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2025.02.18
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RBAが4年3ヶ月ぶりの利下げも、慎重姿勢を崩さず「タカ派的」
~先行きの政策判断は「データ次第」、豪ドル相場も実体経済の不透明感が重石となる展開も~
西濵 徹
- 要旨
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- オーストラリア準備銀行(RBA)は17~18日に開催した定例会合で政策金利を25bp引き下げ4.10%とする決定を行った。RBAの利下げはコロナ禍後初の上、利下げ自体も4年3ヶ月ぶりとなる。RBAは前回会合で「ハト派」姿勢にシフトするなど将来的な利下げに含みを持たせており、それにしたがったと捉えられる。
- ここ数年のオーストラリアはインフレに加え、不動産バブルの懸念も重なり、RBAは長期に亘り高金利政策を余儀なくされた。しかし、足下ではRBAが注目するすべてのインフレ指標が目標域に回帰するなど利下げのハードルは低下した。堅調な雇用環境はインフレ懸念を招く一方、足下の不動産市況には跛行色がくすぶるも全体として頭打ちの兆しがみられる。さらに、5月までに実施される次期総選挙で政権与党の苦戦が見込まれるなか、外国人投資家への不動産投資規制に動くなど価格抑制に本腰を入れる動きもみられる。
- こうしたなかでRBAは利下げに踏み切ったが、先行きについて「慎重姿勢を崩していない」、「抑制的であり続ける必要がある」とするなど、「タカ派的」な利下げと捉えられる。ブロック総裁も「市場が織り込む利下げは保証されていない」と述べるなど慎重姿勢をうかがわせている。今後の政策運営について繰り返しデータ次第と述べるなか、国内外の景気動向や経済データの動向に市場が左右される展開が続くと見込まれる。
- 豪ドルの対米ドル相場についても、実体経済の不確実性が高いなかでは上値余地は限られると見込まれるほか、対日本円相場については政策の方向性の違いが意識されるなかで上値の重い展開が続こう。
オーストラリア準備銀行(RBA)は、2月17~18日の日程で開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を25bp引き下げて4.10%とする決定を行った。RBAによる利下げ実施はコロナ禍の影響が一巡して以降で初である上、利下げそのものもコロナ禍直後の2020年11月以来、4年3ヶ月ぶりのこととなる。なお、RBAは昨年12月に開催した前回の定例会合において政策金利を据え置く一方、先行きの政策運営に関する文言を修正するなど『ハト派』姿勢への傾斜をうかがわせるとともに、物価見通しについても抑制に向けた確信に言及する動きをみせていた(注1)。こうした背景には、RBAの金融引き締めが長期化するなかで足下の実体経済は頭打ちの様相を強めているほか、景気に対する不透明感が高まっていることがある。

なお、ここ数年のオーストラリアでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化、商品高、国際金融市場での米ドル高を受けた通貨豪ドル安に伴う輸入物価の押し上げが重なる形で、インフレに直面してきた。さらに、コロナ禍対応のためにRBAが異例の金融緩和に舵を切り金融市場は『カネ余り』の様相をみせる一方、その後の景気回復を追い風に不動産市況は急上昇するなどバブルの様相を呈してきた。よって、RBAは物価と為替の安定に加え、不動産市況の鎮静化を目指して累計425bpの利上げによる金融引き締めに動いた。しかし、その後もインフレはRBAが定める目標(2~3%)を上回る推移をみせるとともに、不動産市況も上昇の動きが収まらないなど目標実現にほど遠い展開が続いてきた。
しかし、インフレは一時33年ぶりの水準に高進するも、商品高の一巡を受けて頭打ちに転じるとともに、アルバニージー政権が今年度(2024-25年度)から実施している電力料金を対象とする補助金政策によりエネルギー価格が下振れしたこともあり、足下では目標域内で推移するなど落ち着きを取り戻している。他方、堅調な雇用環境が続いていることを受けてコアインフレ率は目標域を上回る推移が続いたものの、足下においては頭打ちの動きが確認されるとともに、RBAが重視するすべてのインフレ指標が目標域に収まるなど落ち着きを取り戻す動きをみせている。こうしたことから、RBAにとっては利下げのハードルは低下していたと捉えられる(注2)。

