と為替の安定を目的に慎重な金融政策運営を行ってきた中銀のペリー前総裁と対立する場面が散見された。7月にペリー氏が任期を2年弱残して突然辞任(注2)、後任の中銀総裁には上級副総裁であったデストリ氏が昇格したことでルピア相場は落ち着きを取り戻す動きをみせている(図1)。しかし、足元ではイラン情勢の不透明感が高まり原油価格が再び上昇しており、原油を輸入に依存するなかで物価や対外収支への悪影響が懸念されるなど、中銀の政策運営の舵取りは難しさを増している。

スアハシル氏は就任会見において、信頼できる予算運営が最優先課題になると述べるなど、財政赤字を法定上限(GDP比▲3%未満)に抑える方針を示した。そのうえで、その実現に努めるとともに、国民との対話でも信頼を得つつ、予算を通じて政府の重点施策を支えるとの考えを示した。同氏が『信頼できる予算運営』を重視する考えを示したことは、プルバヤ氏の下で財政状況が悪化するとともに、中銀の独立性に対する懸念が高まった状況からの転換を目指していると捉えられる。同氏はスリ=ムルヤニ、プルバヤの両財務相の下で7年弱にわたって財務副大臣を務めており、財政規律の重要性がルピアの信認に影響を与える状況を認識しているとみられる。このため、同氏の下で市場の信認向上に向けて規律ある財政運営へ転換できるか、市場は期待を寄せつつ、その動向を見極める展開が続くと予想される。
注1 2025年9月9日付レポート「インドネシア財務相解任、デモ収束への「生け贄」か、財政運営に懸念」
注2 7月27日付レポート「インドネシア中銀のペリー総裁が突然の辞任発表」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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