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OPEC有志7ヵ国、9月の増産合意で自主減産の解除完了へ

~今後は協調減産の行方に注目も、結束維持と価格安定の間で難しい舵取りが続く~

西濵 徹

要旨
  • OPECプラスの有志7ヵ国は、8月2日に開催した閣僚会合で、9月も日量18.8万バレルの増産を続けることで合意した。これにより、2023年に決定した日量165万バレルの自主減産は9月末で解除が完了する。ただし、イラン情勢やウクライナ戦争の激化に伴う輸出混乱により、実際の生産量は生産枠を大幅に下回っており、増産の多くは名目上にとどまる。

  • UAEのOPEC脱退後、OPECプラスは世界の石油生産に占めるシェアや余剰生産能力を低下させたものの、サウジアラビアは小幅な増産を通じて価格形成への影響力を維持しようとしている。一方、イラン情勢の再緊迫化に加え、フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡封鎖のリスクも浮上しており、当面は供給懸念が原油価格の上昇圧力となる可能性が高い。

  • さらに、原油価格が多くの加盟国の財政均衡水準を上回るなか、イラクが生産枠の引き上げを求めるなど、加盟国間では増産圧力が強まっている。イラン情勢が沈静化すれば供給過剰に転じる可能性もあり、OPECプラスは枠組みの結束維持と原油価格の安定の両立という難しい対応を迫られている。

目次

【有志7ヵ国は9月も日量18.8万バレルの増産合意、自主減産の解除が完了】

主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志7ヵ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、8月2日にオンラインで閣僚会合を開催した。有志国会合を巡っては、その一角を担っていたUAE(アラブ首長国連邦)が5月1日付でOPEC(石油輸出国機構)を脱退しており、今回は同国を除く7ヵ国体制による4度目の会合となる。

イラン情勢の悪化による原油価格の急騰を受けて、UAEを含む有志8ヵ国は4月、5月と2ヵ月連続で日量20.6万バレルの増産で合意した。しかし、UAEのOPECからの離脱により、世界の石油生産量に占めるOPECプラスのシェアは45%となり、それ以前に比べて3pt程度低下した。OPECプラス全体としての余剰生産能力も約2割低下しており、需給調整能力の低下が懸念された。

このため、UAEを除く有志7ヵ国は、OPECプラスとしての協調体制を維持すべく、6月から3ヵ月連続でUAEの増産分を除いた分に相当する日量18.8万バレルの増産を実施してきた。足元では、イラン情勢を巡る不透明感を理由に原油価格は高止まりしており、一部の国にとっては財政均衡水準を上回る水準で推移している。9月についても、過去3ヵ月と同じ日量18.8万バレルの増産で合意した。背景には、世界需要の0.2%程度に相当する小幅増産を容認する一方で、枠内の盟主であるサウジアラビアが主導する生産調整を通じて価格形成面での影響力を維持したい思惑がうかがえる。

【イラン情勢は見通せず、供給懸念が原油価格を押し上げる展開が続く】

今回の決定により、9月末には2023年に有志7ヵ国が合意した日量165万バレルの自主減産の段階的解除が完了することになる。しかし、地政学リスクの高まりに加え、ウクライナ戦争も激化するなか、足元では湾岸産油国のみならず、ロシアやカザフスタンの輸出も混乱しており、増産の大半は名目上のものにとどまる。6月時点における有志7ヵ国の産油量の合計は日量2,299万バレルとイラン情勢の悪化前の2月時点(2,931万バレル)を大きく下回るとともに、生産枠に対しても約750万バレル低い水準にとどまる。一方、OPECから脱退したUAEによる増産のほか、米国など湾岸以外の産油国も増産の動きを強めている。しかし、全体としての産油量はイラン情勢が悪化する前を下回っている。

さらに、足元ではイラン情勢が再びエスカレートしているうえ、イエメンの親イラン勢力(フーシ派)が紅海とアデン湾をつなぐ海上輸送の要衝であるバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖を示唆する動きもみられる(注1)。トランプ米大統領がイランに対する攻撃計画の見送りに加え、イランと合意期限を設けず協議を行う方針を表明しており、原油価格の上昇の動きに一服感が出ている(図1)。しかし、イラン情勢は見通しが立たない状況が続いているうえ、足元ではバブ・エル・マンデブ海峡が「第2のホルムズ海峡」と化すリスクも高まっており、当面の原油価格は供給懸念が上昇圧力につながる展開が予想される。

図表
図表

【OPECプラスに綻びのリスクも、供給面で様々な懸念要因が残る展開】

OPECプラス全体としては、2022年に合意した日量200万バレルの協調減産を2026年末まで維持する方針を示しているが、今後はその扱いに関する議論が活発化すると予想される。UAEによるOPEC脱退と増産を受けて、枠内の結束にほころびが生じるリスクは残る。報道によれば、イラクがOPECによる生産枠の大幅引き上げを要望し、仮に受け入れられなければ脱退を検討していることが明らかになっている。

こうした動きの背景には、加盟国間における原油価格の財政均衡水準が異なることがある。足元の原油価格は多くの国で財政均衡水準を上回っており、各国が増産に動く誘因は高まっている。仮に増産に向けた圧力が一段と強まれば、金融市場では原油の過剰供給を懸念する向きが強まることも予想される。閣僚会合前には、年末にかけて増産を停止するとの見方が出ていたものの、声明では言及がなされておらず、加盟国間の隔たりを理由に意見集約が困難であることが示唆される。一方で、同日に開催された共同閣僚監視委員会(JMMC)では、イラン情勢の悪化以降におけるエネルギー関連施設への攻撃への懸念があらためて示され、修復に費用と時間を要するなど供給に影響が及ぶと指摘された。仮にイラン情勢の沈静化が進めば、一転して供給過剰状態となる可能性も考えられ、OPECプラスとしては枠組みの結束と原油価格の安定の間で難しい舵取りを迫られる展開が続くであろう。

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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