他方、足下の雇用環境は依然として堅調な推移をみせるなどインフレへの懸念はくすぶる一方、高金利政策が長期化するなかで上昇基調が続いた不動産価格は頭打ちに転じるなど変化の兆しがうかがえる。しかし、足下の不動産価格はこれまで上昇の動きをけん引してきた都市部で頭打ちに転じる一方、地方部を中心に依然として上昇の動きが続くなど地域ごとの跛行色が強まっていると捉えられる。なお、アルバニージー政権は高止まりする不動産価格の抑制を目的に、4月から2年間を対象に外国人投資家による中古住宅の購入を禁止する方針を明らかにするなど、政策対応を強化する姿勢をみせている。この背景には、同国では5月までに連邦議会下院(代議院)総選挙の実施が予定されているが、直近の世論調査においてアルバニージー政権の支持率が就任以来最低となるなど逆風に直面しており、政党別支持率でも野党連合(保守連合)が与党(労働党)を上回るなど政権交代の可能性が高まっていることも影響しているとみられる。さらに、RBAを巡っても一昨年にロウ前総裁が任期延長を拒否される事実上の更迭に追い込まれるなど、政策運営に対する『圧力』が強まる動きもみられた(注3)。

とはいえ、ブロック現総裁の下でも上述のようにインフレが高止まりする展開が続くなかでRBAは引き締め姿勢を堅持する対応をみせてきたものの、昨年末にスタンスを緩和方向にシフトさせるなど利下げに向けた環境整備を進めてきた。こうしたなか、会合後に公表した声明文では物価動向について「基調インフレは緩和している」と昨年12月段階で「高過ぎる」と表現した状況の変化をうかがわせる一方、今回の決定について「インフレに関する歓迎すべき動きを認識したもの」としつつ「さらなる緩和見通しについては慎重姿勢を崩していない」との見方を示した。また、実体経済について「依然不透明」とした上で「経済活動をインフレ見通しに顕著な不確実性がある」との見方を示している。その上で、先行きの政策運営については引き続き「インフレを持続的に目標域に戻すことが最優先」とした上で、「金融政策は抑制的であり、今回の利下げ後もそうあり続ける必要がある」としつつ、物価を巡るリスクについて「双方向にある」との見方を示す。そして、「金融緩和が早過ぎれば、ディスインフレプロセスが弱まりインフレが目標の中央値を上回る水準で落ち着く可能性がある」としつつ、今後の決定について「データとリスク評価に基づいて判断し、世界経済や金融市場の動向、内需の動向、物価と労働市場の見通しに細心の注意を払う」、「インフレを目標域に戻す断固とした決意は変わらず、この実現に向けて必要なことを行う」との考えをあらためて強調している。
また、会合後に記者会見に臨んだブロック総裁も、これまでの政策運営を巡って「高金利政策が機能している」との認識を示す一方で、足下の状況について「インフレ抑制に勝利したと宣言できる状況にはない」との見方を示す。そして、「労働市場が強含んでいることは驚くべきこと」としつつ、「市場で織り込まれている追加利下げは保証されていない」、「先行きの金利動向ついて先走ることはできない」と追加利下げに慎重な姿勢を示すとともに、「今回の利下げ決定は難しい判断であった」との考えを示している。その上で、「追加利下げの可否はデータ次第」、「賃金動向を含め、インフレの上振れリスクが和らぐのをみる必要がある」、「供給サイドの回復が確認されることが望ましい」として、これらの動向を注視する考えを示している。他方、利下げ余地について「他の中銀に比べて過去の利上げ幅が小さく、十分な余地はないかもしれない」と述べており、公表資料における利下げ局面でのターミナルレート(2026年6月時点で3.4%)が高水準となっていることに現れている。その上で、物価動向について「目標域の中央値近傍に収めたい」との考えを示しており、コアインフレの動向を注視しつつ慎重な政策運営を維持する可能性は高いと見込まれる。
豪ドルの対米ドル相場を巡っては米ドル高の動きに一服感が出ていることを受けて底打ちしているものの、実体経済を巡る不透明要因が山積していることに鑑みれば、上昇余地は決して大きくないのが実情と捉えられる。他方、日本円に対しては、日本銀行による追加利上げが意識されやすくなっている一方、引き続き米ドル/日本円相場の動向に左右される展開が続くと見込まれるほか、金融政策の方向性の違いも影響して上値が抑えられる可能性に留意する必要がある。

注1 2024年12月10日付レポート「RBAは「ややハト派」シフトも、豪ドル相場は好悪の材料が綱引き」
注2 1月29日付レポート「オーストラリア、コアインフレの鈍化確認でRBAの利下げに道か」
注3 2023年7月14日付レポート「豪中銀、ロウ総裁が事実上の更迭、ブロック副総裁が昇格へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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