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2025.05.27
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ロシア中銀に再び独立性の懸念、ルーブル相場はどうなる?
~停戦を巡る思惑がルーブル相場を押し上げるも、中銀を巡る懸念に原油安など不安要因はくすぶる~
西濵 徹
- 要旨
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- 米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感が国際金融市場を翻弄するなか、ロシアのルーブルは年初来で対ドルで大幅に上昇している。背景には、米ドル安に加え、ウクライナ戦争の停戦への期待が影響している。一方、ロシア経済は戦争長期化や欧米などの制裁にもかかわらず堅調さが続いており、軍需産業の拡大や新興国向け輸出の拡大が景気を下支えしている。労働力不足に伴う賃上げに加え、政府もバラ撒き政策を通じて個人消費を下支えする一方、これはインフレを加速させており、中銀は利上げを余儀なくされた。足元ではルーブル高も追い風にインフレに頭打ちの兆しが出るなか、中銀に利下げを求める圧力が強まるなど、独立性への懸念が再び高まりつつある。財政赤字や原油価格の低迷も政府の焦りを招いているとみられるなか、金融市場には過度な期待への修正が迫られる可能性に留意する必要がある。
このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策の行方に翻弄される展開が続いている。こうしたなか、ロシアの通貨ルーブルの対ドル相場は底入れの動きを強めており、年明け以降4割以上上昇している。ルーブル高が進んでいる一因には、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感を理由に国際金融市場で『米国売り』とも呼べる動きが広がり、米ドル安が進んでいることがある。また、米トランプ政権の仲介でウクライナ戦争の停戦協議が進むとの期待もルーブル高を後押ししている。今月16日にはロシアとウクライナによる3年ぶりの直接交渉が行われ、過去最大規模の捕虜交換のほか、協議継続で合意するも、依然として停戦の見通しが立たない状況にある。その後もロシアのプーチン大統領は即時停戦に応じない姿勢をみせたため、英国とEU(欧州連合)はロシアに対する追加制裁を発表している。一方、米トランプ政権はロシアへの追加制裁に慎重姿勢をみせたものの、プーチン氏との関係悪化を理由に一転して検討に舵を切る姿勢をみせており、ルーブル相場を取り巻く環境が一変する可能性は高まっている。

ロシアの昨年の経済成長率は+4.3%と前年(+4.1%)を上回る伸びとなるなど、ウクライナ戦争が長期化するとともに、欧米などの経済制裁にもかかわらず、足元の景気は堅調に推移している。ウクライナ戦争をきっかけに欧米などはロシアに対する経済制裁を強化するも、その一方で中国やインドなどいわゆる『グローバルサウス』と称される新興国は割安なロシア産原油などの輸入を拡大させており、結果的にこうした動きがロシア景気を下支えしている。さらに、戦争長期化を受けて、ロシア国内では軍備増強の観点から軍需関連産業のフル稼働状態が続くなど生産活動が活発化しており、関連産業がGDPの1割弱となるなど存在感を高めている。一方、戦争長期化による労働力不足に伴う賃金上昇に加え、政府は国民の間に不満が高まる事態を抑えるべく、年金給付の拡充のほか、子育て世代や公務員への現金給付などバラ撒き政策に動いており、これらも追い風に個人消費は下支えされている。しかし、賃金上昇やバラ撒き政策による個人消費の押し上げを背景にインフレは加速したため、中銀は戦時中にもかかわらず昨年に3会合連続の利上げに動く難しい対応を迫られた。その後はプーチン大統領が中銀に政策運営を巡る『バランス』を要求する発言を行うなど、暗に圧力を掛ける動きをみせたことを受け、中銀は追加利上げに慎重にならざるを得ないなど、その独立性が危ぶまれる状況に直面している。なお、足元ではルーブル相場が底入れの動きを強めるなか、輸入物価の安定も追い風にインフレも頭打ちに転じるなど、高止まりしたインフレに変化の兆しが出ている。

こうしたなか、プーチン政権内部では中銀に対して早くも利下げを要求する動きが顕在化している。26日には、レシェトニコフ経済相は同国経済が「低体温リスクに直面している」とした上で、足元のインフレ頭打ちの動きを金融政策の判断における考慮に入れるべきと述べるなど、暗に利下げを求める動きをみせている。なお、同氏の発言を巡っては、今年3月の定例会合の直前にプーチン大統領が経済閣僚に対して「金融引き締めによってロシア経済を『全身冷却療法』のように凍結させるべきでない」と述べ、中銀にけん制を加えた発言に準えたものと捉えられる(注1)。足元のインフレに鈍化の兆しが出るなか、今後もプーチン氏やその周辺から中銀に利下げを求める圧力が強まる可能性は高まると判断できる。なお、こうした動きの背景には、ウクライナ戦争の長期化に伴う巨額歳出もインフレを招く一方、足元では世界経済の減速懸念にもかかわらず、主要産油国の枠組みであるOPECプラスが大幅増産に動いており、国際原油価格が頭打ちしていることがある。ロシアは歳入の大宗を原油関連収入に依存しており、足元では財政赤字が拡大傾向を強めるなど財政運営への懸念が高まっている。こうした事情もプーチン政権内の『焦り』に繋がっている可能性がある一方、ウクライナ戦争の行方も見通せない状況が続いており、金融市場が抱く過度な期待に見直しが迫られることも考えられる。

注1 3月24日付レポート「ロシア中銀、プーチン氏の「クギ」を受けて3会合連続で金利据え置き」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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