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2026.05.07
欧州経済
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ルーマニアで内閣不信任案が可決
~財政緊縮路線の軌道修正で投機的水準に格下げか?~
田中 理
- 要旨
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- ルーマニアでは6日、連立を離脱した中道左派の最大政党が極右政党と手を組み、内閣不信任案が可決した。財政再建を進めてきたボロジャン政権は、僅か10ヶ月で退陣を余儀なくされた。首相の任命権を持つ大統領は、別の親EU政権の発足を目指している。政権打倒で極右と手を組んだ中道左派政党も、極右との連立政権発足は否定している。議会の解散・総選挙や極右政権の誕生はひとまず回避される公算が大きい。次期政権の枠組みは、崩壊した連立政権にほぼ変わらない連立を発足するか、二大政党の何れかが非多数派政権を発足するか、当座の危機を乗り切るテクノクラート政権を発足する以外にない。財政緊縮路線の軌道修正で同国の国債格付けが投機的な水準に引き下げられるか、短命政権に終わって極右政権誕生の可能性が高まるか、不安定な経済・政治環境が続くことが予想される。
ルーマニア議会は6日、連立を離脱した中道左派の最大政党「社会民主党(PSD)」が、欧州連合(EU)に懐疑的な極右政党「ルーマニア人統一同盟(AUR)」と協力し、ボロジャン首相の中道右派政党「国民自由党(PNL)」が率いる連立政権に対する内閣不信任案を賛成281・反対233の賛成多数で可決した。EU加盟国で最大の財政赤字を抱える同国に対しては(図表1)、EUの財政規律違反の是正措置である「過剰赤字手続き(EDP)」が開始され、財政再建が急務となっている。2025年6月に誕生したボロジャン政権は、VATの引き上げ、エネルギー価格の上限撤廃、政府歳出の凍結など、厳しい財政再建に取り組んできた。PSDは政府の厳しい財政緊縮措置に反対し、先月末に連立を離脱していた。

4月28日付けレポート「ルーマニアでもEUに懐疑的な政権が誕生か?」で指摘した通り、内閣不信任案の可決は必ずしも議会の解散・総選挙につながる訳ではない。大統領は新たな首相候補を指名し、その候補が議会で2回連続否決され、最初の首相候補の否決から60日以内に政権が樹立できない場合、両院議長と各党代表者と協議のうえ、議会を解散するかどうかを決断する。2025年5月のやり直しの大統領選挙で極右候補に勝利した中道独立系のダン大統領は(図表2)、遠くない将来に親EUの新政権が誕生する可能性があることを示唆している。

政権打倒で極右勢力と共闘したPSDは、AURと連立を組むことを否定している。AURの政権入りを排除した場合、現在の議会構成を考えると(図表3)、①PSDとPNLの二大政党が中心となり、僅か10ヶ月で崩壊した組み合わせとほぼ変わらない連立政権が再び発足するか、②PSDかPNLのどちらかが非多数派政権を発足させるか、③当座の政治危機を乗り切るため、非政治家によるテクノクラート政権が発足する―以外の選択肢は見当たらない。PNLは連立を離脱したPSDとの連立協議に難色を示しており、政権発足に漕ぎ着けた場合も不安定な短命政権に終わる可能性がある。

政権発足の取り組みが失敗に終われば、解散・総選挙が現実味を帯びる。最近の世論調査は、AURが最大勢力となるが、単独での過半数獲得が難しいことを示唆している(図表4)。政権打倒で共闘したPSDが連立参加や閣外協力に反対する限り、極右政権が誕生する可能性は低い。

総選挙と極右政権の誕生が回避されたとしても、次期政権が財政緊縮路線を軌道修正する可能性があるとして、通貨安・債券安が進んでいる。投資適格級の最低ランクに位置する同国の格付けは投機的水準に格下げされる可能性がある。政府の財政再建の取り組みが評価され、昨年末以降、6%台に低下していた10年物国債利回りは再び7%を超え、1ユーロ=5.08レウ前後で推移していた為替相場は連立政権崩壊後に1ユーロ=5.20レウ前後に下落し、内閣不信任案の可決で5.26レウ台の史上最低水準に下落している。
田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

