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2024年12月FOMCプレビュー

~2025年の利下げペースに注目~

前田 和馬

要旨
  • 12月FOMC(12/17~18開催)にてFRBは3会合連続で利下げを決定する見通しだ。インフレ高止まりの懸念は残るものの、FRBは高金利政策を緩やかに調整する姿勢を示すとみられる。
  • 同時に公表されるドットチャートではFOMCメンバーの予想する2025年の利下げ回数が注目される。9月時点では計4回(1.0%pt)の利下げが中央値であった一方、複数のFRB高官が慎重な利下げペースに言及していることを踏まえると、より少ない利下げ回数が示される可能性が高い。
  • パウエル議長は記者会見において、トランプ新政権による金融政策への影響を巡る具体的な発言を避ける可能性がある。一方、一部のFOMCメンバーは関税引き上げや減税策による影響を、メインシナリオやリスク見通しに織り込む可能性がある。

3会合連続の利下げ

12月FOMC(12/17~18開催)において、FRBは3会合連続の利下げに踏み切り、FF金利の誘導目標を4.25~4.5%(現状:4.5~4.75%)と-0.25%pt引き下げる見通しだ。インフレ再燃への懸念は依然残るものの、利下げを見送るほどの景気やインフレの強さは見られないため、FRBは政策の引き締め度合いを緩和するスタンスを維持するとみられる。なお、FF金利先物に基づくFedWatch(12/11時点)によると、12月FOMCにおける0.25%ptの利下げ予想が98.6%に達する一方、金利据え置きを予想する向きは1.4%に留まっている。

足下の経済指標をみると、11月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+22.7万人(10月:同+3.6万人)と、ハリケーン上陸やストライキによる一時的な影響が剥落したことを背景に、前月から大幅に加速した。3か月移動平均で均してみても+17.3万人(+12.3万人)と、堅調な雇用拡大が持続している。また、11月の失業率は4.2%(4.1%)と小幅ながら4か月振りに上昇した一方、10月の有効求人倍率は1.11倍(9月:1.08倍)と夏以降は横ばい圏で推移するなど、1倍割れには至らずに踏み止まっている。他方、11月消費者物価指数における食料・エネルギーを除くコア指数は前月比+0.3%(10月:+0.3%)と市場予想通りに着地し、その内訳をみてもインフレ高止まりの一因である家賃の伸びが減速した。とはいえ、短期的なトレンドを示す3か月前比年率のコア指数は+3.7%(同、+3.6%)と前月から小幅に加速、その水準も+2%インフレ目標を大幅に上回るなど、インフレ再燃への懸念は依然払しょくされていない。

12月FOMCまでには12/12に11月の生産者物価指数(PPI)、12/17に小売売上高及び鉱工業生産指数、12/18に住宅着工件数がそれぞれ公表される。特に小売売上高は年末商戦を含めた個人消費の動向を占ううえで重要となる。オンライン商戦はトランプ関税への警戒感もあり電化製品を中心に堅調に推移したとの分析があり、こうした見方が小売売上高で追認されるのかが注目される。なお、小売売上高に大きなサプライズがない限り、今後12月FOMCにおける利下げ確率が大きく変動する可能性は低い。

注目される2025年の利下げ回数

12月FOMCではFOMCメンバーによる四半期経済見通し(SEP)が同時に公表される。最大の注目点である2025年の利下げ回数を巡っては、9月時点の計4回(-1.0%pt)から減少する可能性が高い。パウエル議長は12/4の講演において、米国経済が想定以上に強くインフレがやや高止まりしていることを指摘したうえで、「一段と慎重になる余裕がある」と述べるなど、利下げを急がない方針を示唆した。FRBは12月FOMCで3会合連続の利下げに踏み切ると見込まれるもの、来年以降はこうしたペースを緩め、より長期間にわたって中立金利を目指す見通しを示す可能性が高い(9月時点の見通しでは25年が4回、26年が2回の利下げにより中立金利[Longer run]である2.9%に到達)。なお、2025年の利下げ回数が3回へと減少することに大きなサプライズはない一方、2回(0.5%pt)へと減少する場合、金融市場にはややタカ派的な印象を与える可能性がある。

また、経済・物価見通しを巡っては、2024年のGDP成長率が足下の実績を反映する形で上方修正される一方、2025年以降の成長率見通しは2%前後を維持する可能性が高い。また、失業率は24年が下方修正されると見込まれる一方、25年以降も横ばいから緩やかな上昇に留まり、失業率上昇への懸念が幾分後退したことが示される可能性がある。他方、24年のPCE総合及びコアPCEインフレ率は足下のインフレ実績を踏まえて上方修正される見通しだ。一方、FOMCメンバーによるインフレ再燃への警戒感を見るうえでは、25年以降のインフレ率がどの程度上方修正されるかが注目される(9月時点:総合+2.1%、コアベース:+2.2%)。

引き続きトランプ新政権への言及は限定的か?

パウエル議長は11月FOMC後の記者会見において、トランプ新政権による各種政策の影響に関しては実現性が高まった際に反映する方針を示し、金融政策に与える影響に関する具体的な言及を避けた。トランプ新大統領は就任初日に対中国・カナダ・メキシコへの関税を引き上げる方針を示しており、こうした政策スタンスと金融政策の関係を巡って、記者会見で複数の質問が出ると想定される。とはいえ、パウエル議長は11月FOMC後の記者会見と同様、具体的な言及を避ける可能性がある。パウエル議長は12月4日の講演において、関税政策などの不確定要素を理由に「経済及び金利見通しにこうした政策要因を反映するのは時期尚早」と述べている。

一方、パウエル議長のこうしたスタンスとは対照的に、一部のFOMCメンバーは自身の経済・物価見通しにトランプ新政権の政策要因を反映する可能性がある。とはいえ、メインシナリオに織り込むうえでは多くの仮定を置く必要があるため(例えば関税の引き上げ幅・対象・時期など)、こうした動きがFOMCメンバーの中心シナリオに与える影響は限定的に留まると考えられる。一方、SEPでは経済・物価見通しに対する不確実性及びリスク評価の分布も併せて公表されるため、FOMCメンバーがトランプ新政権による経済・物価へのリスクを現時点でどの程度見積もっているのかを占ううえで注目される。

なお、2016年12月のFOMCにおいて、当時のイエレンFRB議長はトランプ新政権がもたらす金融政策への影響を議論したことは認めたものの、「現時点では不確かな部分が多く、詳細がわかれば金融政策決定に反映する」と述べるに留めるなど、イエレン氏自身が政策をどう評価しているかの明言を避けた。一方、その後公表された同会合における議事要旨では「約半数の参加者がより拡張的な財政政策を予測に織り込んだ」ことが指摘されている。

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前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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