インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

トルコ中銀は2会合連続の利下げ決定も、利下げ幅はやや縮小

~追加利下げに含みも、再利上げも排除せず。政治的不安による「トルコ売り」はリラ相場の重石に~

西濵 徹

要旨
  • トルコ中銀は、11日の定例会合で政策金利を250bp引き下げ40.50%とした。同行はインフレ鈍化を理由に昨年末から断続的な利下げに動いたが、3月末以降の政治不安を理由とするリラ急落を受けて一時利上げを余儀なくされた。今回は2会合連続の利下げとなるが、利下げ幅を縮小して緩和ペースを抑えた。
  • 声明では、足元のインフレ鈍化や需要の弱さを指摘しつつ、食料品やサービス物価の上昇圧力、世界情勢などによるリスクに言及している。先行きについては、追加利下げの可能性を残す一方、インフレ見通しが目標から大きく乖離すれば再利上げも辞さない姿勢を示しており、難しい対応を迫られているとみられる。
  • 一方、リラはドル安が意識される環境下においても下落基調が続き、足元では政治的混乱による「トルコ売り」の動きも加わり、金融市場は不安定な状況が続く。足元のインフレは鈍化するも、農林漁業の生産低迷や山火事の影響など不透明要因が山積するなか、中銀には一層慎重な政策運営が求められるであろう。

トルコ中央銀行は、11日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である1週間物レポ金利を250bp引き下げ40.50%とする決定を行った。トルコでは、昨年半ばを境にインフレが鈍化しており、中銀は昨年12月に現行の経済チームの下で初めての利下げに動いた。中銀は、その後も今年3月まで3会合連続の利下げを実施するなど金融緩和に動いた。しかし、3月末にエルドアン大統領の最大の政敵と目される最大都市イスタンブール市長のイマモール氏が突如逮捕されたことを機に、金融市場ではリラ相場は急落した。したがって、中銀は4月の定例会合でリラ相場の防衛を目的とする利上げを余儀なくされた。ただし、利上げ幅は350bpと昨年末以降における累計の利下げ幅(750bp)の半分以下に留めたため、金融市場では中銀がリラ安を容認しているとの見方が広がり、その後もリラ相場はジリ安の展開が続いた。リラ安による物価への悪影響が懸念されたものの、その後もインフレは鈍化したため、中銀は7月の前回会合で利下げを再開させた(注1)。今回の利下げは2会合連続となるものの、利下げ幅を7月会合(300bp)から縮小させるなど緩和ペースを減速させた。

なお、このところの金融市場においては、トランプ米政権の政策運営に対する不透明感に加え、FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ観測の高まりを反映して米ドル安が意識される地合いが続いている。こうした環境ながら、リラの対ドル相場は引き続きジリ安の動きをみせており、足元においては3月末に一時的に付けた安値を下回るなど最安値を更新する展開が続いている。しかし、足元のインフレは国際原油価格をはじめとする商品市況の低迷も追い風に鈍化しており、3年ぶりの低い伸びとなっている。なお、インフレ鈍化や中銀による断続的な利下げ実施も追い風に、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+6.63%と加速している。しかし、統計上は高い成長率となっているものの、実際の景気動向は統計上の数字ほど好調ではないと捉えられる(注2)。さらに、足元では食料品など生活必需品を中心にインフレ圧力が強まる動きがみられるなか、農林漁業関連の生産は2四半期連続で減少している上、トルコを含む地中海沿岸諸国では7月以降に熱波による猛暑をきっかけにした山火事が頻発しており、農林漁業関連の生産に悪影響を与えることが懸念される。このように先行きの物価に不透明感がくすぶるものの、中銀は足元のインフレ鈍化を好感して追加利下げに舵を切った格好である。

図表
図表

図表
図表

なお、会合後に公表した声明文では、物価動向について「基調的なインフレは鈍化している」ほか、「内需は依然として弱く、需要動向はディスインフレを促す水準に留まる」の見方を示している。ただし、「食料品やサービス物価に上昇圧力が掛かっている」ほか、「インフレ期待や企業の価格決定行動、世界情勢がディスインフレプロセスのリスク要因になっている」との見方を示している。その上で、先行きの政策運営について「需要動向や為替レート、期待を通じて、物価安定を実現するまで引き締めスタンスを維持する」との考えを示した上で、その決定については「インフレ見通しと実績と基調的な動きを勘案して決定する」、「会合ごとにインフレ見通しを注視しつつ慎重に見直す」と追加利下げに含みを持たせている。ただし、「インフレ見通しが目標から大きく乖離した場合は引き締め姿勢を強める」として、利下げの休止や再利上げにも含みを持たせた格好である。また、「信用市場や預金市場で予期せぬ事態が発生した場合は、流動性を巡る状況を注視しつつ、マクロプルーデンス政策を強化する」としつつ、「インフレ目標の実現に向けて、予見可能なデータに基づく透明性の高い枠組みの下で必要な環境醸成を図るべく政策決定を行う」としている。足元の実質金利(政策金利-インフレ率)は高水準で推移するなど、市場環境は引き締まった状況にある。しかし、今月2日にはイスタンブールの裁判所が最大野党CHP(共和人民党)の指導部の解任を命令する判断を下すなど、エルドアン大統領による野党に対する締め付けの動きを司法が補佐する『司法クーデター』とも形容される動きが顕在化している。直後には、通貨リラ、主要株式指数、国債のすべてに売り圧力が掛かる『トルコ売り』の動きがみられ、先行きも政治的要因による売り圧力が強まる可能性はくすぶる。よって、今後の中銀にはこれまで以上に慎重な政策運営が要求される局面が続くことになろう。

図表
図表

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