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2026.03.31
日本経済
物価
物価指標(日本)
消費者物価指数(東京都区部・2026年3月)
~補助金・原油高・円安が交錯。物価の先行き不透明感は極めて強い~
新家 義貴

ガソリン価格は上昇も、2ヵ月連続の2%割れ
本日総務省から発表された26年3月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比+1.7%と、前月の+1.8%から上昇率が若干縮小し、2ヵ月連続の+2%割れとなった(市場予想:+1.8%、筆者予想:+1.7%)。①原油価格高騰によってガソリン、灯油価格が大幅に上昇したことが押し上げ要因になった一方、②前年の高い伸びの裏により食料品価格の上昇率が鈍化していること、③エネルギーと食料を除く米国型コアでも鈍化がみられたことといったことが下押しとなり、CPIコア全体としてはやや鈍化する形となった。ガソリン、灯油で上振れがみられたが、それ以外は鈍化傾向が継続しており、3月時点でこれまでのトレンドに変化が生じているわけではない。
なお、①について、ガソリンが前月比+16.0%、灯油が前月比+7.6%とそれぞれ大幅に上昇し、前年比でもマイナス幅が縮小した(石油製品の前年比寄与度:2月▲0.10%Pt → 3月▲0.00%Pt)。一方、②の食料品(生鮮除く)は前年比+4.9%と、2月の+5.5%からはっきり鈍化している。前月比では上昇が続いているものの、昨年の伸びが非常に高かったことから前年比でみるとピークアウト感が鮮明である。また、エネルギー以外のコアコア部分については、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+2.3%(2月:+2.5%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)が前年比+1.4%(2月:+1.5%)と、それぞれ前月から上昇率が縮小。日銀版コアの鈍化が大きめだが、これは食料品鈍化の影響が大きい。米国型コアも若干の伸び縮小だが、これは前年比で+1%台半ばのレンジ内の動きとみてよいだろう。米国型コアは安定的な上昇が続いており、物価の基調に変化が生じている様子は少なくとも3月時点では窺えない。
一点注意したいのがガソリン、灯油価格。東京都区部では使用頻度の低さから石油製品のウェイトが小さく、今月の価格上昇がCPIコアに与えた影響はそれほど大きいわけではない。もっとも、ガソリン、灯油のウェイトは全国でみると都区部の3倍以上あり、影響もその分大きくなる。3月の東京都区部CPIコアは前月から上昇率が縮小したが、4月24日に公表される3月の全国CPIでは上昇率が拡大する可能性が高いだろう。
なお、ガソリン、灯油については政府による補助金支給が実施されている。3月のCPIでは調査日の関係で補助金支給が始まる前の価格であるため大幅に上昇したが、4月には補助金により価格は低下、前年比の寄与も再び縮小する見込みである。補助金が現在の形でいつまで続けられるかという問題は残るが、ガソリン、灯油価格主導で物価が大きく上振れていくという事態は当面回避される可能性が高い。
食料品価格のピークアウトが鮮明
電気・ガス代は前月から変化なし(電気・都市ガス代の前年比寄与度は▲0.40%Pt、2月から変わらず)。引き続き電気・ガス代補助により押し下げられている。補助自体は昨年も同時期に実施されたが、昨年対比で補助額が大きいため、前年比でも大きな下押しとなっている。ただし、補助の額は2月、3月で変わっておらず、押し下げ度合いに変化はない。なお、この補助は2月~4月請求分の期間限定であり、かつ4月には補助が縮小される。補助金による押し下げ寄与が4月にはっきり縮小することに注意しておきたい。
ガソリン価格は前年比▲1.0%(2月:▲14.7%)、灯油価格が+7.4%(2月:▲0.2%)となった。前月比ではガソリンが+16.0%、灯油が+7.6%とそれぞれ大幅に上昇している。原油価格高騰によりそれぞれ価格が大幅に切り上がっている。一方、政府が上限の目安を定める形での補助金支給を開始していることにより、今後ガソリン価格は170円/ℓ程度まで低下、灯油価格も下落する見込みである。価格高騰前の150円台後半と比べれば10円以上高いものの、ガソリン・灯油価格の急騰により物価が大きく押し上げられるといった事態は回避されそうだ。
食料品(生鮮除く)は前年比+4.9%(前年比寄与度:+1.21%Pt)と前月の+5.5%(同寄与度:+1.34%Pt)から鈍化した。引き続き非常に高い伸びだが、前年比でみればピークアウト感が鮮明となっている状況は変わらない。昨年の急上昇の裏が出たことで米類(前年比:2月+18.2%→3月+8.3%)が鈍化していることが目立つ。前年に積極的な値上げが実施されていたことの裏が出る関係で、この先も食料品価格は伸びが鈍化しやすい状況が続くだろう。
エネルギー以外のコアコア部分については、前述のとおり日銀版コア、米国型コアとも鈍化となった。日銀版コアは食料品価格鈍化によるところが大きい。米国型コアについてはこれまで通り前年比+1%台半ばでの安定的な推移が続いていると見て良いだろう。物価の基調に変化はみられない。
先行き不透明感は極めて強い
本日の東京都区部の結果を踏まえると、4月24日に公表される26年3月の全国CPIコアは前年比+1.8%程度が予想される。+2%割れは続くものの、ガソリン、灯油価格の大幅上昇が影響することで2月の+1.6%からは伸びが高まるだろう。前述のとおりガソリン、灯油の影響度合いは全国では都区部対比でかなり大きくなる。3月の東京都区部CPIコアは前月から上昇率が縮小したが、4月24日に公表される3月の全国CPIでは上昇率が拡大する可能性が高いとみられる。
その先の物価については不透明感が非常に強い。ガソリン・灯油価格については、政府が補助金支給により極端な価格上昇を抑制する方針を示しており、ガソリン・灯油主導で物価が大きく上振れるという事態は当面回避されそうだ。電気・ガス代についても、上昇するのはまだ先である上、政府が再び補助金投入・拡充で秋以降の価格上昇を抑える可能性もある。「原油価格高騰で4月以降はCPIコア+2%超え必至」との声も聞かれるが、補助金の効果を考えると必ずしもそうは言えない。
一方、エネルギー以外の価格については不透明感が強い。25年10月の値上げラッシュの後、11月以降は食品値上げに一服感が出ているが、足元の原油価格高騰と円安の進行は今後の値上げの格好の材料となり得る。かつてと異なり企業が値上げをためらわなくなっている現在、円安と資源高を言い訳として、食品以外でも値上げに踏み切る企業が増える可能性があるだろう。前述のとおり、前年の高い伸びの裏が出ることで、先行きの日銀版コアは鈍化しやすい状況にあるが、仮に円安・資源高を理由とした値上げが積極化した場合にはその限りではない。この場合、CPIが4月以降に再び+2%台に戻る展開も十分考えられるだろう。
原油高がどこまで進み、いつまで続くかが全く分からないこと、円安・資源高を理由にした値上げ(エネルギー以外)を企業がどの程度実施するかが読めないこと、政府の対応(ガソリン補助金が現在の形で続けられるか、電気・ガス代補助金を秋以降どうするか)によって大きく動くこと、など物価を巡る不透明感は非常に強い状況にある。先行きの動向を決め打ちせず、状況に応じて柔軟に見通しを変えていく必要があるだろう。

新家 義貴
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