インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

RBAは「ややハト派」シフトも、豪ドル相場は好悪の材料が綱引き

~RBAのハト派シフトが重石の一方、中国の政策変更が下値を支えるこう着相場となる可能性~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀行(RBA)は10日の定例会合で政策金利を9会合連続で4.35%に据え置いた。このところの同国では物価高と金利高の共存長期化が景気の足かせとなる一方、政権が今年度から実施する補助金政策により足下のインフレは鈍化している。また、所得税減税の動きも景気を押し上げることが期待されたものの、7-9月の実質GDP成長率は力強さを欠くなど頭打ちの動きが続いている。よって、金融市場ではRBAの次の一手は利下げになるとの見方が強まる一方、足下ではコアインフレが加速するなどインフレの粘着度の高さが確認されるなか、先行きの政策運営に対する見方に注目が集まっている。会合後に公表した声明文では、基調インフレが依然高過ぎるとしつつ、インフレ抑制にある程度確信があるとの見方を示すとともに、これまでに比べて幾分「ハト派」にシフトする様子がうかがわれる内容となっている。RBAのブロック総裁も声明文の修正を「意図的」と発言するなど、ハト派シフトを企図している様子もみえる。ただし、先行きの利下げ時期について明言しなかった。豪ドルの対米ドル相場は、RBAのハト派シフトと中国の政策変更が綱引きする形でこう着が見込まれ、日本円に対しても同様の動きが続く可能性が高まっている。

オーストラリア準備銀行(RBA)は、10日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を9会合連続で4.35%に据え置く決定を行った。ここ数年のオーストラリアでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨豪ドル安に伴う輸入インフレも重なり、インフレが上振れする展開が続いてきた。さらに、コロナ禍対応を目的とする異例の金融緩和を追い風とする金融市場のカネ余りを受けて、不動産市況は急騰するなどバブルが懸念される事態に見舞われた。よって、RBAは物価と為替の安定を目的に累計425bpもの利上げを実施したものの、その後もインフレが長期化したため、物価高と金利高が共存して家計消費をはじめとする内需の足かせとなることが懸念された。しかし、一時は33年ぶりの水準に昂進したインフレは商品高の一巡を受けて昨年以降頭打ちしてきたほか、アルバニージー政権が今年度(2024-25年度)から実施している電力料金を対象とする補助金政策を受けたエネルギー価格の下振れも重なり、足下のインフレ率は中銀目標の下限近傍で推移するなど物価は一見落ち着きを取り戻している(注1)。また、インフレ鈍化に加え、アルバニージー政権は今年度から実施している所得税減税の動きは内需を下支えすることが期待されたものの、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+1.34%と引き続き力強さを欠く推移が続くとともに、中期的な基調を示す前年同期比ベースでは+0.8%と4半期ぶりの伸びに留まるなど頭打ちが続いている様子がうかがえる(注2)。よって、金融市場においてはRBAによる『次の一手』は利下げになるとの見方が強まる一方、物価動向を巡ってインフレ率は鈍化しているものの、コアインフレ率(トリム平均値)は伸びが加速するなどインフレの粘着度の高さは意識される動きが確認されており、利下げの時期がいつになるかに注目が集まっている。こうしたなか、RBAが会合後に公表した声明文では、足下の物価動向について引き続き「基調的なインフレは依然として高過ぎる」とした上で「インフレが最新の見通しに沿って低下することにある程度確信を有する」としつつ「リスクは残る」との認識を示すとともに、実体経済について「依然として不透明」とした上で「足下のデータは想定に比べてやや軟調」としつつ、「海外経済の見通しも依然高い不確実性が残る」との見方を示している。その上で、「賃金を巡る上昇圧力は想定以上に緩和されている」として、足下の政策運営について「引き続き抑制的であるとともに、想定通りに機能していると評価している」との考えを示している。そして、先行きの政策運営については引き続き「インフレを持続的に目標に戻ることが最優先」とする従来からの考えを強調した上で、「物価安定と完全雇用というRBAの使命と一致する」としつつ、「インフレは当面低水準に留まるが、基調インフレは依然高過ぎるなか、インフレが目標域に留まり中央値に近付くには依然として暫く時間を要する」としている。そして、「足下のデータは予想と一致しており、インフレが目標域に持続的に向かっているとの確信を得つつある」との見方を示すとともに、「データとリスク次第」としつつ「インフレを目標域に戻す断固とした決意は変わらず、この実現に向けて必要なことを行う」との考えをあらためて示している。ただし、前回会合では「何も決定しておらず何も排除していない」、「政策は充分に抑制的である必要がある」との文言を示していたが、今回はこれらが削除されるなどやや『ハト派』姿勢に傾いている様子がうかがえる。また、会合後に記者会見に臨んだRBAのブロック総裁は、「足下のデータはまちまちな内容で一部に軟化の動きがみられる」としつつ、「インフレの上振れリスクは後退したが、消えた訳ではない」との見方を示した上で、「一定のインフレ圧力は依然残り、需要も高過ぎるなかで基調インフレのさらなる進展が必要になる」との見方を示している。その上で、今回の声明文について「文言変更は意図的なもの」としてハト派姿勢へのシフトを示唆するとともに、「インフレに対する確信はやや高まっている」、「足下の経済はほぼ想定通りと認識している」との見方も示している。また、今回の会合について「利下げも利上げも議論していない」とした上で、先行きの政策運営について「雇用を含むすべてのデータをみている」、「いつインフレに確信を持てるかは分からないが、より緩和的なデータを注視している」、「金融市場の反応を支持するつもりもなく、驚くこともない」、「2月に利下げを行うかは分からず、賃金や需要が鈍化するデータを確認する必要があり、インフレが鈍化しなければ新たな問題が生じる」と述べるなど、明確な方向性を示さなかった。金融市場においては、RBAがハト派姿勢にシフトさせていることを受けて、豪ドルの対米ドル相場に下押し圧力が掛かる動きがみられる一方、中国が共産党中央政治局会議において財政、金融政策を総動員する方針を明らかにしており(注3)、オーストラリアにとって最大の輸出相手である中国の景気底入れ期待が豪ドルを下支えする動きもみられるなか、当面の豪ドルの対米ドル相場については上下双方に方向感の出にくい展開が続く可能性が高まっている。また、日本円に対してもこのところは日銀による利上げ期待の高まりが上値を抑える展開をみせてきたものの、先行きについては日銀のさらなる利上げは見通しにくい一方、豪ドルの対米ドル相場が動意の乏しい展開となる可能性も相俟って同様にこう着相場が続く可能性が見込まれる。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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