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2026.09.11
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トルコ中銀は据え置き継続、利下げ再開期待とインフレ警戒が交錯
~原油高やリラ安でインフレ上振れリスクが残るなか、「タカ派」姿勢を維持~
西濵 徹
- 要旨
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- トルコ中銀は、9月10日の金融政策委員会において、政策金利の1週間物レポ金利を5会合連続で37.00%に据え置いた。中銀はインフレ鈍化を受けて2024年末から利下げを進めてきたものの、イラン情勢悪化に伴う原油高や、ロシアからのエネルギー供給懸念などを背景に物価を巡る環境が変化している。8月のインフレ率は前年比+31.51%に鈍化したものの、コアインフレ率は同+30.07%に加速した。中銀も2026年末のインフレ見通しを28%に引き上げており、商品市況やリラ安による輸入物価上昇を警戒している。
- 今回の声明では、物価の鈍化基調を認めつつ、地政学リスクによる商品価格上昇をインフレ見通しの上振れ要因として警戒し、物価安定が実現するまで金融引き締め姿勢を維持する方針をあらためて示した。再利上げも辞さない姿勢を維持するなど、声明内容は過去数会合をほぼ踏襲して「タカ派」姿勢に変化はみられなかった。一方で、金融市場では中銀が10月会合で利下げを再開し、12月にも追加利下げに動くとの見方が広がっている。しかし、イラン情勢や原油高に加え、エルニーニョ現象や肥料価格の高止まりによる食料インフレのリスクも残る。リラ相場も対ドルで最安値を更新しており、利下げ期待は地政学リスクやインフレ圧力の収束を前提とした楽観的な見方といえる。先行きもリラ相場の好転は見通しにくく、中銀の金融政策運営は難しい局面が続くとみられる。
【トルコ中銀は5会合連続の金利据え置き、金融市場の注目は利下げ再開のタイミングに】
トルコ中央銀行は、9月10日に開催した定例の金融政策委員会で、政策金利である1週間物レポ金利を5会合連続で37.00%に据え置くことを決定した。トルコのインフレ率は、2024年半ば以降鈍化してきた。このため、中銀は2024年12月に現在の経済チームの下で初めての利下げに踏み切った。2025年には政治混乱をきっかけにリラ相場が急落したため、中銀は一時的に通貨防衛のための利上げを余儀なくされた。しかし、その後はリラ相場が落ち着きを取り戻したことを受けて金融緩和に転じるとともに、2026年1月まで断続的な利下げを実施した。
もっとも、イラン情勢の悪化を受けた原油高により、物価を巡る状況は大きく変化している。同国は、原油・天然ガスを輸入に依存しており、価格上昇は、エネルギーインフレに加え、輸入額の増加による対外収支の悪化を招く。同国はまた、この供給を長らくロシアに依存してきたが、欧米などのロシアに対する制裁強化に加え、足元ではウクライナによる攻勢も重なり、供給懸念が高まっている。さらに、米国とイランによる停戦合意を受けて原油高が一服する動きがみられたものの、足元ではイラン情勢のさらなる悪化が懸念されており、原油価格も再び上昇基調を強めている。直近8月のインフレ率は前年比+31.51%に鈍化して5ヵ月ぶりの低い伸びとなる一方、コアインフレ率は同+30.07%と加速に転じた(図1)。

中銀は、8月に公表した最新の「インフレ報告」において、2026年末時点のインフレ見通しを28%(従来見通しは26%)に引き上げる一方、2027年末には15%、2028年末には9%に鈍化するとの見通しを維持した。2026年末時点のインフレ見通しを引き上げた理由について、中銀のカラハン総裁は「軽油や天然ガスなど商品市況の動向に加え、リラ建ての輸入物価の想定を引き上げたこと」と説明した。一方で、イラン情勢の悪化とその後の原油高を受けて、中銀は1週間物レポ入札を停止し、翌日物貸出金利などで対応したものの、市場環境の最悪期が過ぎたとして8月末に入札が再開されるなど、正常化が進められている。このため、金融市場の焦点は中銀による緩和サイクルの再開に向かっており、今回の会合でその「ヒント」が示されるかが注目された。
【金融市場は利下げ再開を見込むも中銀はタカ派維持、リラ相場は最安値更新の展開が続く】
会合後に公表した声明文では、物価動向について「先行指標は鈍化基調にあることを示唆している」との見方を示した。そのうえで、「経済指標や供給懸念による物価への影響が限定的なものにとどまることは内需の弱さを反映している」とした。一方で、「地政学リスクによる商品市況の上昇はインフレ見通しの上振れリスクになる」として、「地政学リスクが物価動向、経済活動、インフレ期待に与える影響を注視する」との考えを示した。
先行きの政策運営について「需要動向やリラ相場、インフレ期待を通じた物価安定を実現するまで引き締めスタンスを維持する」との従来姿勢を維持した。政策運営についても「インフレ見通しと実績、基調的な動きを勘案して決定する」、「会合ごとにインフレ見通しを注視しつつ慎重に見直す」とし、「インフレ見通しが目標から著しく、かつ持続的に乖離した場合は引き締め姿勢を強める」、「インフレの上振れリスクに引き続き高い注意を払っている」と、前回会合に続いて再利上げに動く可能性をあらためて強調した。
また、「信用市場や預金市場で予期せぬ事態が発生した場合は、流動性を巡る状況を注視しつつ、マクロプルーデンス政策を強化する」と従来からの考えを繰り返した。そのうえで、「インフレ目標の実現に向けて、入手可能なデータに基づく透明性の高い枠組みの下で必要な環境整備を図るべく政策決定を行う」との考えをあらためて示している。声明文は、過去4会合の内容をほぼ踏襲し、過去3会合と同様にインフレの上振れリスクに対する警戒感を強調するなど、「タカ派」姿勢を維持している。
2026年は強力なエルニーニョ現象が発生しており、トルコでは高温・乾燥による森林火災リスクの増大が懸念されるほか、干ばつや、地域によっては洪水が農業生産に悪影響を与える可能性がある。さらに、イラン情勢の悪化以降、化学肥料の価格が高止まりしており、農業生産が減少することで食料インフレ圧力が高まることも考えられる。金融市場では、中銀が10月会合で緩和サイクルを再開し、12月会合でも追加利下げに動くとの見方が広がりをみせているものの、こうした見方は地政学リスクやインフレ圧力の収束を前提にした楽観的なものと考えられる。足元のリラ相場は、対外収支の悪化を警戒して引き続き対ドルで最安値を更新する展開が続いている(図2)。先行きもリラ相場の好転は見通しにくいうえ、金融政策の舵取りも困難が続くと見込まれる。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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