インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

RBAはインフレの根強さを意識、しばらくは現行姿勢の維持を見込む

~豪ドルの対米ドル相場は上下双方に動意の乏しい展開となる可能性、対日本円相場にも影響しよう~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀行(RBA)は、5日の定例会合で政策金利を8会合連続で4.35%に据え置いた。米FRBをはじめとする主要国中銀が利下げに動く流れが広がるなか、足下のインフレは政策効果も影響して下振れする一方、コアインフレは依然目標域を上回る推移が続くなかでRBAは慎重姿勢を維持した。また、足下では跛行色が一段と鮮明になるも不動産価格は依然上昇基調が続く。こうしたなか、RBAは基調インフレが高すぎるとした上で、持続的に目標域に回帰するのは2026年になるとの見方を示すとともに、長期に亘って現行の引き締め策を維持する考えを示した。ブロック総裁もしばらく抑制的なスタンスを維持する必要があるとの認識を示すなど、「タカ派」姿勢をあらためて強調した。足下の豪ドルの対米ドル相場は、米ドル高の再燃を反映して上値の重い状況が続いているが、RBAのタカ派が意識される形で動意の乏しい展開となる可能性が高まっており、当面は日本円に対しても同様に動意の乏しい展開が続くと見込まれる。

オーストラリア準備銀行(RBA)は、5日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を8会合連続で4.35%に据え置く決定を行った。このところの国際金融市場においては、ここ数年の世界経済の悩みの種となってきたインフレが商品高の一巡などを追い風に頭打ちの動きを強めるなか、米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中銀も利下げに動く流れが広がりをみせるなど、金融政策の方向性が大きく変わる動きがみられる。オーストラリアでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、商品高や米ドル高に伴う通貨豪ドル安の動きも重なりインフレが大きく上振れしたため、RBAは物価と為替の安定を目的に累計425bpの利上げを実施した。結果、商品高の一巡も重なり、一時は33年ぶりの水準に昂進したインフレは昨年来頭打ちの動きを強めたほか、アルバニージー政権が今年度から実施中の電力料金を対象とする補助金政策によるエネルギー価格の押し下げにより、9月のインフレ率は前年比+2.1%と前月(同+2.7%)から鈍化して3年2ヶ月ぶりの伸びとなり、目標域の下限に一段と近付いている(注1)。この動きだけをみればインフレは収束している一方、コアインフレ率は前年比+3.2%と前月(同+3.4%)から鈍化するも依然として目標域の上限を上回る推移が続く一方、RBAが注視する価格変動の多い財と観光関連を除いたベースでは前年比+2.7%と前月(同+3.0%)から鈍化して2年9ヶ月ぶりに目標域に回帰するなど、基調インフレに対する見方を難しくさせている。他方、アルバニージー政権は不動産需要の抑制を目的に移民政策を転換させるなどの強硬策に動いているものの、不動産価格は全土平均で1年半以上に亘って上昇して最高値を更新する展開をみせている。しかし、10月は8つある州、及び特別区の州都のうちダーウィン、キャンベラ、メルボルン、シドニーで下落している一方、パース、アデレード、ブリスベンで力強い上昇が続くなど対照的な動きがみられるなど、地域ごとに跛行色が一段と強まっている様子がうかがえる。こうしたなか、RBAが会合後に公表した声明文では、足下の物価動向について「基調インフレは依然として高すぎる」との認識を示した上で「インフレが目標の中央値(2.5%)に持続的に回復するのは2026年まで掛かる」との見通しを示している。その上で、景気見通しも「依然として非常に不透明」との認識を示した上で、「最新の見通しでは政策は依然抑制的で想定通りに機能している」としつつ「所得の伸びが加速するに伴い家計消費は年後半から増加が見込まれるものの、回復が遅れて生産が鈍化すれば労働市場の急激な悪化に繋がるリスクがある」、「海外経済の見通しも依然不確実性が高い」との見方を示している。そして、先行きの政策運営についても「インフレを目標域に戻すことを最優先」とする従来からの考えを強調しつつ、「インフレは大幅に鈍化して当面は低水準に留まるが、基調インフレは依然高く、目標域に持続的に推移して中央値に近付くにはしばらく時間を要する」、「インフレが目標域で持続的に推移すると確信するまで政策を十分に引き締める必要がある」との認識を示すなど、あらためて『タカ派』姿勢を強調した。その上で、政策判断についても従来通り「データとリスク次第」としつつ、「インフレを目標域に戻す断固とした決意は変わらず、この実現に向けて必要なことを行う」という従来からの考えをあらためて強調している。また、会合後に記者会見に臨んだRBAのブロック総裁は政策運営について「しばらくは抑制的である必要があると信じている」としつつ、物価動向について「依然上振れリスクがある」とした上で、足下の政策運営について「正しい」との認識を示している。そして、先行きについては「経済が想定以上に下振れすれば行動する用意は出来ている」としつつ、「コアインフレが目標域に回帰すると確信する必要がある」、「強力な労働市場を維持したい」との考えを示している。また、「インフレと政策を巡るリスクはバランスしている」とした上で「住宅消費の動向と生産性の低下が2大リスクになる」との見方を示すなど、不透明要因はくすぶるも引き締め姿勢を長期化する可能性は高まっていると判断できる。足下の国際金融市場では、米ドル高の動きが再燃していることを反映して豪ドルの対米ドル相場は上値の重い動きをみせているが、RBAのタカ派姿勢が意識されるなかで上下双方に動きにくい状況にあると見込まれるほか、日本円に対しても動意の乏しい展開となる可能性は高まっている。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