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2025.09.16
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ロシア中銀は3会合連続利下げも、インフレ警戒で利下げ幅縮小
~ルーブル相場やガソリン不足がインフレを巡るリスクとなるなか、中銀と政府の軋轢が強まるか~
西濵 徹
- 要旨
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- ロシア中銀は12日の定例会合で政策金利を100bp引き下げ17.00%とした。6月から3会合連続の利下げとなった。しかし、利下げ幅は前回から縮小しており、インフレ期待の高止まりや労働市場の逼迫を背景にタカ派姿勢を示している。インフレ率は今年3月をピークに鈍化傾向を示しているが、依然として中銀目標を大幅に上回っている。為替市場ではドル安基調が続いているものの、ルーブルの対ドル相場は伸び悩んでおり、原油価格の頭打ちが影響している可能性がある。さらに、ガソリンの供給不足もインフレを巡るリスク要因となっている。足元の景気は減速感を強めるなか、プーチン政権は中銀に対する利下げ圧力を強める可能性も予想され、中銀にとっては難しい対応を迫られる局面が続くであろう。
ロシア中央銀行は、12日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を100bp引き下げて17.00%とすることを決定した。同行は、今年6月に約3年ぶりとなる利下げに動いたほか(注1)、その後、トランプ米政権がロシア産原油を輸入する国に「2次関税」を課す方針を示したことを受け(注2)、翌7月にも景気への悪影響を軽減すべく2会合連続の利下げを決定した。今回の利下げ決定は3会合連続となる。その一方、金融市場においては年明け以降のロシア景気が減速感を強めており、そうした事情が先月の米ロ首脳会談を後押しした可能性もあり(注3)、大幅利下げを見込む向きがみられたものの、利下げ幅は7月会合(200bp)から縮小した。

会合後に公表した声明文では、足元の経済状況について「物価指標を巡る状況は大きく変化していないが、バランスの取れた成長軌道に戻っている」との認識を示す一方、「ここ数ヶ月は貸し出しの伸びが加速しており、インフレ期待は依然として高い」との見方を示している。なお、一昨年半ばを境にインフレ率は加速の動きを強めるとともに、中銀目標(4%)から乖離する展開が続いてきたものの、直近においては今年3月をピークに鈍化に転じており、8月のインフレ率は前年同月比+8.14%、コアインフレ率も同+8.03%とともに約1年ぶりの伸びとなっている。こうした状況を受けて、中銀は6月から断続的な利下げに動いているものの、中銀は「インフレ期待はここ数ヶ月大きく変化しておらず、全体的に高止まりしている。インフレの持続的な落ち着きが阻害される可能性がある」との認識を示しており、こうした事情が今回の利下げ幅が縮小された背景にある可能性がある。インフレ期待が高止まりしている背景として、「労働市場の逼迫感は解消していない」とした上で、「賃金の上昇ペースは昨年に比べて鈍化しているが、依然として労働生産性の伸びを上回っている」との認識を示すなど、インフレ圧力が高まることを警戒している様子がうかがえる。そして、中期的な物価動向を巡っても「依然としてインフレの上振れリスクが下振れリスクを上回っている」と指摘しており、中銀は今回利下げ実施を決定したものの、タカ派姿勢を強めている可能性がある。

金融市場においてはトランプ米政権の政策運営に対する不透明感に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測の高まりを反映して、米ドル安が意識されやすい状況にある。年明け以降におけるルーブルの対ドル相場は、米ドル安の動きも追い風に上昇基調が続いており、輸入物価の抑制を通じてインフレ鈍化を促す一助になってきたとみられる。しかし、このところは米ドル安が意識されやすい状況にもかかわらず、ルーブルの対ドル相場は上値が抑えられる動きをみせており、この背景として、供給拡大が意識されるなかで国際原油価格が頭打ちの動きを強めていることが影響している可能性がある。事実、中銀はインフレを巡るリスクのひとつに「貿易戦争の激化や、それに伴う世界経済の成長下振れや原油価格の調整はルーブル相場の変動を通じてインフレ促進に繋がる可能性がある」と指摘するなど、ルーブル相場を警戒している様子がうかがえる。さらに、このところのロシアにおいては、ウクライナによる石油精製所への攻撃を受けたガソリンの供給不足を理由にガソリン価格が急上昇しており、ロシア政府は先月末までとしたガソリンの輸出禁止措置を1ヶ月延長するなど、国内供給の確保を優先せざるを得ない事態に直面している。上述したようにロシア景気は減速感を強めており、プーチン政権から中銀に対して利下げ実施を求める『圧力』が強まることが予想されるなか、今後の中銀は難しい対応を迫られる局面が続くであろう。

注1 6月9日付レポート「ロシア中銀、政治圧力否定も約3年ぶりに利下げ、ルーブル相場は?」
注2 7月25日付レポート「トランプ政権が示す2次関税はロシアにどう影響するか?」
注3 8月14日付レポート「米ロ首脳会談、プーチン氏の背中を押したのは経済か?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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