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2026.03.19
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NZ景気回復の足場は乏しく、早期利上げの可能性は一層低下
~オセアニア通貨は「オージー(豪ドル)」>「キウィ(NZドル)」の様相を強める展開が続くか~
西濵 徹
- 要旨
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ニュージーランドでは、2022年に30年ぶりの高インフレを記録したものの、その後はインフレが鈍化し2024年後半にはRBNZの目標圏内(2〜3%)に収束した。しかし2025年にインフレは再び加速しており、10-12月期には前年比+3.1%と目標上限を上回る伸びとなっている。これを受けて、RBNZは2025年2月の会合で政策金利を据え置くとともに、将来的な利上げに含みを持たせるなど、利下げ局面の終了を示唆した。
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金融引き締めや中国の景気減速を背景に2024年半ばにはテクニカル・リセッションに陥ったが、その後の景気は回復の兆しがみられた。2025年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.0%と2四半期連続のプラス成長を維持した。しかし、個人消費・設備投資・不動産投資はいずれも弱く、成長は公的需要と在庫積み増しに支えられた部分が大きい。したがって、景気の実態は数字以上に厳しい状況にある。
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中東情勢を巡る不透明感を背景にした原油価格の上昇は、ニュージーランドにとっては、貿易収支の悪化とインフレ再加速のリスクとなる。RBNZの利上げ観測後退と「有事のドル買い」が重なり、NZドルは対米ドルで軟調推移が続く見通し。一方、隣国オーストラリアではRBAがタカ派姿勢を強めており、足元の豪ドル/NZドル相場は13年ぶりの高水準となった。この傾向は今後も続く可能性が高まっている。
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ニュージーランドでは、インフレ率が2022年半ばに一時30年ぶりの高水準に達したものの、2023年には鈍化し、2024年後半以降は準備銀行(RBNZ)が定める目標(2~3%)に収束するなど落ち着きを取り戻した。RBNZによる物価抑制を目的とする金融引き締めを受け、ニュージーランド経済は物価高と金利高の共存に直面し、最大の輸出相手である中国の景気減速も重なり、2024年半ばにかけてテクニカル・リセッションとなる景気低迷に陥った。したがって、RBNZは2024年8月に約4年ぶりとなる利下げを実施し、その後も一時休止を挟みつつ、断続的な利下げに動いて金融緩和を進めた。インフレ鈍化やRBNZによる断続的な利下げも追い風に、2025年後半の景気は底打ちする兆しがみられた。その一方、鈍化したインフレ率は2025年に再加速に転じており、2025年10-12月には前年同期比+3.1%と2四半期連続で目標の上限を上回る伸びとなるなど、インフレが警戒される状況にある。これを受けて、RBNZは2月の定例会合で政策金利を据え置いたうえで、先行きの政策運営について、しばらく緩和姿勢を維持する一方、利上げ開始時期の前倒しを示唆するなど、利下げ局面の終了を仄めかした(注1)。さらに、2月末のイスラエルと米国によるイランへの軍事行動をきっかけとする中東情勢の不透明化を受けて原油価格は上振れしており、エネルギー資源を輸入に依存するニュージーランド経済にとって、対外収支の悪化と物価上昇を招くことが懸念される。その意味では、RBNZの政策運営を取り巻く環境は変化しつつあると考えられる。

こうしたなか、10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+1.00%と2四半期連続のプラス成長となるも、前期(同+3.50%)からペースは鈍化している。中期的な基調を示す前年同期比ベースでは+1.3%と前期(同+1.1%)から加速しているものの、力強さを欠く推移が続いている。世界的には、トランプ関税の本格発動を前にした輸出駆け込みの動きがみられたものの、米国はニュージーランドへの相互関税を10%としたため、そうした影響が出にくい状況にある。一方、2025年後半にかけてのインフレ加速による実質購買力の下押しに加え、雇用環境を巡る不透明感が重しとなる形で個人消費は弱含んでいる。さらに、RBNZによる断続的な利下げ実施にもかかわらず、不動産投資は力強さを欠くとともに、企業の設備投資意欲も弱含んでおり、民間需要は総じて低迷している。その一方、公共投資の進捗が政府消費や固定資本投資を下支えしており、足元の景気は公的需要への依存を強めている。さらに、在庫投資による成長率寄与度は前期比年率ベースで+3.50ptと大幅プラスになっていると試算され、在庫の積み上がりが成長率を押し上げていることを勘案すれば、景気実態は数字以上に厳しいと捉えられる。分野ごとの生産動向も、個人消費の低迷を受けてサービス業は全般的に力強さを欠くほか、製造業の生産も弱含むとともに、建設業の生産は下振れしており、幅広い分野で低迷している様子がうかがえる。

こうした経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の悪化に加え、RBNZによる利上げ時期の後ろ倒しが見込まれるうえ、「有事の米ドル買い」の動きも重なる形で、NZドル/米ドル相場は一段と頭打ちの様相を強めることは避けられない。一方、日本円に対しては、日銀の金融政策に対する見方に加え、米ドル/日本円相場の動向に左右される可能性に注意が必要ではあるものの、NZドル安が意識されやすい展開が続くと見込まれる。年明け以降の金融市場においては、米ドル安が意識される局面が続いたなかでNZドルと豪ドルの「オセアニア通貨」が強含みする動きがみられた(注2)。足元では中東情勢の不透明感の高まりが「有事の米ドル買い」を招いているほか、FRB(米連邦準備制度理事会)もハト派姿勢を後退させて米ドル高圧力がかかりやすい状況にあり、オセアニア通貨を取り巻く環境は大きく変化している。こうしたなか、RBA(オーストラリア準備銀行)は2月、3月と2会合連続の利上げを決定するなどタカ派姿勢を強めており(注3)、RBNZの利上げ観測が後退するのと対照的な動きをみせている。RBAによる追加利上げのタイミングは見通しにくくなっているものの、政策委員が全員利上げを志向してタカ派姿勢を強めていることを勘案すれば、少なくとも政策金利の据え置きを志向するRBNZとの方向性の違いは大きい。その意味では、足元の豪ドル/NZドル相場は13年ぶりの高水準となるなど「オージー(豪ドル)>キウィ(NZドル)」の様相をみせているが、先行きもそうした動きが続く可能性は高いと見込まれる。


注1 2月18日付レポート「ニュージーランド中銀は当面緩和維持、市場予想より「ハト派」の模様」
注2 2月4日付レポート「オセアニア通貨、当面はオージー(豪ドル)>キウィ(NZドル)の展開か」
注3 3月17日付レポート「豪中銀が2会合連続の利上げ、追加利上げの行方は不透明に」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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