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2025.03.07
アジア経済
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トルコ中銀、3回連続の利下げも漸進姿勢、リラ相場の行方は?
~米ドル相場の動向に揺さぶられる展開は変わらず、日本円に対しては当面下値を探りやすい展開も~
西濵 徹
- 要旨
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- トルコ中銀は6日の定例会合で3会合連続の利下げを実施して42.5%とする決定を行った。ここ数年のトルコでは、インフレにも拘らず中銀は低金利を迫られてリラ安とインフレを招く状況が続いた。しかし、一昨年以降の中銀は大幅利上げに動くとともに、政府も緊縮財政に舵を切り、インフレは昨年後半以降頭打ちの動きを強めた。さらに、インフレ鈍化を受けて実質金利がプラスに転じたため、中銀は昨年12月に利下げに動くとともに、その後もインフレ鈍化が確認されたことを受けて1月も追加利下げに動いた。
- 中銀は1月会合で先行きの利下げ幅を実質金利が「やや引き締まっている」状況にすべく決定する考えを示したが、その後は米ドル高再燃を受けてリラ安が進むなど中銀は難しい対応を迫られた。しかし、インフレ鈍化が確認されたことが今回の利下げを後押ししたとみられる。中銀は今後も実質金利の動向をみつつ利下げ幅を決定する対応を続けることが予想される。他方、実体経済は一進一退の展開が見込まれるなか、リラは米ドル相場の動向に揺さぶられ、当面は円に対して下値を探りやすい展開に留意する必要がある。
トルコ中央銀行は、6日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である1週間物レポ金利を250bp引き下げて42.50%とする決定を行った。同行による利下げ実施は3会合連続となる上、累計の利下げ幅も750bpとなるなど緩和姿勢を強めている様子がうかがえる。
なお、ここ数年の同国ではインフレが常態化しているにも拘らず、『金利の敵』を自認するエルドアン大統領が主張する「高金利がインフレを招く」という因果が倒錯した主張に推される形で中銀は低金利政策を余儀なくされた。結果、通貨リラへの信任が低下して相場は調整するとともに、輸入物価に押し上げ圧力が掛かるとともに、実質金利の低下も相俟ってインフレが一段と高進する展開が続いてきた。しかし、一昨年の選挙でエルドアン氏や与党AKP(公正発展党)は苦戦を強いられた結果、その後の内閣改造で経済チームを『正統的な』政策を志向する陣容で固めたほか、中銀は物価と為替の安定を目的に累計4100bpの利上げに動き、政策も緊縮財政に舵を切るなど物価抑制に本腰を入れた。

なお、昨年は前年にインフレが一旦頭打ちした反動で再び加速に転じたほか、金融市場での米ドル高によるリラ安もインフレを高進させたものの、中銀の引き締めによる需要抑制効果も重なり年後半以降のインフレは頭打ちの動きを強めた。昨年半ばの景気が2四半期連続のマイナス成長となる景気後退局面入りしたこともインフレ鈍化を促す一方、10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+6.92%と3四半期ぶりのプラス成長となり、インフレ鈍化に伴う実質購買力の押し上げが個人消費を促す動きが確認されている(注1)。こうした状況に加え、1月から最低賃金が30%引き上げられたことの影響が懸念されたものの、直近2月のインフレ率は前年比+39.1%と20ヶ月ぶりの低水準となっている(図1)。
この結果、中銀は昨年12月以降に断続的な利下げに舵を切っているものの、中銀は利下げ幅をインフレ鈍化のペースに比べて小幅に留めており、昨年後半に実質金利(政策金利-インフレ)はプラスに転じるとともに、足下ではプラス幅を拡大させるなど金融政策は『引き締まった』状態が続いている。なお、中銀は1月の前回会合において、先行きの政策運営について実質金利のプラス幅の調整を通じて『やや引き締まっている』環境を醸成するために必要となる利下げ幅を決定する旨の方向性を示していた(注2)。上述のように2月のインフレが一段と鈍化していることを受けて、2月時点における実質金利は5年半強ぶりの高水準となっていると試算されるなど、引き締まり『過ぎる』可能性が懸念される状況に直面している(図2)。

その一方、昨年末以降の金融市場においては、米トランプ政権の通商政策が米FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営に影響を与えるとの見方に加え、世界経済の混乱を招くとの警戒感も重なる形で米ドル高が進んでいるおり、中銀が断続利下げに動いていることも重なりリラ相場は調整の動きを強めるなど物価に悪影響を与える懸念が高まった。こうした事態を受けて、中銀のカラハン総裁は先月初めに先行きの政策運営を巡って利下げ休止の可能性に言及するなど難しい対応を迫られた。とはいえ、その後はトランプ氏の発言などに揺さぶられる形で米ドル高の動きに一服感が出ていることに加え、インフレが一段と鈍化する動きが確認されたことも利下げ実施を後押ししたと捉えられる(図3)。

なお、会合後に公表した声明文では、足下の物価動向について「インフレ期待と価格設定行動は改善傾向にあるが、ディスインフレプロセスへのリスクは引き続き存在する」との認識を示している。その上で、政策運営について「断固とした引き締め姿勢が内需鈍化、リラ相場の実質的な上昇、インフレ期待の改善を通じてディスインフレプロセスを強化している」、「今後は緊縮財政もこのプロセスを後押しする」と前回会合と同じ見方を示しつつ、「引き締め姿勢をインフレの持続的低下により物価安定が実現するまで維持する」との考えをあらためて示している。そして、金利水準についても「インフレ動向とインフレ予想を考慮した上で、想定されるディスインフレプロセスに必要となる引き締め度合いを確保すべく決定する」、「会合ごとに慎重に決定し、大幅、かつ持続的な悪化が予想される場合は政策手段を効果的に用いる」と前回会合と同じ考えを示している。よって、当面の政策運営については引き続き実質金利が『やや引き締まっている』環境を維持すべく利下げ幅を調整する展開が続くと見込まれ、漸進的な利下げを継続することが予想される。他方、足下の消費者マインドはインフレ鈍化や中銀の断続利下げも追い風に底入れする動きがみられる一方、企業マインドはEU(欧州連合)景気の不透明感が重石となる対照的な動きをみせており(図4)、実体経済は一進一退の動きが続くと見込まれる。リラ相場を巡っても、米ドル相場の動向に左右されることは避けられない上、日本円に対しては米ドル/円相場が上値の重い動きをみせていることも重なり、当面は一段の下値を探る展開が続く可能性に留意する必要がある。

注1 3月3日付レポート「トルコ24年成長率は+3.2%止まりも、最悪期を過ぎつつある兆候」
注2 1月24日付レポート「トルコ中銀は2会合連続の利下げ、「引き締め度合い」が政策のカギに」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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