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2024.12.20
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メキシコ中銀、さらなる利下げを示唆も物価を巡るリスクは山積
~米トランプ次期政権との対峙で「トリプル安」が続くなか、政策運営は難しい対応を迫られる展開も~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ中銀は19日の定例会合で4会合連続の利下げにより政策金利を10.00%とする決定を行った。足下のインフレ率は依然中銀目標を上回る一方、コアインフレ率は目標域で推移している。また、足下の景気はインフレ鈍化による内需下支えに加え、外需の堅調さも重なり底入れの動きを強める動きが確認されている。他方、米大統領選でのトランプ氏勝利に加え、トランプ氏はメキシコからのすべての輸入品に25%の追加関税を課す方針を示し、メキシコ政府も報復に動く方針を示している。実体経済への悪影響が警戒されるなか、ペソ相場や主要株価指数は上値が抑えられる展開が続く。こうした状況ながら、中銀は先行きのインフレ鈍化を受けて一段の利下げに動く可能性を示唆している。ただし、来年半ば以降のインフレ見通しを上方修正するなど、物価を巡る状況は厳しさがうかがえる。物価の上振れリスクが意識されやすい状況が続くと見込まれるなか、当面の政策運営は難しい展開となることは避けられないと予想される。
メキシコ中銀は、19日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を25bp引き下げて10.00%とする決定を行った。ここ数年のメキシコはコロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高などを受けてインフレが昂進したものの、中銀による累計725bpの利上げに加え、商品高の一巡も重なり一昨年後半以降は頭打ちの動きを強めてきた。中銀は今年3月にコロナ禍後初の利下げに動いたが、直後にインフレが再加速に転じるとともに、6月に行われた大統領選と連邦議会上下院選の結果を受けてメキシコ金融市場は通貨ペソ、主要株式指数(ボルサ指数)、国債のすべてが売られる『トリプル安』に直面した(注1)。よって、中銀は利下げを休止させざるを得なかったものの、その後のインフレが再び頭打ちしたことを受けて8月に再利下げに舵を切るとともに、今回で4会合連続の利下げとなり、3月以降の利下げ局面における利下げ幅は累計125bpとなる。11月のインフレ率は前年比+4.55%と依然中銀が定めるインフレ目標(3±1%)の上限を上回る一方、コアインフレ率は同+3.58%と目標域で推移するとともに4年半強ぶりの低水準となっている。また、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+4.37%(改定値)となるなど、インフレ鈍化が内需を下支えするとともに、輸出の8割を占める米国経済の堅調さを追い風に外需も拡大が続くなど、足下の景気は底入れの動きを強める動きが確認されている。ただし、先月の米大統領選においてトランプ氏が勝利したほか、トランプ氏は先月末にメキシコからのすべての輸入品に25%の追加関税を課す方針を明らかにしており、外需を取り巻く環境は厳しさを増す可能性が高まっている。こうしたなか、今回も5人の政策委員が全会一致で利下げを決定するとともに、先行きのインフレについて「今後数四半期でインフレに影響を与える要因の解消が進むとともに、コアインフレは鈍化傾向が続くと見込まれる」とした上で、政策運営について「インフレ見通しは依然として抑制的な政策スタンスを求めるが、利下げサイクルの継続と金利水準の引き下げが適切と示唆される」との認識を示している。その上で、先行きの政策運営について「さらなる利下げが可能になると予想している」としつつ、「ディスインフレの進展を受けて、抑制的なスタンスを維持しつつ、今後の数会合ではより大幅な下方修正が検討される可能性がある」とするなど、さらなる利下げが検討される可能性を示唆している。ただし、6月の大統領選、連邦議会上下院選後に調整の動きを強めたペソ相場や主要株式指数は、足下では米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて一段と調整するとともに、米国との間で追加関税の『報復合戦』に発展した場合の実体経済の悪化を警戒して上値が抑えられる展開が続いている。仮にメキシコ政府が米国からのすべての輸入品に25%の追加関税を課した場合、財輸入の約4割を米国からの輸入が占めることに鑑みれば、物価に大幅な押し上げ圧力が掛かることは避けられない。また、中銀は先行きの一段の利下げに含みを持たせる姿勢をみせたものの、声明文で示したインフレ見通しを巡っては、短期的に下方修正する一方で来年以降は上方修正しており、あくまでインフレ目標の域内で推移するとはしているものの、メッセージを『ハト派』方向に傾斜させる一方で物価に対する認識の厳しさを示唆している。その意味では、現実には大幅利下げに動くことのハードルは高く、物価の上振れリスクに晒されやすい展開が続くことで難しい政策運営を迫られることが避けられないであろう。



注1 6月6日付レポート「シェインバウム氏勝利でメキシコペソと株価などはなぜ調整した?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

