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2025.12.24
アジア経済
その他アジア経済
ベトナム共産党、ラム書記長留任に道筋、次期指導部候補を選定
~ラム体制の継続が規定路線、次期指導部における公安部と人民軍の主導権争いの行方は~
西濵 徹
- 要旨
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- ベトナム共産党は来年1月に第14回党大会の開催を予定している。2021年の前回大会では、グエン・フー・チョン氏が規約上限を超えて3期目入りした。ベトナム共産党は長らく、集団指導体制(四柱)の下で権力集中を防いできたが、チョン氏就任以降は反腐敗を軸に派閥争いが激化し、チョン氏を中心とする保守派は台頭してきた。しかし、2024年のチョン氏の病気療養と逝去を受けてトー・ラム氏が党書記長に就任し、公安部と人民軍の均衡を意識した人事を進めたことで、党大会に向けた指導部人事が注目されている。
- 党大会前の重要イベントである中央委員会総会では、党大会で選出される次期指導部候補の選定完了と高い支持が確認され、ラム体制の継続が既定路線となっている。ラム氏は分権化、行政改革、インフラ整備を重視し、6つの重点課題を提示した。また、最高指導部を「四柱」から「五柱」へ拡大する方針を示している。これにより、次期指導部での公安部と人民軍の主導権の行方や今後の国家運営への影響が注目される。
ベトナム共産党は、来年1月19~25日の日程で5年に一度の党大会(ベトナム共産党第14回全国代表者大会)の開催を予定している。2021年に開催された前回の党大会では、党規約で定められた上限(連続2期)を超える形で、グエン・フー・チョン氏が党トップである党中央執行委員会書記長(党書記長)として3期目入りを果たした。ベトナム共産党においては長年、最高指導部である党書記長、国家主席、首相、国会議長の『四柱』による集団指導体制を敷くことで、権力の集中を防ぐ仕組みを維持してきた。ただし、2011年にチョン氏が党書記長に就任して以降、党内では「反腐敗・反汚職」を旗印にした派閥争いが激化し、チョン氏を中心とする保守派が党中央で台頭する一方、急進派が放逐されてきた。チョン体制が異例の3期目入りを果たしたことで、派閥争いは一巡することが期待された。一方、党内では2023年から翌24年にかけて、中央政治局員に加え、四柱からも計7人が解任、ないし引責辞任に追い込まれる異常事態に見舞われた。こうしたなか、2024年5月に開幕した国会(第15期第7回国会)では、党内序列2位の国家主席にチョン氏の最側近のひとりで、公安部出身でチョン体制において反腐敗・反汚職の実働部隊を率いたトー・ラム氏が昇格した。この人事を巡っては、チョン氏が高齢、かつ健康不安が指摘されるなかで将来的な世代交代を見据えたものとみられた。しかし、2024年7月に党政治局はチョン氏が病気療養に専念することを公表し、ラム氏が書記長代行に就任した。そして、その後にチョン氏が逝去したことを受け、直後に開催された臨時の党中央委員会総会でラム氏は党書記長に選任されており、早期に指導部人事を固めることを重視した。そして、2024年10月にはラム氏の後任の国家主席に人民軍出身のルオン・クオン氏が昇格する異例の人事を発表し、ラム体制は公安部と人民軍のバランスを取る姿勢をみせた。したがって、党大会に向けては、ラム氏の党書記長留任のほか、最高指導部を含めた人事の行方に注目が集まった。
こうしたなか、共産党は12月22~23日の日程で党大会に向けた重要イベントである中央委員会総会(第13回中央委員会第15回全体会議)を開催した。総会後に党ホームページに掲載されたラム氏の演説によれば、党大会で選定される次期指導部の候補者の選定が完了したことを明らかにしたうえで、その候補者について「高い支持率で可決された」としている。なお、具体的な氏名などは明らかにしていないうえ、ラム氏は自身の留任について明言を避けたものの、代議員に対して謝意を伝える内容が示されており、ラム体制の継続が既定路線になっている模様である。その上で、ベトナムが直面する課題の突破に向けて、ラム体制下で推進されてきた、①分権化とその推進、科学技術、イノベーション、DX(デジタル・トランスフォーメーション)などを通じた新たな生産能力、生産モデル、ビジネスモデルの確立、②行政改革による人材育成を通じた組織の強化、③社会経済インフラの整備、の3分野の取り組みを一段と注力する考えを示した。そして、その実現に向けて、①清廉で強固、包括的な党体制の構築、②法制度や構造、政策の強化による経済成長の実現、③社会主義市場経済の深化による公的部門の効率向上、民間部門の発展、新たな成長モデルの確立による経済の再編、工業化と近代化の推進、④科学技術やイノベーション、DX推進による新たな生産力と生産基盤の構築、⑤人材開発と文化の開発、⑥国防、安全保障、外交関係の強化、という6つの重点課題を掲げた。また、最高指導部は4人(四柱)で構成されてきたものの、次期指導部においては、党内序列5位の党書記局常務を格上げする形で『五柱』とすることが示されている。当面は人民軍出身のクオン国家主席、ファン・バン・ザン国防相、そして、公安部出身で実務家として知られるファム・ミン・チン首相の去就が注目される。その意味では、ラム体制下では公安部と人民軍が拮抗しているが、最高指導部を奇数とすることにより、これらの間での主導権争いが激化することも予想されるとともに、その行方は国家の在り様にも影響を与えるであろう。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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