- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- OPECプラス、協調減産をさらに1年、有志国の自主減産も3ヶ月延長
- World Trends
-
2024.12.06
新興国経済
原油
産油国経済
トランプ政権
OPECプラス、協調減産をさらに1年、有志国の自主減産も3ヶ月延長
~不透明要因山積のなかで価格維持へ強い姿勢をみせるも、今後も延長を迫られる展開が続くか~
西濵 徹
- 要旨
-
- 主要産油国の枠組であるOPECプラスは、5日の閣僚会合でOPECプラス全体での日量366万バレルの協調減産を1年延長して2026年末まで、有志8ヶ国による日量220万バレルの自主減産を3ヶ月延長して来年3月末までとすることで合意した。減産長期化により世界産油量に占めるOPECプラスの存在感が低下するなか、価格低迷により財政状況も厳しさを増すなか、枠内ではシェア維持と価格維持の間で難しい選択を迫られるなど枠組に遠心力が働く懸念も高まっている。しかし、中国の景気低迷に加え、米トランプ次期政権の誕生という不透明要因が山積するなか、OPECプラスとして価格維持を重視する姿勢をあらためて示した格好である。とはいえ、今後も減産延長を迫られる局面が続くなど難しい展開が続くであろう。
主要産油国の枠組であるOPECプラスは、5日に開催した閣僚会合において、今年6月の閣僚会合で1年間(2025年末まで)延長したOPECプラス全体として日量366万バレルの協調減産をさらに1年延長して2026年末まで、今月末に期限を迎える有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)による自主減産(日量220万バレル)を3ヶ月延長して来年3月末までとすることで合意したことを発表した。閣僚会合は元々今月1日に開催する予定であったものの、直前に5日に延期する旨が発表されるなど、協議内容を巡って加盟国の間の利害が衝突している様子がうかがわれた。なお、有志8ヶ国による自主減産は今年1月に開始され、当初は3ヶ月間を対象に導入されたものの、その後は度々延長されるとともに、その縮小を巡っても段階的に縮小するなどの修正が加えられる一方、その後も延長が繰り返されてきた。ただし、OPECプラスによる協調減産や自主減産が長期に及ぶ一方で、米国など枠外の産油国による供給増を受けて世界の産油量に占めるOPECプラスの割合は足下で5割を下回るなど存在感の低下が進んでいる。こうしたなか、OPECプラスの協調減産や自主減産を通じた価格維持が困難になるなど、財政面で原油関連収入への依存度が高い国々の間では減産への反発が強まるなど、OPECプラスの枠組に『遠心力』が働く懸念が高まってきた。さらに、枠内における協調減産や自主減産に最も貢献してきたサウジアラビアが価格維持政策からの転換を示唆する動きをみせるなど、産油国としてのシェア維持に舵を切る可能性が取り沙汰される向きもみられた。しかし、現実には中国景気を巡る不透明感を理由とする世界的な需要低迷が意識されるなか、OPECプラスが有志国による自主減産を度々延長する旨を発表した後も、国際原油価格は上値の重い展開が続いてきた。さらに、先月の米大統領選でトランプ氏が勝利するとともに、パリ協定からの再脱退を含めてバイデン現政権の環境政策の大転換を図る方針のほか、米国におけるシェールオイルやシェールガスの大幅増産を目指す動きをみせており、筆者も有志国による自主減産は再延長が避けられないものと予想していた(注1)。さらに、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて、国際金融市場においては米ドル高の動きが再燃しており、いわゆる『米ドル建資産』と見做される原油にとっては上値が抑えられやすい環境にあると捉えることもできる。したがって、今回の決定のうち有志8ヶ国による自主減産の3ヶ月延長は既定路線であったとみられる一方、協調減産そのものも1年間延長するという踏み込んだ内容とすることにより、OPECプラス全体として引き続き供給量を抑制することにより価格を下支えする方針をあらためて強調する狙いがあったと考えられる。とはいえ、先行きも需給双方に不透明要因が山積するなど、国際原油価格は上値の重い展開が続く可能性が高まっていることを勘案すれば、今後もOPECプラスは段階的に減産維持を迫られる展開が続くと見込まれるとともに、その度に枠組の結束の揺らぎが懸念されることが懸念される。世界経済の分断が進むなかで、2000年代以降のグローバル化の進展が世界経済の成長を促したような状況が見通しにくくなるなか、産油国を取り巻く環境は厳しさ増す可能性に留意する必要がある。

注1 11月13日付レポート「OPECプラス・有志国の自主減産はさらなる延長が不可避か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・8月輸出受注額は過去最高を更新(Asia Weekly) ~オーストラリア・8月失業率は5年ぶりの高水準も、就業者数増加で雇用環境に底堅さ~
アジア経済
西濵 徹
-
メキシコ中銀、政策判断の自由度を重視 ~3会合連続で金利据え置き、FRB利上げへの機械的追随を否定、ペソ相場はどうなる?~
新興国経済
西濵 徹
-
トルコ株の混乱が映す「リラ建て資産誘導」の副作用 ~投資信託の急拡大で歪みが蓄積、市場への信認低下が新たなリスクに~
アジア経済
西濵 徹
-
景気減速にもかかわらず南ア中銀は2会合ぶりの追加利上げを決定 ~原油高やサービス物価を警戒、ランド相場は外部環境に左右される展開が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
インドネシア中銀、3会合連続で金利据え置きも、政策運営は難路続く ~中銀総裁・財務相人事を巡る混乱は一巡も、景気下支えとルピア安定の「板挟み」は続く~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
メキシコ中銀、政策判断の自由度を重視 ~3会合連続で金利据え置き、FRB利上げへの機械的追随を否定、ペソ相場はどうなる?~
新興国経済
西濵 徹
-
景気減速にもかかわらず南ア中銀は2会合ぶりの追加利上げを決定 ~原油高やサービス物価を警戒、ランド相場は外部環境に左右される展開が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
ロシア下院選、与党・統一ロシアが3分の2超の議席を維持 ~選挙結果は政権に追い風も、石油製品不足とインフレ再加速で国民生活には逆風が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
ブラジル中銀は5会合連続の利下げも、緩和継続には慎重姿勢 ~景気減速を重視する一方、原油高・異常気象・財政運営が引き続きインフレリスクに~
新興国経済
西濵 徹
-
「トランプ・インフレ」に翻弄される新興国経済 ~スーパー・エルニーニョも加わり、インフレと通貨安への警戒感が強まる懸念も~
新興国経済
西濵 徹

