インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

南ア・ランドはなぜ金価格と連動する傾向があるのか?

~金鉱株を含む主要株式指数の動向が影響か、金融市場の環境と実体経済の乖離が一段と広がる~

西濵 徹

要旨
  • このところの金融市場では、トランプ米政権の不確実性やFRBの利下げを背景にドル安が進行している上、リスク選好度の改善も相俟って新興国資産に対する需要が高まっている。さらに、ドル安が金価格を押し上げる動きもみられるなか、南アフリカの通貨ランド相場も堅調に推移する動きをみせている。

  • 南アフリカはかつて世界最大の金産出国であったものの、このところは産出量が年々減少しており、昨年は世界9位に留まる。それでも、依然として南ア・ランドは金価格との連動性が意識される展開が続いている。中銀は昨年以降断続的に利下げを実施したが、実質金利は依然高水準で投資対象としての魅力が維持されている。金鉱株を含む主要株式指数の上昇もランド相場を下支えする一因になっている模様である。

  • しかし、米国による高関税や追加関税の影響で南アフリカの実体経済には不透明感があり、金融市場との乖離が広がっている。今後のランド相場や主要株式指数の動向を巡っては、金融市場を取り巻く環境と実体経済に対する認識のどちらが優位になるかで左右されるとみられ、その行方を注視する必要がある。

このところの金融市場においては、トランプ米政権の政策運営に対する不確実性に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ実施も追い風にドル安が意識されやすい展開が続いている。さらに、金融市場におけるリスク選好度が改善していることも重なり、多くの新興国通貨の対ドル相場が上昇しているほか、新興国株も上昇するなど、新興国資産に対する需要が活発化する動きがみられる。さらに、世界的な分断の動きを反映した米ドル離れの動きもドル安を促しているほか、米ドル離れにより金に対する需要も高まっている。その結果、足元において金の国際価格は上昇の動きを強めるとともに、最高値圏で推移する展開をみせている。

図表1
図表1

こうしたなか、折からのドル安に加え、金の国際価格が上昇の動きを強めていることも追い風に、南アフリカの通貨ランド相場は堅調な動きをみせている。なお、南アフリカは2000年ごろまでは世界最大の金産出国であったため、金融市場においては金価格とランド相場の連動性が意識される展開が続いてきた経緯がある。ただし、その後は表層の鉱脈の枯渇に加え、生産コストの上昇、長年にわたる電力不足といった問題を理由に産出量は低下しており、昨年時点では世界で9位に留まった。同国における金の埋蔵量は依然として世界有数の水準にあるものの、上述した要因が生産拡大を困難にする展開が続いており、結果的に産出量が増えにくい状況にある。さらに、同国では一昨年半ば以降のインフレ率が中銀(SARB)の定める目標域で推移しており、昨年後半以降は鈍化したことを受けて、中銀は断続的な利下げを実施している。

しかし、中銀の利下げは漸進的な動きに留めており、実質金利(政策金利-インフレ率)は比較的高水準で推移し、足元においても4%程度と高止まりするなど、投資対象としての魅力が高い状況が続いている。こうした事情も、金融市場におけるリスク選好度の改善も追い風に、足元のランド相場を支える一因になっているとみられる。さらに、足元の主要株式指数(南アフリカトップ40指数)が上昇基調を強めていることもランド相場の上昇に影響している。同指数の構成銘柄には金鉱山をはじめとする鉱業企業が多数含まれており、金の国際価格の動向は業績に連動しやすい特徴がある。このところの金の国際価格が上昇基調を強めていることを受けて、主要株式指数も歩調を合わせる形で上昇しており、資金流入の動きがランド相場を下支えしている可能性がある。ただし、トランプ米政権は同国に対する相互関税を30%と高水準にしている上、足元では自動車や自動車部品などに対する追加関税の影響が顕在化する動きがみられるなど、実体経済には不透明さが増している。こうした状況にもかかわらず、金価格の上昇や実質金利のプラス幅など投資妙味の高さも追い風にランド相場は堅調さをみせており、実体経済と金融市場の乖離が広がっている様子がうかがえる。先行きのランド相場や主要株式指数の動きについては、金融市場を取り巻く環境が優位に立つか、実体経済に対する認識が優位に立つか、その動向に左右されることに要注意である。

図表3
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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