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2025.11.26
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ブラジル・ボルソナロ前大統領収監、対米関係の行方はどうなる?
~金融市場は活況を呈する展開が続くも、米国の「次の一手」を注視する必要性は高い~
西濵 徹
- 要旨
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ブラジル最高裁は9月、クーデター企図などの容疑でボルソナロ前大統領に禁錮27年3か月の有罪判決を下した。判事のうち1人が無罪意見を示したが、判決は維持され、弁護団の異議申し立ても却下された。
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公判中のボルソナロ氏は電子監視と外出・SNS禁止措置を受けていたが、違反行為が発覚して自宅軟禁となった。その後はボルソナロ氏の健康悪化もあり、弁護側は自宅軟禁継続を求めるべく主張していた。
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しかし、連邦警察は22日に逃亡の恐れを理由に身柄を拘束した。ボルソナロ氏は薬の影響を主張したが拘留は継続され、25日に判決が確定して収監開始が命じられ、大統領選出馬の可能性は完全に潰えた。
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トランプ米大統領は裁判を「魔女狩り」と批判し、関税引き上げや制裁を実施するなど介入姿勢を強めた。国内では右派が恩赦などを求める一方、左派はこうした動き強く反発して社会の分断が深刻化している。
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ルラ政権は物価高・高金利による支持率低下に直面したが、米国の介入への反発を背景に支持が回復している。金融市場は堅調な動きをみせているが、米国の追加措置次第で市場が混乱する可能性は残る。
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ブラジルでは、最高裁判所が9月、クーデターを計画した容疑などで起訴されたボルソナロ前大統領に禁固27年3ヶ月の有罪判決を下した(注1)。ブラジルでは、過去にコロル元大統領が収賄容疑で有罪判決を受けた例はあるものの、大統領経験者が民主主義への攻撃を理由に有罪判決を受けたのは同氏が初めてとなる。判決では5人の判事のうち4人が有罪としたものの、1人(フックス判事)はすべての罪状を無罪とした上で、裁判所の管轄権そのものに疑義を呈する反対意見を付した。なお、2人以上が反対した場合は判決の見直しを求める上訴を請求可能となるが、今回は1人であったため、判決の特定部分に関する説明の明確化や見直しを求める申し立てを行うことが可能である。こうしたなか、ボルソナロ氏の弁護団は10月末に刑期の長さなどに関する異議を申し立てたものの、最高裁は今月7日に申し立てを却下する判断を下した。
公判中のボルソナロ氏を巡っては、行動監視を目的に足首に電子装置が装着され、夜間や週末の外出が禁止されるとともに、SNSの利用を全面的に禁止されていた。しかし、家族のSNSを通じて自身の支持者に対するメッセージを送っていたことが明らかになったため、最高裁判所は今年8月に同氏に対して電子装置の装着に加えて自宅軟禁を命じた。これにより、同氏は弁護士や裁判所が許可した人物を除いて面接を受けるほか、直接ないし第三者を介して携帯電話を使用することが禁止された。その後も、連邦警察はボルソナロ氏が隣国アルゼンチンのミレイ大統領に政治亡命を要請する書簡を用意していたことを明らかにした上で、24時間体制による行動監視が行われた。有罪判決を受けた直後には、嘔吐やめまい、低血圧など体調不良を理由に病院に搬送され、検査で初期の皮膚がんが発見されたため、切除手術を受けた上で、その後は自宅軟禁による経過観察が行われた。こうしたことから、ボルソナロ氏の弁護団は健康状態を理由に、人道的な措置として自宅軟禁の継続を要請していた。
しかし、連邦警察は22日、ボルソナロ氏が足首に装着された電子装置を破壊して逃亡する恐れが出たことを理由に同氏の身柄を拘束した。ボルソナロ氏は、直後に行われた審問において、複数の医者から処方された薬による妄想と幻覚による行動であり、逃亡する意図はなかったと述べた模様であるが、連邦警察が関連法規に則る形で身柄が拘束されたとして、拘留が継続された。そして、最高裁は25日にボルソナロ氏に対する判決が確定したことを発表した上で、同氏の収監による刑の執行開始を命じた。ボルソナロ氏は来年10月に実施予定の次期大統領選に立候補する意向を度々示してきたが(なお、選挙法違反に伴い2030年まで公職に就くことは禁じられている)、収監開始によりそうした可能性は完全に潰えたと捉えられる。
ボルソナロ氏への裁判を巡っては、トランプ米大統領が自身のSNSで『魔女狩り』と批判するなど干渉する動きをみせるとともに、自由選挙や言論の自由への攻撃といった政治的理由を元にブラジルに対する相互関税を50%に引き上げた(注2)。さらに、米国は裁判を担当する最高裁判事に対するビザ(査証)発給を制限する制裁を科すなど、裁判に圧力を掛ける動きをみせてきた。また、政権与党は連邦議会の元老院(上院)、代議院(下院)双方で少数派に留まるなか、多数派を占める右派勢力は、連邦議会などへの襲撃事件に参加して収監されたボルソナロ氏の支持者への救済法案の迅速な審議を決定し、連邦議員の刑事訴追を阻止可能とする権限を連邦議会に付与する憲法改正案も可決している。そして、ボルソナロ氏の支持者などは、立法上の恩赦や将来の大統領による恩赦など、政治的手段を通じて同氏を支援する働きかけを強めている。その一方、政権を支持する左派勢力は、右派勢力による動きに対する反発を強めており、右派と左派による社会の分断が一層深刻化する動きもみられる(注3)。
次期大統領選に向けては、現職のルラ氏が再選を目指す意向を示す一方、物価高と金利高の共存長期化による景気低迷を理由に、年明け以降は政権に対する不支持率が急上昇するなど雲行きが怪しくなる事態に直面した。しかし、前述のようにトランプ米大統領がブラジルを標的にした動きを強めたことをきっかけに、その後は米国に対する反発の高まりが後押しする形でルラ氏に対する支持が集まる動きが確認されており、一転して優位に選挙戦を展開する可能性が高まっている。左派政権継続による財政運営への懸念はくすぶるものの、金融市場では実質金利(政策金利-インフレ率)が大幅プラスで推移するなど投資妙味の高さが通貨レアル相場を下支えするとともに、主要株式指数(ボベスパ指数)も最高値圏で推移するなど活況を呈している。とはいえ、現状は米国が今回の決定にどのような反応をみせるかは見通せず、仮に関税をはじめとする追加的な対応をみせれば市場に混乱が広がる可能性には注意が必要と考えられる。

注1 9月12日付レポート「ブラジル最高裁、ボルソナロ前大統領に有罪判決、米国との関係は?」
注2 7月10日付レポート「ブラジルが突如トランプ関税の「標的」に!?」
注3 9月22日付レポート「ブラジル、右派と左派で社会二分、地域情勢の行方にも影響」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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