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オセアニア通貨の「豪ドル優位」は復活するか?

~RBAの追加利上げ観測の再浮上により、豪ドル相場に見直しの可能性~

西濵 徹

要旨
  • 年明け以降は、RBAの相次ぐ利上げとRBNZの据え置きを背景に、豪ドルはNZドルに対して上昇し、豪ドル/NZドル相場は5月末に13年ぶりの高値を記録した。その後は、RBAが利上げを停止する一方、RBNZが約3年ぶりの利上げに踏み切ったことで、金融政策のスタンスが逆転し、豪ドル/NZドル相場にも変化の兆しが現れた。
  • 金融市場ではRBAの利下げも意識されたものの、6月の雇用統計では雇用者数や労働参加率が堅調に推移し、豪州の労働市場の底堅さが改めて確認された。底堅い雇用やイラン情勢を背景とするインフレ圧力の高まりを受け、市場では一転してRBAの追加利上げ観測が再浮上している。このため、豪ドルは対NZドルだけでなく、対米ドルや対円でも持ち直し・上昇余地が意識される展開が見込まれる。

年明け以降のオセアニア通貨を巡っては、オージー(豪ドル)がキウィ(NZドル)に対して強含みする展開が続いた。その結果、豪ドル/NZドル相場は5月末に一時13年ぶりの高値を記録した(図1)。背景には、RBA(オーストラリア準備銀行)とRBNZ(ニュージーランド準備銀行)の金融政策の違いがある。RBAは2月に2年3ヵ月ぶりの利上げに踏み切り、3月、5月と3会合連続で利上げを実施するなど、金融引き締めを着実に強化してきた。一方、RBNZは2月会合で様子見姿勢を維持し、ハト派姿寄りの姿勢を示した。その後もRBNZは4月会合、5月会合と連続で政策金利を据え置いたため、豪ドルはNZドルに対して強含む展開となった。

図表
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しかし、その後の金融市場においては、RBAとRBNZの政策スタンスが「逆転」するとの見方が強まるなど、流れに変化の兆しが出ている。イラン情勢の悪化を受けた原油をはじめとするエネルギー資源価格の上昇を背景に世界的にインフレ圧力が強まるなか、原油備蓄が乏しいオーストラリア、ニュージーランドの両国でもエネルギーを中心とするインフレが顕在化している。こうしたなか、オーストラリアではRBAによる断続的な利上げ実施を受けて高金利と物価高が併存する状況が長期化し、その副作用が懸念されるなかで、RBAは6月会合で4会合ぶりに政策金利を据え置いた。RBAは追加利上げの可能性を排除しない考えを示しているものの、金融市場では追加利上げ観測が後退、RBAが利下げに転じるとの見方が強まった。一方で、RBNZは7月の定例会合で約3年ぶりの利上げに舵を切り、先行きも追加利上げを慎重に進める姿勢をみせた。このように金融政策のスタンスが「RBNZ>RBA」へと転じたことが、足元の豪ドル/NZドル相場の変化につながった。

金融市場でこうした見方が広がった背景には、これまで増加基調が続いてきた雇用に変調の兆しがみられたことがある。消費者や企業マインドも悪化しているほか、上昇基調が続いた住宅市況にも変調の兆しがみられるなど、先行きの景気や物価を下押しする懸念が高まった。

しかし、23日に公表された6月の失業率は4.4%と2ヵ月連続の横ばい、雇用者数は前月比+7.6万人と前月(同+4.4万人)から2ヵ月連続で増加していることが確認された(図2)。雇用形態別でも、非正規雇用者数(前月比+4.7万人)、正規雇用者数(同+2.9万人)ともに増加するなど、堅調さがうかがえる。さらに、労働力人口も前月比+8.9万人と前月(同+2.7万人)から2ヵ月連続で増加しており、労働参加率も67.0%と前月(66.7%)から+0.3pt上昇するなど、労働市場への参加意欲の高さも確認された。加えて、総労働時間も増加に転じるなど、雇用の底堅さがうかがえる。

図表
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このため、RBAは労働需給の引き締まりが物価に与える影響を警戒して、一転して追加利上げに動くとの見方が広がっている。豪ドル/NZドル相場はこのところ上値の重い展開をみせてきたものの、状況が変化する可能性が出ている。さらに、足元ではイラン情勢が再びエスカレートしており、原油価格は上昇基調を強めるなど、世界的なインフレ圧力が再び強まる懸念が高まっている。FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ観測を背景に米ドル高圧力が強まりやすい状況にあるものの、RBAの追加利上げ観測が意識されることで、豪ドルの対米ドル相場は持ち直しの動きを強める可能性が出ている。日本円に対しては、高市政権による「骨太の方針」に加え、日銀にとって追加利上げのハードルが高いことも重なり円安が意識されやすく、豪ドルは対円でも上値を試す展開が予想される(図3)。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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