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2026.04.21
アジア経済
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イラン情勢
インフレ高止まり、RBNZの利上げ観測がNZドルを支えるか
~3四半期連続で目標を上回る推移、利上げ観測の一方で、政権交代の可能性にも要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 中東情勢の緊迫化をきっかけに、原油や天然ガス価格のほか、肥料価格が高止まりしている。2026年はエルニーニョ現象の可能性もあり、穀物価格の上昇ペースが加速するなど、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心に世界的なインフレが懸念される。
- ニュージーランドは、エネルギー輸入に依存してマクロ的に景気が下押しされる懸念がある。その一方、再生可能エネルギー比率が高く、食料自給率が100%を大幅に上回るなど強みを持つ。石油製品はアジアからの輸入に依存し、備蓄能力も低いが、食料輸出国としての地位が食料インフレへの耐性につながり、NZドル相場は調整後に持ち直しの動きをみせている。
- RBNZは2025年11月まで累計325bpの利下げを実施してきたが、インフレ加速を受けて姿勢を転換している。4月会合ではブレマン総裁が利上げ可能性を示唆するなどタカ派姿勢を強めている。さらに、1-3月のインフレ率は前年比+3.1%で3四半期連続目標上回った。先行きも食料品とエネルギー価格上昇がインフレ圧力を強めると見込まれ、金融市場ではRRBNZによる早期利上げを織り込む動きがNZドル相場を下支えする可能性がある。
- 同国では11月7日に総選挙が実施される。当初、与党・国民党の支持率が野党・労働党を上回る動きがみられた。しかし、中東情勢が緊迫化した後の3月の世論調査では、与党支持率が急落した。党内で党首交代の動きが出たが、4月21日の党大会で続投が決定している。今後は政権交代の行方がNZドル相場の材料になる可能性もある。
中東情勢の緊迫化による世界経済への悪影響が響いている。イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けて、原油や天然ガスなどエネルギー資源価格は高止まりしている。湾岸産油国は窒素系肥料の原料である尿素の世界輸出量の3分の1を占めており、供給懸念を背景に窒素系肥料の国際価格も大幅に上昇している。肥料価格の上昇は、農家による作付動向に影響を与えて収穫量を左右するため、先行きの世界的な作物需給にも大きな影響を及ぼすと予想される。そのうえ、2026年はエルニーニョ現象の発生する可能性が高まり、世界的な異常気象とそれに伴う不作も懸念される。足元では中東情勢の緊迫化を理由にすでに穀物価格が上昇しているが、先行きは一段と加速することも考えられる。その結果、食料品とエネルギーという生活必需品を中心に物価上昇が進むなど、世界的なインフレを招く可能性が高まっている。
こうしたなか、金融市場ではオーストラリアの豪ドル、ニュージーランドのNZドルというオセアニア通貨が強含んでいる。オーストラリアについては、エネルギー、食料品ともに輸出超過状態にあるため、このところのエネルギーや穀物価格の上昇がマクロ的に景気の押し上げ要因となることが期待される(注1)。一方、ニュージーランドは原油や石油製品、天然ガスなどエネルギー資源の収支(輸出入の差し引き)がGDP比で▲2.1%弱の赤字と試算されるなど、足元の原油高はマクロ的に景気の足を引っ張ることが懸念される。同国の一次エネルギーに占める再生可能エネルギー比率は45%と高いうえ、20%を占める天然ガスは国内で調達が可能な状況にあるうえ産油国ででもある。しかし、原油の不足分は中東や東南アジア、オーストラリアからの輸入に依存している。さらに、国内の石油精製施設は機能停止状態にあり、石油製品はほぼ全量アジアや隣国オーストラリアからの輸入に依存している。政府は、国内の原油備蓄は2ヶ月程度にとどまるものの、海外備蓄を合わせれば3ヶ月分を確保しているとしている。とはいえ、国内の貯蔵能力は低く、世界的なサプライチェーンの混乱の影響は避けられない状況にある。一方、ニュージーランドは人口が530万人程度で食料自給率は100%を大きく上回っており、食肉や魚介類、乳製品、果物などを輸出している。穀物については、小麦は国内需要をおおむね賄えているものの、生産量は年ごとに変動することに注意が必要とされる。中東情勢の緊迫化をきっかけに世界的に食料インフレ圧力が強まっているが、食料自給率が高いため、そうした事態に対する耐性は高いと判断される。その結果、中東情勢の緊迫化を受けてNZドル相場は一旦調整したものの、足元では持ち直しの動きをみせている。

