- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- 米国の原油輸出動向(26年5月時点)
米国の原油輸出が急拡大している。2月末以降の米イラン戦争を契機にホルムズ海峡のタンカー航行が困難となっており、代替調達先として米国の存在感が高まっている。
5月貿易統計によると、米国の原油輸出額は前年同月比+157.1%(4月:+116.3%)と大幅に増加した(図表1)。輸出増の内訳をみると、船舶輸送量(重量ベース)は+64.6%(+43.7%)、輸出単価は+56.2%(+50.5%)と共に増加した。米国内の生産拡大や在庫放出、及び価格上昇の複合的な要因が輸出金額を押し上げている(図表2)。この結果、米国の財輸出に占める原油の割合は9.2%と、2025年平均の4.6%から倍増した。また、ナフサやジェット燃料等の石油製品(HSコード:2710)に関しても、5月の輸出金額は+60.5%(+74.4%)と急拡大を示した。
米イラン戦争開始後の3~5月における原油輸出額を州別(輸送元)にみると、テキサス州が全体の90.6%(2025年実績:94.2%)と最大であり、ルイジアナ州が7.2%(同、3.5%)と続く。すなわち、足下の輸出拡大はこれら2州及びその周辺地域から生産されるシェールオイルが中心とみられる。なお、シェールオイルは軽質である一方、日本の製油所は中東から輸入する中重質に精製設備を最適化している。他方、中質かつ東アジアへの輸送距離が短いアラスカ州からの輸出は全体の0.9%(0.6%)を占めるに留まっている。
原油輸出先を国・地域別にみると、日本向けは3~5月実績が25年対比で月平均9.9倍と突出して拡大している。実際、対日輸出額は26年5月で37.8億ドルと、2025年合計の25.2億ドルを単月で大幅に上回っている。原油輸出における国・地域別シェアをみても、日本は25年:2.5%→26年3~5月:14.5%へ急上昇した(図表4)。また、同期間における米国の韓国向け輸出は2.4倍、ASEAN向けは2.3倍と、総じて中東産原油に依存していたアジア諸国への輸出拡大が目立つ。
先行きに関して、4~5月の輸出単価は100ドル/バレルを上回ったものの、6月以降は原油価格が下落傾向にあるため(図表5)、価格要因による金額押し上げ効果は縮小する可能性が高い。一方、トランプ大統領は7月8日に米イランの攻撃応酬を踏まえ「停戦は終わった」と述べるなど、ホルムズ海峡の航行正常化は依然不透明な状況にある。各国が米国からの原油代替調達を続ける場合、米国の原油輸出数量は高水準で推移する可能性が高い。

前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 前田 和馬
まえだ かずま
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析
執筆者の最近のレポート
関連テーマのレポート
-
米国:中間選挙アップデート(2026年10月) ~民主党の勢いが強まる~
米国経済
前田 和馬
-
米国経済マンスリー:2026年9月 ~堅調な景気を背景にFRBが利上げを開始~
米国経済
前田 和馬
-
FRBの過去の利上げサイクルと長期金利の行方 ~過去の利上げパターンを織り込む金融市場~
米国経済
前田 和馬
-
ウォーシュFRBが初の利上げを全会一致で決定 (26年9月15~16日開催FOMC) ~3年2カ月ぶりの利上げ転換、インフレ粘着性でタカ派シフト鮮明~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:9月FOMCで利上げへ舵を切るFRB ~「トランプ・インフレ」と実質中立金利の上昇に対応するタカ派転換~
米国経済
桂畑 誠治

