インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

RBAは想定以上に「タカ派」、豪ドル相場は強含みする可能性も

~ブロック総裁は再利上げの可能性を強調、住宅市場の調整は影響しないとの見方を示す~

西濵 徹

要旨
  • RBAは8月の定例理事会で政策金利を2会合連続で4.35%に据え置いた。過去にはインフレ加速を受けて3会合連続で利上げしていたが、景気減速や住宅価格下落など、利上げの副作用が表れる動きが確認されたため、6月会合に据え置きに転じた。4-6月の消費者物価上昇率は前年比+4.0%と依然として目標(2~3%)を上回ったが、前期(+4.1%)から伸びが鈍化した。コアインフレ率は+3.6%と小幅に上昇したものの、RBAの従来予想を下回ったため、市場においてはRBAが今回も金利を据え置くとの見方が強まった。

  • 今回の金利据え置きは市場予想通りで、RBAは全会一致で決定した。インフレは依然高すぎるとしながらも、過去の利上げにより金融環境が引き締まっているが、景気・物価の先行きには不確実性が大きいとの認識を示した。原油供給の混乱などにより、燃料価格が上昇し、財・サービス価格にも波及する可能性があり、インフレは当面高水準で推移するとの見方を示した。そのうえで、インフレを目標水準に戻すため、需要を抑制する必要があるとしつつ、物価の上振れリスクが顕在化した場合には追加利上げも選択肢になると明言した。

  • ブロック総裁は、インフレの上振れリスクがあるため、必要なら再利上げすると発言。利上げの可能性を排除しておらず、利下げについては議論していないことを明らかにした。住宅価格の下落はRBAの政策判断を大きく制約しないと説明。加えて、住宅市場の低迷は金融安定への大きなリスクとは考えておらず、住宅市場を理由に利上げをためらう考えはないとの姿勢を示した。追加利上げを支持する要因として、高止まりするインフレとイラン情勢による物価上振れリスクを挙げた。今回は追加的な情報を待つため据え置いたものの、今後再利上げが必要になる可能性は十分にあると強調した。

  • RBAによる連続利上げを背景に豪ドルは上昇したが、イラン情勢の悪化以降は上値が重くなった。今回の据え置きは予想通りだったものの、声明や総裁発言からRBAが想定以上にタカ派姿勢を維持していることが確認された。今後もRBAのタカ派姿勢が意識され、豪ドルがさらに上昇する可能性が高まっている。また、日銀などとの金融政策の方向性の違いから、日本円に対しても豪ドル高が進む可能性がある。

目次

【RBAは2会合連続で金利を据え置く様子見姿勢を維持】

オーストラリア準備銀行(RBA)は、8月10~11日の日程で開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるキャッシュレートを4.35%に据え置くことを決定した。RBAは、2月の定例会合において2年3ヶ月ぶりの利上げに舵を切り、5月の定例会合まで3会合連続の利上げを実施するなど、引き締め姿勢を強めてきた。

背景には、2025年後半以降のインフレ率が加速し、RBAが定める目標(2~3%)レンジの上限を上回る伸びで推移するなど、インフレ圧力が高まったことがある。イラン情勢の悪化を受けた原油高も重なり、インフレは一段と加速したことも、RBAによる断続的な利上げ実施を後押しした。一方で、足元ではRBAによる断続的な利上げ実施の「副作用」が顕在化しつつある。1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+1.10%にとどまり、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+2.5%に鈍化するなど、持ち直しに一服感が出ている。このため、RBAは6月会合では4会合ぶりに政策金利を据え置いた。さらに、物価上昇の一因となってきた不動産市況も、断続的な利上げに加え、価格抑制を目的とする政府の税制改革の影響も重なり、足元では3ヶ月連続で下落している(図1)。

図表
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さらに、金融政策の判断に影響を与える4-6月の消費者物価は前年同期比+4.0%とRBAが定める目標レンジ(2~3%)の上限を4四半期連続で上回ったものの、前期(同+4.1%)から伸びが鈍化した(図2)(注1)。原油高の一服によるエネルギー価格の下落も影響して、前期比も+0.60%と前期(同+1.38%)から上昇ペースが鈍化した。一方で、コアインフレ率の指標であるトリム平均(刈り込み平均)ベースのインフレ率は前年同期比+3.6%と前期(同+3.5%)からわずかに加速したものの、RBAが5月会合時点で示した見通し(同+3.8%)を下回った。前期比は+0.8%と、教養・娯楽以外のサービス物価(医療、教育、金融など)で幅広く上昇したことが影響し、前期(同+0.8%)と同じペースで上昇している。とはいえ、インフレ鈍化が確認されたことを受けて、金融市場ではRBAが様子見姿勢を維持するとの見方が広がった。

図表
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【RBAのブロック総裁は再利上げに言及するなど「タカ派」姿勢を堅持】

このため、今回のRBAの決定は金融市場の予想通りの結果となった。会合後に公表された声明文では、今回の判断は「全会一致であった」と、6月の前回会合に続いて様子見姿勢を維持した。物価動向について「イラン情勢の悪化による物価への影響は想定を下回っている」としつつ、「インフレ率は依然として高過ぎる」と評価した。さらに、「商品市況が高止まりしており、価格転嫁の動きが広がりをみせている」として、インフレ期待も「短期的に緩和する動きがみられるものの、年初に比べて高止まりしている」とした。