NZドル相場が持ち直しの動きをみせる背景には、中銀であるRBNZ(ニュージーランド準備銀行)がタカ派姿勢に傾いていることも影響している。RBNZは2024年8月に約4年ぶりの利下げに動き、その後は一時休止を挟みつつ、2025年11月まで断続的に累計325bpもの利下げを実施してきた。しかし、2025年にはインフレ率が加速に転じるとともに、RBNZが定める目標(2~3%)を上回る伸びとなるなどインフレが強まる動きが確認されている。もっとも、RBNZは2026年2月の定例会合で政策金利を据え置くとともに、利下げ局面の終了を示唆したものの、景気下支えの観点から緩和姿勢を維持するなど『ハト派』姿勢を維持する考えをみせていた。しかし、中東情勢の緊迫化を受けた原油高がエネルギー価格の上昇を招く懸念が高まるなか、RBNZは2026年4月の定例会合でも2会合連続で政策金利を据え置いたものの、会合後に記者会見に臨んだブレマン総裁は、条件次第で将来的な利上げも辞さない考えを示すなど『タカ派』姿勢を強めている様子が確認された(注2)。1-3月のインフレ率は前年同期比+3.1%と前期(同+3.1%)から横ばいとなり、3四半期連続で目標を上回る伸びで推移している。前期比の伸びも+0.90%と前期(同+0.61%)から加速しており、生鮮品を中心とする食料品に加え、中東情勢の緊迫化を受けた原油高を反映してエネルギー価格も上昇するなど、生活必需品でインフレ圧力が強まる動きが見受けられる。食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同期比+2.6%と目標域内にとどまるものの、前期(同+2.5%)から加速している。前期比の伸びは+0.53%と前期(同+0.84%)からペースが鈍化しており、サービス物価は落ち着いた推移をみせる一方、財価格は非貿易財を中心に上昇の動きを強めるなど、インフレ圧力が強まる兆しがみられる。先行きの物価動向を巡っては、エネルギー価格の上昇をきっかけに幅広くインフレ圧力が強まることが予想される。金融市場ではRBNZが早期の利上げに動く可能性を織り込むと見込まれ、当面のNZドル相場を下支えする展開が予想される。

ニュージーランドでは1月、ラクソン首相が11月7日に次期総選挙を実施することを明らかにしている。その時点においては、景気回復の動きが確認されたことも追い風に、ラクソン政権を支える右派の与党・国民党の支持率が左派の野党・労働党をわずかに上回っていた。連立を組む右派・ACT党とポピュリスト政党のニュージーランド・ファースト党を合わせると50%を上回っていたため、ラクソン氏は早期の選挙実施により政権維持を目指したと考えられる。しかし、その後の中東情勢の緊迫化をきっかけとする原油高や供給懸念を受けて状況は一変している。3月に実施された世論調査では、与党・国民党の支持率が低下しているうえ、次期首相を問う質問でも労働党党首のヒプキンス前首相がラクソン氏を上回るなど苦境に立たされている。こうしたなか、国民党内において党首交代を求める動きが出ているとの報道も出ていたものの、4月21日に開催された党大会ではラクソン氏の続投が決定するなど事態を乗り切った模様である。とはいえ、今後のNZドル相場を巡っては政権交代の行方も材料視されると見込まれる。
注1 4月20日付レポート「豪ドルは中東情勢の緊迫化のなかで「勝者」となるか?」
注2 4月8日付レポート「ニュージーランド中銀は様子見維持も、将来的な利上げに言及」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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