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2025.11.21
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南ア準備銀、物価目標変更も、見通し改善を理由に再利下げに舵
~グレーリスト除外、S&Pグローバルの格上げなど投資環境改善の動きも利下げを後押しした模様~
西濵 徹
- 要旨
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- 南ア準備銀行(SARB)は20日の定例会合で政策金利を25bp引き下げ6.75%とした。インフレは足元でやや加速するも目標範囲内にあり、経済の安定を踏まえた判断とみられる。SARBは昨年から断続的に利下げを進めたが、インフレ再加速や目標変更を巡る政府との対立から前回は金利を据え置いた。
- 10月のインフレ率は+3.6%とSARBが目指す目標(3%)を上回るが、現行目標の範囲内であり、市場では政策判断に対する見方が分かれた。しかし、SARBは物価が来年に再び鈍化すると見込み、インフレ見通しの改善で緩和余地があるとして全会一致で利下げを決定した。また、新たなインフレ目標は政府との合意で3±1%となる見通しだが、SARBは3%とする目標を維持したいとの意向を示している。
- 利下げ再開の背景には、米ドル高が再燃するなかでも通貨ランドが比較的堅調に推移していることがある。さらに、FATFグレーリストからの除外、S&Pグローバルによる格上げなど投資環境改善の動きもみられる。当面のランド相場は対ドルでは上値が重い一方、円に対しては円安による堅調な推移が見込まれる。
南アフリカ準備銀行(SARB)は、20日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるレポ金利を25bp引き下げて6.75%とすることを決定した。南アのインフレ率は、一昨年半ば以降にSARBが定める目標(4.5±1.5%)の範囲内で推移している上、昨年以降は鈍化傾向を強めた。これを受けて、SARBは昨年9月にコロナ禍一巡後初の利下げに動き、その後は一時休止を挟みつつ断続的な利下げを実施するなど金融緩和を進めてきた。南ア経済を巡っては、過去2年にわたって経済成長率が1%に満たない水準に留まるなど、他の新興国と比較して見劣りする展開が続いている。さらに、トランプ米政権は南アに対して30%と高水準の相互関税を課しており、対米輸出を中心とする外需の下振れの動きが懸念される状況に直面している(注 )。こうした事情がSARBによる断続的な利下げ実施を後押ししてきた。しかし、インフレは足元では加速に転じる動きが確認されている。このため、SARBは9月の前回会合で3会合ぶりに金利を据え置き、過去の利下げの効果を見極めるべく様子見を図る姿勢をみせた。また、SARBは今年7月にインフレ目標を「3%」に引き下げる意向を示し、その後に現行スタンスの維持を主張する政府との対立が顕在化する動きがみられた。

こうした背景のなか、直近10月のインフレ率は前年比+3.6%とわずかに加速し、SARBが目指す目標(3%)は上回る一方、現行目標(4.5±1.5%)の域内で推移しており、金融市場においては政策判断に対する見方が分かれた。しかし、SARBは再利下げに動くとともに、全会一致で利下げを決定しており、金融市場が警戒したインフレ目標の変更によって利下げ観測が後退する可能性は低下したと捉えられる。さらに、会合後に公表した声明文では、足元の南ア経済について「昨年より安定しており、今年通年の経済成長率見通しを+1.3%にわずかに上方修正する」とし、「予測期間の成長率は+2%程度に達すると見込まれる」との見通しを示している。また、物価動向について「足元では食料インフレに伴い上振れしているが、来年初めから再び鈍化すると見込まれる」とした上で、「足元の物価動向はSARBの想定をわずかに下回っている」との見方を示した。その上で、インフレ見通しについて「新たなデータはないものの、市場見通しでは3%目標に向けた動きが示唆される」とし、今回の決定について「インフレ見通しの改善を踏まえて政策スタンスの緩和余地があるとの見方で一致した」としている。そして、新たなインフレ目標について「政府との合意で3±1%になる」としつつ、「SARBとしては3%を維持したい」との考えを示した上で「あくまで常に3%に一致させる訳ではなく、仮に外れればその原因を説明して目標に戻すために必要な対応を取る」との考えを示した。こうした姿勢は、SARBが一段の利下げに動く可能性を示唆していると考えられる。
なお、SARBが利下げを再開した背景には、金融市場においてFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測の後退が意識されて米ドル高の動きが再燃しているにもかかわらず、足元の通貨ランド相場が比較的堅調な推移をみせていることも影響している。年明け以降のランド相場を巡っては、国際的な金価格の上昇の動きも追い風に堅調な推移をみせてきたものの(注 )、先月半ばに最高値を付けた後は上値の重い動きをみせている。しかし、先月には、マネーロンダリング(資金洗浄)、テロ資金調達、拡散金融(核・化学・生物兵器などの大量破壊兵器の開発・保有・輸出などに関与し、資産凍結の対象となっている個人・組織への資金・金融サービスの提供)を監視する国際組織の金融活動作業部会(FATF)が南アを監視対象国(グレーリスト)から除外した。さらに、今月には主要格付機関のS&Pグローバルが、南アの外貨建長期信用格付を約20年ぶりに1ノッチ引き上げており(BBマイナス→BB)、景気や財政動向の改善、国営電力公社(Eskom)の業績改善に伴う偶発債務の減少をその理由に挙げているなど、投資環境の改善に繋がる動きがみられる。先行きのランド相場は、対ドルではドル高が意識される可能性があるものの、日本円に対しては円安基調を反映して堅調な動きをみせることが見込まれる。

注1 7月17日付レポート「南アにトランプ関税の影響直撃、ランド相場は堅調さを維持できる?」
注2 10月3日付レポート「南ア・ランドはなぜ金価格と連動する傾向があるのか?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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