一方、金融市場について「過去3回の利上げを受けて引き締まっている」との見方を示し、「金利や為替が上昇している」とした。そして「個人消費は想定通り鈍化している」ほか、住宅市場について「勢いが変化しており、一部の主要都市で価格が下落し、住宅ローンも減少している」とした。一方で、「企業部門向けの信用供与は堅調に推移している」ほか、労働市場について「ここ数ヵ月は想定を若干上回るペースで緩和しているが、当面は限定的な動きにとどまる」との見方を示した。景気や物価の見通しについて「依然として不確実性が高い」とし、「イラン情勢は依然不透明であり、インフレ率が想定を上回り、景気が想定を下回るシナリオも考えられる」とした。世界経済については「AI(人工知能)関連投資の堅調さがイラン情勢の悪影響を上回っている」ものの、「不確実性が長期化すれば、世界経済にさらなる下押し圧力が掛かる可能性もある」とした。その一方、同国経済は「歴史的に低い生産性の伸びが潜在成長率を抑制している」との見方を示した。

物価動向について「世界的な原油供給の混乱が物価に影響を与えている」、「燃料価格の上昇がインフレを直接押し上げるとともに、財・サービス物価に波及する兆しがみられる」として、「当面高水準での推移が見込まれる」との見方を示した。そのうえで「供給能力のひっ迫を反映した動きに上乗せされる」との見通しを示した。

政策運営について「インフレが定着しないよう注力している」としたうえで、「その実現には需要の抑制や供給能力への圧力緩和を通じてインフレ率を目標に戻す必要がある」との認識を示した。そして、「過去3回の利上げにより金融情勢は引き締まっており、実体経済も想定通り減速している」との見方を示した。ただし、「インフレ率は依然高過ぎ、目標レンジの中央値近傍に戻るのは2027年末頃になると見込まれる」との見通しを示すとともに「上振れリスクがある」とした。今回の決定について「多少引き締め的であると判断されたため、景気動向を評価する間据え置くことを決定した」としつつ、先行きは「インフレ率を持続的に目標水準に戻すために必要な措置を引き続き講じる」、「上振れリスクが顕在化すればさらなる利上げも含まれる」と追加利上げに言及した。先行きの政策運営について「データと見通し、リスク評価を注視する」、「情勢変化に対応できる態勢は整っている」、「物価安定と完全雇用の実現に向けて必要な措置を講じる」と過去数会合と同じ文言を繰り返すなど、タカ派姿勢を維持する意向を示した。

会合後にオンライン会見に臨んだRBAのブロック総裁は、足元の経済状況について「インフレ鈍化には当面の景気減速が必要になると見込まれるが、インフレに上振れリスクがある」との見方を示した。そのうえで、「必要になれば再利上げに動く」、「追加利上げの可能性を排除しておらず、さらなる情報が必要だ」として追加利上げの可能性に言及した。そして、「足元で住宅価格は下落に転じているが、それは我々の政策運営の主眼ではない」との考えを示した。加えて、「理事会では利上げについても議論した」、「利下げについては議論がなく、利上げか現状維持かについてのみ議論した」、「住宅市場が私たちの判断を足止めさせることはない」、「住宅市場は利上げの制約要因にはならない」と述べるなど、理事会のタカ派姿勢の強さがうかがえる。また、「住宅市場の低迷は、金融の安定に対する大きなリスクとはならない」との見方も示した。

「利上げを支持する論点としては、インフレ率が依然高水準にあること、イラン情勢による上振れリスクなどが挙げられる」としたうえで、「今回はさらなる情報を待つことにしたが、利上げの可能性は依然念頭にある」とした。加えて、「経済成長のペースを鈍化させるとともに、労働市場のひっ迫感を緩和させる必要がある」として、「再利上げに動く必要が生じる可能性は十分にある」との見方を示した。

【RBAのタカ派姿勢確認で豪ドル相場は強含みする展開が見込まれる】

金融市場においては、RBAが3会合連続の利上げ実施を決定するなど、タカ派姿勢を強めていることを追い風に、豪ドル相場は強含んできた。しかし、イラン情勢の悪化を受けた「有事の米ドル買い」の動きが強まるとともに、RBAのタカ派姿勢が後退するとの見方も反映して、豪ドル相場は一転上値の重い動きをみせた。

今回のRBAによる金利据え置きは事前の市場予想の通りとなったものの、声明文、およびブロック総裁の会見はRBAが想定以上に「タカ派」姿勢を堅持している様子がうかがえる。日本と米国による協調介入に加え、FRB(米連邦準備理事会)の利上げ観測の後退も重なり、足元では米ドル高圧力が後退するなかで豪ドルの対米ドル相場は堅調な動きをみせているが(図3)、先行きもRBAのタカ派姿勢が意識される形で、上値を追う可能性は高まっている。また、日本円に対しては金融政策の方向性の違いが影響して強含むことも考えられる。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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