FRBはリスクの高まりも利下げを急がない姿勢 (25年5月6、7日FOMC)

~FRBは3会合連続で政策金利を据え置き~

桂畑 誠治

目次

FRBは政策金利を据え置き、4.25~4.50%に維持することを決定

25年5月6、7日に開催されたFOMCで、FRBは政策金利を予想通り3会合連続で据え置き、FFレート誘導目標レンジを4.25~4.50%に維持することを全会一致で決定した。パウエルFRB議長は、記者会見でFOMCのメンバー全員が状況を見守ることを支持したと説明した。また、バランスシートの縮小策の継続を決定した。

現在のファンダメンタルズについて、FOMC声明文で、経済、労働市場が堅調さを維持し、インフレは低下したが依然FRBの目標を上回っているとの判断が維持された。パウエルFRB議長は「不確実性が高まっているにもかかわらず、経済は依然として堅調である他、失業率は低水準を維持するなど労働市場は最大雇用、あるいはそれに近い水準にある」と経済・労働市場が良好であることを強調した。インフレについて、「インフレ率は大幅に低下したが、我々の長期目標である2%をやや上回っている」との見方を維持した。また、ソフトデータ悪化の影響について、パウエル議長は「家計と企業を対象とした調査では、主に貿易政策への懸念を反映して、センチメントの急激な低下と経済見通しに関する不確実性の高まりが報告されているが、これらの動向が将来の支出と投資にどのように影響するかはまだ不透明」とハードデータに依然影響がみられない他、両者の関係が弱い可能性を指摘しつつ、まだ不透明との見方を維持した。

先行きに関して、声明文では、経済見通しに対する不確実性が一段と高まり、失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断していることが示された。パウエル議長は、これまでに発表された予想を大幅に上回る規模の関税引き上げが継続されれば、インフレの上昇、経済成長の減速、失業の増加を招く可能性が高いとの見方を示したが、トランプ2.0での貿易、移民、財政、規制に関する政策変更はすべて現在も進行中であり、経済への影響は依然として極めて不透明であるとの認識を強調した。

特に、インフレへの影響について、パウエル議長は「物価水準の一時的な変動を反映し短期的なものにとどまる可能性がある一方、インフレ効果がより持続的なものとなる可能性があり、これを回避できるか否かは、関税の影響の大きさと影響が完全に価格に転嫁されるまでにどれだけ時間がかかるか、最終的には長期的なインフレ期待をしっかりと維持できるか否かにかかっている」との認識を示したうえで、FRBは、長期的なインフレ期待を低い水準に維持し、一時的な物価上昇を継続的なインフレ問題にしないと強調した。

金融政策運営についてパウエル議長は「失業率とインフレ率の上昇リスクは高まっているが、現在の金融政策スタンスは、状況がより明確になるのを待つことができる好位置にあり、潜在的な経済情勢にタイムリーに対応できる」と説明し、「経済情勢をさらに見極めるまで様子見することの代償はかなり小さい」との判断を示した。そのうえで、「政策金利の調整を急ぐ必要性はなく、忍耐強い姿勢が適切」と早期の利下げに慎重な姿勢を強調した。

声明文での景気、雇用、インフレ判断は変更なし

FOMC声明文で、景気、雇用、インフレに対する判断は変更されなかった。景気判断は、今回「純輸出の変動がデータに影響を及ぼしているものの、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している」と前回の「経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している」とトランプ関税を受けた輸入の急増の影響で1-3月期がマイナス成長となったものの、経済は堅調との見方が維持された。

雇用情勢について声明文では、前回同様「失業率はここ数カ月低水準で安定しており、労働市場は引き続き堅調」とされ、パウエル議長も「労働市場の状況は、引き続き堅調」と評価したうえで、労働市場は大幅なインフレを引き起こす要因ではないとの見方を維持した。

インフレについて声明文では、前回同様「インフレ率は依然としてやや高い水準」との判断を維持した。また、パウエル議長もインフレ率は大幅に緩和したが、FRBの長期目標の2%と比較するとやや高い水準にあるとの見方を維持した。

