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オセアニア通貨、当面はオージー(豪ドル)>キウィ(NZドル)の展開か

~景気と物価は強含むも、雇用回復は道半ば、RBNZが早期利上げに動く可能性は低いと見込まれる~

西濵 徹

要旨
  • このところの金融市場では、豪ドルやNZドルなどオセアニア通貨が強含みで推移している。背景には、RBAが3日の定例会合で利上げを実施しタカ派姿勢を強めていることに加え、RBNZについても景気や物価指標が想定を上回り、追加利下げ観測が後退したことで、将来的な利上げ期待が高まったことがある。
  • RBNZでは新総裁就任後の政策スタンスに注目が集まるなか、物価は目標達成に向けて良好としつつも、政策判断は慎重姿勢を維持した。直近の雇用指標では失業率は上昇して10年ぶりの水準となるも、雇用者数は増加に転じるなど、雇用環境は改善と悪化が混在しており、回復の動きは道半ばの状況にある。
  • 市場ではRBNZの年内利上げ観測が浮上してきたものの、足元の経済状況を踏まえると早期利上げの必要性は低下している。NZドルは米ドル安を背景に底堅く推移してきたが、今後は米ドル相場の不透明感や利上げ観測の後退から上値の重い展開が見込まれ、豪ドルとの値動きに差が生じる可能性がある。

このところの金融市場においては、豪ドルとNZドルといったオセアニア通貨が強含みする展開が続いている。この背景には、両国の中銀が早晩利上げに動くとの見方が強まったことが影響している。なお、RBA(オーストラリア準備銀行)は、2月3日に開催した定例会合で利上げを決定したうえで、先行きの追加利上げを排除しない姿勢を示すなど、『タカ派』に傾斜する動きをみせている(注1)。一方、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)は、2025年11月の定例会合で利下げを実施したものの、先行きの政策運営を巡って利下げ局面の終了を示唆するなど、政策転換の時期が近付いている可能性を示した(注2)。そして、その後に発表された2025年7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+4.42%とプラス成長になり、RBNZが最新の見通しで示した想定に比べて強かったため、RBNZが追加利下げに動く可能性は後退したとみられた(注3)。さらに、2025年10-12月のインフレ率は前年同期比+3.1%と前期(同+3.0%)からわずかに伸びが加速しており、1年半ぶりに目標(2~3%)の上限を上回った。RBNZは最新見通しにおいて、前年比+2.7%に鈍化すると予想していたため、足元のインフレ圧力が想定以上に根強いことが示唆された(注4)。その上、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同期比+2.5%と目標域内で推移するも、前期比では+0.84%と前期(同+0.77%)から上昇ペースが加速しており、幅広くインフレ圧力が強まる動きが確認されている。RBNZは、再利上げに動くのは2027年半ば以降との見通しを示したものの、景気や物価が想定を上回る動きをみせたことを受けて、金融市場では利上げの時期が前倒しされるとの見方が広がりをみせた。こうした事情が、金融市場においてオセアニア通貨が強含みする動きにつながっている。

図表
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なお、RBNZにおいては、2025年11月の定例会合の後にブレマン新総裁が就任しており、金融市場は新総裁の下でどういったスタンスを有するかに注目が集まっている。ブレマン氏は、1月末に行われたインタビューにおいて、足元の物価動向について「余剰生産能力に加え、賃金上昇も抑制されるなかで目標実現に向けて良好な状況にあり、目標実現を確実にすべくバランスを取る」との考えを示している。その上で、政策運営について「新たな情報を入手し、一部に景気回復がやや強まっていることを示唆する動きがみられるが、状況は依然としてまちまちであり、さらなる情報が必要」と述べるなど明言は避けた格好である。こうしたことから、経済指標の動向に注目が集まるなか、2025年10-12月の失業率は5.4%と前期(5.3%)からわずかに悪化しており、2015年7-9月以来となる高水準となるなど、雇用環境の悪化が確認されている。失業者数は前期比+0.4万人と3年にわたって拡大しているうえ、前期(同+0.3万人)からそのペースも加速しており、中期的な基調も拡大傾向で推移する展開が続いている。一方、雇用者数は前期比+1.4万人と前期(同±0.0万人)から6四半期ぶりの拡大に転じており、中期的な基調も拡大傾向に転じるなど雇用を取り巻く環境に変化の兆しがうかがえる。求職者数の増加が雇用の伸びを相殺する動きがみられるとともに、年代別では若年層を中心に雇用調整圧力がくすぶるなど、足元の雇用環境はまちまちの状況にある。労働参加率は女性を中心とする労働市場への参入を反映して上昇しているものの、民間部門における賃金上昇率は物価の上昇ペースを大きく下回っており、雇用環境の改善は道半ばと捉えられる。

図表
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こうした状況を勘案すれば、金融市場においてはRBNZが年内にも利上げに動くとの見方が広がりをみせてきたものの、当面は利上げに動く必要性は低下していると見込まれる。このところのNZドルの対米ドル相場は、米ドル安が意識される局面が続いたことも影響して底堅い動きをみせてきた。しかし、米ドル相場の行方に不透明感が高まっていることに加え、RBNZによる早期の利上げ観測が後退していることもあり、先行きについては上値の重い展開が続くと見込まれる。前述したように、オセアニア通貨としてNZドルは豪ドル相場に連れる形で上昇する動きをみせてきたものの、当面は両者の動き方に違いが生じる可能性に注意する必要がある。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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