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OPECプラス有志国、イラン情勢を理由に4月の増産開始で合意

~増産もホルムズ海峡の事実上封鎖で無意味か、原油価格の動向も中東情勢如何の展開が続こう~

西濵 徹

要旨
  • OPECプラスの有志8ヶ国は、3月1日にオンライン閣僚会合を開催した。有志8ヶ国は、2024年に大規模自主減産を実施したが、2025年から市場シェア確保を優先する増産路線へ転換した。しかし、世界経済の不透明感による原油価格の下落を受けて2026年1~3月は増産を停止し、4月以降の方針については「フリーハンド」を維持した。OPECの需要見通しでも4~6月の下振れリスクが示されるなど、増産余地は限られるとみられた。年明け以降はイラン情勢の動向が国際原油価格を左右する展開が続いてきた。
  • 米国とイランの核協議は難航し、米国はイラン周辺への軍事的圧力を強めていた。そうしたなか、2月28日に米国とイスラエルがイランへの軍事作戦を開始し、ハメネイ師ら要人を殺害。イラン革命防衛隊の報復によりホルムズ海峡が事実上封鎖状態となるなど情勢が急変した。こうした状況で開催された閣僚会合で、有志8ヶ国は4月に日量20.6万バレルの増産を合意したが、余剰生産能力を持つ国はサウジアラビアとUAEに限られる。さらに、ホルムズ海峡の事実上封鎖が続く状況においては、増産の実効性にも疑問が残る。その意味では、当面の原油価格は中東情勢の行方に大きく左右されることは避けられそうにない。

主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、3月1日にオンラインで閣僚会合を開催した。有志8ヶ国は、原油価格の安定を重視する観点から、2024年に日量220万バレル規模の追加的な自主減産を実施した。しかし、自主減産の長期化に伴いシェア縮小による影響力低下が顕著になったことを受けて、2025年4月からこれを段階的に縮小し、9月に追加自主減を完全に解除した。さらに、2025年10月からは有志8ヶ国が実施してきた日量166万バレルの自主減産も段階的に縮小して実質増産に動くなど、市場シェアの確保を目指す動きがみられた。有志8ヶ国は2025年4月から12月にかけて日量290万バレルの実質増産に動く一方、世界経済を巡る不透明感が需要の重しとなり、国際原油価格は下落基調を強めた。こうした状況を受けて、有志8ヶ国は2025年11月の閣僚会合において、2026年1~3月の3ヶ月間の増産を停止することで合意するなど、生産計画の重点を再び軌道修正した。有志8ヶ国は、2月の閣僚会合でも3月の増産停止を再確認しつつ、4月以降の生産計画に関する言及はなく、あらゆる選択肢を温存したものと考えられる(注1)。なお、年明け以降の国際原油価格を巡っては、イラン情勢の不透明感の高まりを理由に上昇する動きをみせたものの、トランプ米大統領がイランとの核協議に動いていることを示唆して調整に転じるなど、不安定な動きが続いてきた。その上、OPECが示した最新の需要見通しでは、4~6月にかけて需要が下振れする可能性を示唆するなど、国際原油価格の上値が抑えられる懸念があり、増産余地が制限されることも予想された。こうした事情も、有志8ヶ国が4月以降の動きについて「フリーハンド(自由な裁量)」を得たいとの思惑につながったと考えられる。

しかし、米国はイランとの核協議を再開させたものの、米国が提案した要求は核施設の解体、ウラン備蓄の引き渡し、核濃縮活動の放棄といったイランが受け入れがたいものであったとされる。これに対して、イランは過去に拒絶してきた妥協案に前向きな姿勢をみせる一方、イラン国内に数千基の高度な遠心分離機を残しつつウランを最大20%まで濃縮可能とするなど、2015年の核合意で定められた上限(3.67%)をはるかに上回る提案を行った。その上、イランはミサイル開発計画を継続する意思を示したとされ、米国はイランと協議を行う背後で、イラン周辺の海域や基地への戦力配備を着実に進めるなど圧力を強める動きをみせた。これを受けて国際原油価格は上昇基調を強めたため、有志8ヶ国は閣僚会合を前に増産の再開を検討している旨の報道が出ていた。こうしたなか、イスラエルと米国は2月28日にイランに対する軍事作戦を開始し、最高指導者のハメネイ師をはじめ多数の体制の要人を殺害した。これを受けて、イラン革命防衛隊が報復攻撃に動いており、イラン情勢は急速に悪化している(注2)。こうした状況のなかで開催された閣僚会合において、有志8ヶ国は4月に日量20.6万バレルの増産を行うことで合意した。報道によれば、閣僚会合では4月の増産幅について、日量13.7~54.8万バレルの検討が行われた模様であり、これは状況に応じてさらなる増産可能という姿勢を示したものと捉えられる。ただし、現状ではサウジアラビアとUAEを除いて、供給拡大への余剰生産能力を抱える国はほぼない状況にあるとされる。その上、イラン革命防衛隊による報復攻撃を受けてホルムズ海峡は事実上封鎖状態にあるなど、仮に増産が行われた場合においても同海峡を通過できなければ無意味となる可能性は高い。その意味では、当面の国際原油価格については、イランをはじめとする中東情勢の行方に左右される展開が続くことは避けられないであろう。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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