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- ECBは中立金利の上限に接近
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- ECBは1月の理事会で25bpの追加利下げを決定。下限の政策金利は2.75%とラガルド総裁が想定する1.75~2.25%の中立金利の上限まで50bpのところにある。声明文では今回の利下げ後も政策金利が引き締め的な水準にあると説明しており、3月の追加利下げは既定路線。このまま25bp刻みの利下げを続ければ、4月には中立金利の上限に到達。先行きの利下げ継続の有無や利下げの最終到達点について、向こう数回の理事会で何らかの見解表明が必要となる。インフレ率の2%への持続的な復帰と緩やかな景気拡大を想定するECBの中心予想は、米トランプ政権による関税引き上げがあれば軌道修正を余儀なくされる。トランプ関税の発動有無が今後の利下げパスにも影響しそうだ。
事前に広く予想されていた通り、欧州中央銀行(ECB)は30日に終わった1月の理事会で25bpの追加利下げを決定した。昨年6月に約5年振りとなる利下げを開始し、翌7月は十分なデータが揃っていないことを理由に追加利下げを見送ったが、その後は9・10・12・1月と4回連続で利下げ。ラガルド総裁は、今回の利下げ決定が全会一致によるもので、成長下振れにもかかわらず、50bp利下げは検討されなかったことを明かした。
総裁は「今回の利下げ後も政策金利の水準が引き締め的で、利下げの最終到達点を議論するのは時期尚早である」と説明した。ラガルド総裁は前回12月の理事会で中立金利の水準を1.75~2.50%の間にあると説明したが、先日のダボス会議ではこれをやや狭め、1.75~2.25%の間にあると言及した。今回の利下げ後の政策金利は2.75%で、総裁が想定する中立金利の上限まで50bpに接近。今回、従来のガイダンスや景気・物価認識が維持されたことからは、次回3月の25bpの追加利下げは規定路線と考えられる。このまま25bp刻みの利下げを続けていけば、4月に中立金利の上限、6月には中央値に到達する。先行きの利下げ継続の有無や利下げの最終到達点について、向こう数回の理事会で何らかの見解表明が必要となろう。なお、総裁によれば、ECBのスタッフによる中立金利の試算値に関する新たなペーパーが2月7日に公表される予定とのこと。
ラガルド総裁は、賃金が想定通りに沈静化に向かっているほか、企業収益がインフレ圧力の一部を吸収しており、多くのインフレ指標が2%の物価目標への持続的な復帰の可能性を示唆していることに言及。今後の政策スタンスについては、これまで同様に「インフレ見通し、基調的なインフレの動き、金融政策の伝達の強さに対する理事会の評価によって決まる」と説明したうえで、今後の利下げ判断については、「事前に特定の政策金利パスを約束することはせず、理事会毎にデータに基づいて判断する」との従来からの方針を繰り返した。
同日発表された昨年10~12月期のユーロ圏の実質GDP成長率は、前期比横ばい、同年率+0.1%と足踏みが続いている(図表1)。米国の関税引き上げへの警戒から、トランプ大統領の就任前に米国向けに駆け込み輸出があったとみられるが、構造不況下にあるドイツ(同年率▲0.8%)、五輪特需が剥落したフランス(同年率▲0.3%)、外需依存度の高いイタリア(同年率▲0.1%)、多国籍企業の活動や特許の影響で振れが大きいアイルランド(同年率▲5.0%)がマイナス成長となった一方、旺盛な旅行需要や復興基金からの資金拠出が高成長を後押しするスペイン(同年率+3.1%)が相殺した。

声明文での景気判断は下振れ方向にあるとの認識を維持。足元で景気への逆風が吹いているが、実質購買力が改善に向かうことや過去の引き締め的な金融環境が弱まることから、先行きは回復軌道に転じるとの見方を示した。こうした景気認識には、米国のトランプ政権による関税引き上げの影響は具体的な形では反映されていないものと判断される。米国の通商政策変更による影響を問われたラガルド総裁は、成長率の押し下げにつながるのは確実だが、一律の関税引き上げとなるか、一部の費目や国を対象に関税を引き上げるのか、報復関税の引き上げがあるかにより、影響の度合いが異なると指摘。トランプ関税の発動有無が今後の利下げパスにも影響しそうだ。筆者は部分的な関税引き上げを想定しており、それによる景気の下振れを反映する形で、中立金利の下限である1.75%まで政策金利が引き下げられると予想する(図表2)。

田中 理
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