FRB不確実性が一段と高まり、失業増とインフレ加速のリスクが高まったと判断

リスクについて声明文で、今回「経済見通しに対する不確実性が一段と高まっている」と前回「経済見通しに対する不確実性が高まっている」から、経済見通しの不確実性がさらに高まったことが強調された。

そのうえで、今回「委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」と前回「委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」から、失業増加とインフレ加速の両方のリスクが高まったとの判断が示された。

FRBは追加利下げに関して、より慎重に決定する方針を維持

FRBの金融政策スタンスを示すFOMC声明文は、前回同様「FF金利の目標レンジの追加調整の幅とタイミングを検討する際、委員会は今後のデータ、今後の見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」と、追加利下げの判断を慎重に行う姿勢を維持した。また、パウエル議長は「経済状況の変化に伴い、今後得られるデータ、見通し、そしてリスクバランスに基づき、適切な金融政策スタンスを継続的に判断していく」と、実際のデータをみて判断する方針を示した。

バランスシート縮小策を継続

バランスシートの縮小策では、25年4月1日から保有証券の圧縮を月間上限額300億ドル(600億ドル)に半減したが、このペースを維持することが決定された。内訳は、米国債の上限額を50億ドル(250億ドル)に減額する一方、エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の上限額は350億ドルに維持したうえ、これを上回る額を国債に再投資する。

図表
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FF先物市場は6月据え置きの見方をさらに強め、7月利下げの可能性も若干低下  

金融市場では、声明文で不確実性が一段と高まったことを指摘したことで、金利が低下し、ドルが主要通貨に対して弱含んだ。また、株価は下落した。声明文で、経済、労働市場の判断が維持された他、パウエル議長が経済、労働市場の堅調さを強調したことを好感し、金利が上昇し、ドルが主要通貨に対して強含んだ。株価は経済への悲観的な見方の弱まりや、半導体の輸出規制強化の一部撤回を背景に水準を切り上げた。

FF金利先物市場では、FRBの利下げに慎重な姿勢を受け、25年6月FOMCでの据え置きの可能性が約80%(前日約69%)に上昇し、25bpの利下げの可能性が約20%(前日約31%)に低下した。7月FOMCでの据え置きの可能性が約29%(前日約22%)に上昇し、利下げの可能性が約61%(前日約68%)に低下した。また、25年末では、3.61%と前日の3.51%から上昇した。

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【参考】ドットチャートの25年の利下げ回数は2回だったが、大幅緩和が減少し据え置きが増加

同時に公表されたFOMC参加者の経済・金利予測中央値(25年3月)では、米経済成長率が下方シフトした一方、インフレ率、失業率が上方シフトした。これらの予測に関して、FOMC参加者は、成長率の下振れリスク、インフレ率や失業率の上昇リスクの他、これらの不確実性が大幅に高まったとの見方を示した。パウエル議長は、「こうした予測は常に不確実性にさらされているが、現在、不確実性は異常に高まっている」と指摘した。

ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、25年末3.875%(前回12月3.875%)、26年3.375%(同3.375%)、27年2.875%(同2.875%)と変化しなかった。利下げ回数は、25bpを1回とすれば、25年2回(同2回)、26年2回(同2回)、27年1回(同1回)となっており、利下げペースは変化しなかった。また、FOMC参加者が中立金利と推測する長期は、3.000%(同3.000%)と変わらなかった。

ただし、詳細にみると、25年に少なくとも2回の追加利下げを予想したFOMC参加者は、19人中11人と前回12月の15人から減少した。また、25年の適切な利下げ回数は、5回がゼロ(前回1人)、4回がゼロ(前回1人)、3回が2人(前回3人)、2回が9人(同10人)に減少した。一方、1回が4人(同3人)、据え置きが4人(前回1人)に増加しており、FOMC全体では若干タカ派的になったことが示唆される。

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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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