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ニュージーランド、雇用悪化確認でRBNZのハト派傾斜が強まるか

~NZドルの対米ドル相場は上値の重い展開を予想、日本円に対しても同様の展開が続く可能性~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランドでは、インフレ鈍化に加えて景気の躓きが確認されるなかで中銀(RBNZ)はハト派姿勢を強める動きをみせている。その後もインフレはRBNZの想定を上回る鈍化が確認されたほか、企業マインドも景気の弱さを示唆する展開が続いている。さらに、7-9月の失業率は4.8%と4年ぶりの水準に悪化し、雇用者数も幅広い年代や分野で調整が確認されるなど、雇用環境は急速な悪化がうかがえる。RBNZは「金融安定性報告」で雇用悪化による住宅ローンの滞納増や企業の資金繰り悪化による投資減が景気悪化を招くリスクを指摘するなど、一段の金融緩和に動く可能性を示唆している。よって、27日に開催予定の次回会合で、RBNZは3会合連続の利下げに加え、利下げ幅の拡大に動く可能性も高まっている。米ドル高の再燃がNZドルの対米ドル相場の上値を抑えているが、当面はRBNZのハト派傾斜で同様の展開が続いて豪ドルと対照的な展開が続くと見込まれ、日本円に対しても同様の動きをみせる可能性が高まっている。

ここ数年のニュージーランドでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドルに伴う輸入インフレも重なり、インフレは大きく上振れする事態に直面した。さらに、金融市場ではコロナ禍対応を目的とする異例の金融緩和がカネ余りを招くとともに、生活様式の変化も重なる形で不動産市況も大きく上振れするなどバブルが懸念される状況に見舞われた。こうした事態を受けて、中銀(RBNZ)は物価と為替、不動産市況の鎮静化を目的に累計525bpの利上げに動き、インフレは一時30年ぶりの高水準となるもその後は頭打ちの動きを強めたものの、目標域を上回る推移が続くなど物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる展開が続いた。また、最大の輸出相手である中国の景気減速などが外需の重石となるとともに、このところのニュージーランドでは台風襲来や熱波による高温など異常気象が頻発していることも幅広い経済活動の足かせとなるなど景気は力強さを欠く推移が続いている。よって、RBNZは8月の定例会合でコロナ禍後初の利下げに動くとともに(注1)、その後も景気の躓きが確認されたことを受けて(注2)、先月の定例会合では2会合連続の利下げに加えて利下げ幅を拡大させるなど緩和ペースを加速させている(注3)。RBNZによる利下げペースの加速を巡っては、インフレ鈍化を見込んでいることを理由に挙げたものの、足下のインフレは同行の想定以上に鈍化していることが確認されており、非貿易財やサービス物価などに上昇圧力がくすぶる動きがみられるものの、同行の『ハト派』姿勢を後押しする可能性が高まっている(注4)。なお、RBNZによる利下げ実施を受けて上値の重い展開が続いた不動産市況は底入れしているほか、企業マインドも同様に底打ちするも引き続き好不況の分かれ目となる水準を下回る推移が続くとともに、雇用調整圧力がくすぶるなど物価を下押しすることが期待される状況にある。こうしたなか、7-9月の失業率(季調済)は4.8%と前期(4.6%)から0.2pt悪化して約4年ぶりの水準になるとともに、雇用者数も減少傾向が続くとともに、中期的な基調も減少傾向を強めるなど急速に悪化の度合いを強めている様子がうかがえる。年代別でも、若年層や高齢層など幅広い年代で雇用調整圧力が強まる動きが確認されるとともに、分野別でも、製造業や建設業、サービス業などで幅広く調整する動きがみられるなど雇用を取り巻く環境は厳しさを増している。RBNZが5日に公表した半期の「金融安定性報告」においても、先行きの景気を巡って雇用環境の悪化を受けた住宅ローンの返済延滞増が不良債権の増大を招く懸念に加え、企業部門の資金繰り懸念が投資活動の足かせになっているとの認識を示すなど、さらなる景気悪化に直面するリスクを指摘している。こうした状況を勘案すれば、RBNZは今月27日に開催予定の次回の定例会合において3会合の利下げに動くと見込まれ、利下げ幅についても先月の定例会合同様に50bpとする、ないし75bpに一段と拡大させる可能性も高まっていると判断できる。このところの国際金融市場においては米ドル高の動きが再燃していることを反映して、NZドルの対米ドル相場は上値が抑えられる展開が続いてきたほか、RBNZがハト派傾斜を強めるとの見方が引き続き上値を抑えると見込まれるなど、『タカ派』姿勢を維持する隣国オーストラリア(豪ドル)と対照的な動きをみせるであろう(注5)。そして、日本円に対しても上値の重い展開が続く可能性は高まっている。

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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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