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2025.09.02
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トルコ・4-6月GDPは伸び加速も内容悪化、リラ相場にも光みえず
~足元の景気拡大は在庫の積み上がりで説明可能、景気、物価双方に不透明要因が山積~
西濵 徹
- 要旨
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トランプ米政権は、ウクライナ戦争の早期終結を目的に、ロシア産原油の輸入国に2次関税を課す方針を示し、先月末にインドに対して高関税を課した。一方、中国への発動は見送っているが、今後の行方は不透明である。トルコ経済へのトランプ関税による直接的な影響は限定的とみられるが、トルコもロシアからの輸入を拡大させており、2次関税が課されるリスクは残るなど、その動向を注視する必要性は高い。
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トルコ景気を巡っては、インフレ鈍化や昨年末以降の中銀の断続的な利下げが追い風になることが期待される。4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+6.63%と伸びが加速するなど一見底入れしている。しかし、個人消費や輸出は低迷しており、景気拡大の動きの多くが在庫の積み上がりによって説明可能であるなど、景気実態は極めて厳しい。サービス業や建設業は堅調な動きをみせる一方、製造業の増産は在庫の積み上がりを招いている可能性がある。農林漁業の生産低迷は物価上昇圧力を招く可能性もある。
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足元の金融市場では、米ドル安圧力が掛かる動きがみられるものの、リラの対ドル相場は最安値を更新する展開が続く。よって、先行きは金融政策の対応が困難になることが予想される。在庫調整圧力や欧州の景気低迷など景気の不透明要因も重なり、トルコ経済は一見回復しているものの、実態は極めて厳しく先行き不透明感が強い。こうしたことから、リラ相場の先行きも見通しが立ちにくい展開が続くことは避けられない。
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このところの世界経済や金融市場は、トランプ米政権の関税政策に翻弄されている。米国は、安全保障上の脅威への対応や貿易赤字の是正に向けて関税政策を用いるとともに、相手国との協議による『ディール(取引)』を通じて米国に有利な環境の構築を図っている。さらに、トランプ氏は7月、ウクライナ戦争の早期終結を目的に、ロシア産原油を輸入する国に対して追加関税(2次関税)を課す方針を明らかにした。そして、先月末にはウクライナ戦争以降にロシア産原油の輸入を急拡大させるインドに対し、相互関税(25%)に加えて25%の2次関税を上乗せして、合わせて50%の高関税を課す措置を発動した(注1)。これは、ウクライナ戦争をきっかけに欧米などはロシアに対する経済制裁を強化する一方、中国やインドなど一部の新興国はロシアからの輸入を拡大させており、結果的にロシアの継戦能力を下支えしたためとみられる。なお、上述のようにトランプ氏はインドに2次関税を課す一方、インドと同様にロシアから原油や天然ガスなどの輸入を拡大させる中国に対する発動を見送っているものの、現時点においては予断を許さない状況にある。なお、米国はトルコに対する相互関税を10%と一律分と同水準としている上、対米輸出額も名目GDP比で1%、輸出全体に占める対米比率も6%程度に留まるため、マクロ面でみた直接的な影響は限定的と見込まれる。しかし、トルコも中国やインドほどではないものの、ウクライナ戦争以降にロシアからの輸入を急拡大させるとともに、足元でも依然高水準で推移している。よって、金融市場などではこの件についてトルコにスポットライトが当たる向きはみられないものの、トランプ氏がトルコに対して2次関税を課すリスクは残っている。

その一方、トルコ経済を巡っては、個人消費をはじめとする内需が成長のけん引役となってきたなか、昨年半ばを境にインフレは鈍化していることを受けて、中銀は昨年末以降に3会合連続で断続的に利下げを実施するなど、景気を押し上げることが期待された。しかし、今年3月末に最大都市イスタンブールのイマモール市長が逮捕されたことをきっかけとする政治不信の再燃を受けた通貨リラ安を理由に、中銀は4月に一転リラ防衛を理由とする利上げに追い込まれた。なお、その後のリラ相場は過去最安値を更新する展開が続いているものの、インフレは一段と鈍化しており、中銀は7月に再利下げに動くとともに、先行きも漸進的な利下げを志向する考えをみせている。4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+6.63%と前期(同+3.03%)から拡大ペースが加速しており、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+4.8%と前期(同+2.3%)から加速して5四半期ぶりの高い伸びとなるなど、足元の景気は底入れの動きを強めている。ただし、インフレ鈍化や中銀による断続的な利下げにもかかわらず、個人消費は減少基調が続いている。さらに、前期はトランプ関税の発動を前にした駆け込みの動きを反映して輸出が大きく上振れしたものの、その反動に加え、輸出の半分以上を占めるEU(欧州)景気の低迷も重なり輸出は大幅に減少している。よって、足元の景気は大きく底入れしているものの、その大部分を在庫の積み上がりや不突合によって説明できる状況にあるなど、景気の実態は数字と大きく乖離していると捉えられる。


さらに、分野ごとの生産動向を巡っても、上述したように個人消費は力強さを欠く推移をみせているものの、幅広くサービス業の生産が拡大する動きがみられる上、ロシアなどからの資金逃避を追い風とする不動産需要の活発化を反映して建設業の生産も拡大基調が続いている。ただし、個人消費のみならず、輸出にも下押し圧力が掛かっているにもかかわらず、製造業の生産は大幅に上振れしており、この動きは在庫の積み上がりに繋がっている可能性がある。一方、農林漁業関連の生産は2四半期連続で減少しており、供給懸念が食料品など生活必需品を中心とするインフレを招くことが懸念される。トルコを含む地中海沿岸各国においては、今年も7月以降に熱波による猛暑をきっかけにした山火事が頻発しており、農林漁業関連の生産に悪影響を与える懸念が高まっている。仮にその影響が長期化する事態となれば、食料インフレへの懸念が高まることが予想されるなど、鈍化傾向が続いたインフレの動きが変化することも考えられる。また、金融市場においてはトランプ米政権の政策運営に対する不透明感を理由に米ドル安圧力が強まる動きがみられるにもかかわらず、リラの対ドル相場は最安値を更新する展開が続くなど、輸入インフレ圧力が高まりやすい状況にある。上述したように、中銀はインフレ鈍化を好感して7月の定例会合で再び利下げに動いたものの、先行きについては物価を巡る状況に不透明感が高まることでさらなる利下げのハードルが高まると考えられる。その一方、先行きは在庫調整圧力が強まることが景気の足かせとなると見込まれるとともに、欧州景気を巡る不透明感が外需の足かせとなるなど、景気の行方にも不透明要因が山積している。こうした状況を勘案すれば、足元のトルコ景気は一見底入れしている様子がうかがえるものの、その内容は極めて厳しいことに加え、先行きに景気の足を引っ張る要因が多いことに加え、物価の行方も見通しにくい状況にある。リラ相場の行方も見通しが立ちにくい展開が続くことは避けられそうにない。

注1 8月27日付レポート「米国、インドへの追加関税発動、トランプ関税はブラジルと同じ50%へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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