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2024.08.14
アジア経済
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ニュージーランド準備銀が利下げに舵、先行きも継続的な利下げを示唆
~当面のNZドル相場はRBNZの継続的な利下げ見通しが重石になる可能性が高まっている~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド準備銀行は14日の定例会合で政策金利を25bp引き下げて5.25%とする決定を行った。RBNZによる利下げはコロナ禍後初であり、利下げ自体も4年ぶりとなる。RBNZは先月の定例会合でタカ派姿勢を後退させる考えをみせ、その後に想定以上のインフレ鈍化が確認されたため、金融市場では早期の利下げ期待が高まっていた。他方、足下の金融市場では米FRBの利下げが意識されて米ドル高の動きが一服しており、利下げ時期が大きく前倒しされたとみられる。今回の決定についてRBNZはインフレ鈍化に加え、実体経済の想定以上の下振れが確認されるなかで短期的な不必要な不安定化を回避するためとの理由を挙げる。また、先行きの政策運営については企業の価格決定行動とインフレ期待が2%に留まることを委員会が確信できることとの考えを示す一方、見通しでは継続的な利下げを示唆する動きをみせている。足下のNZドルの対ドル相場は米FRBの利下げ期待を受けて底打ちしたが、RBNZの継続的な利下げが意識されて当面は上値が抑えられる展開が見込まれる。日本円に対しても米ドル/円相場を反映して大きく調整し、足下では底打ちに転じたが、当面は政策の方向性の違いが意識される展開が続くであろう。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、14日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を25bp引き下げて5.25%とする決定を行った。同行による利下げ実施はコロナ禍以降で初めてであり、利下げそのものも4年ぶりとなる。RBNZは先月の定例会合において、長期に亘る抑制的な政策スタンスを受けてインフレが頭打ちの動きを強めており、年後半には目標域に回帰するとの見通しを示した上で、先行きの政策運営について「抑制度合いを予想されるインフレ圧力の低下に合わせて時間を掛けて緩和される」との考えを示すなど『タカ派』姿勢を後退させる姿勢をみせた(注1)。ニュージーランドでは、商品高やコロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨NZドル安による輸入インフレも重なり、インフレが大きく上振れする事態に直面した。よって、RBNZは物価と為替の安定に加え、金融緩和が長期化するなかで不動産市況が急騰してバブル化が懸念されたことに対応して利上げに動くも、インフレは一時30年ぶりの水準となるなど、利上げ幅は累計で525bpに達した。なお、商品高の動きが一巡したことを受けて昨年以降のインフレは頭打ちの動きを強めているものの、インフレ率は丸3年に亘って中銀目標(1~3%)を上回る水準で推移する展開が続いている。そして、直近4-6月のインフレ率は前年比+3.33%、コアインフレ率も同+3.45%とともに丸3年ぶりの水準に鈍化しており、直近の中銀見通しを上回るペースで鈍化していることが確認された(注2)。よって、金融市場ではRBNZが年内にも利下げに動くとの観測が高まる一方、米国のインフレ鈍化を受けて米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げが意識されて米ドル高の動きに一服感が出ており、NZドル安圧力が後退して輸入インフレ圧力が後退していることも重なり、利下げを大きく前倒ししたものと捉えられる。会合後に公表した声明文では、物価動向について「目標域に戻りつつある」とした上で、「先進国景気はトレンドを下回るなかでインフレは鈍化しており、一部の中銀は利下げを始めるなかで輸入インフレはコロナ禍前の水準に低下している」、「サービスインフレは依然高いが、国内外で低下が見込まれ、当面は目標の中央値付近に留まると見込まれる」として利下げを決定したとしている。その上で、先行きの政策運営について「緩和ペースは価格設定行動が低インフレ環境に一致し、インフレ期待が2%近傍で安定するとの委員会の確信次第」とする考えを示している。また、議事要旨では「先月の定例会合で確認された経済活動の鈍化がより顕著、かつ広範囲に及んでいる」との認識を共有した上で、「インフレ鈍化が確認されるなかで金融政策の緩和開始が可能になった」としつつ、「足下の実体経済が想定以上に急速に下振れする動きがみられ、短期的な不必要な不安定化を回避することを警戒している」との考えを示している。その上で、先行きの政策運営について「国内のインフレ圧力の後退を確実にすべく当面は引き締め姿勢を維持する必要がある」としつつ、「緩和ペースについては企業の価格決定行動が低インフレ環境に適応するとともに、インフレ期待が2%近傍に留まるとの委員会の確信に拠る」との考えを改めて強調している。しかし、金融政策報告で示された具体的なOCRの見通しについては「今年末に4.92%、来年末に3.85%、再来年9月末に2.98%」と5月時点(今年末に5.65%、来年末に5.14%)から大幅に下方修正されており、RBNZがこれまでに比べて大きくハト派に傾いている様子がうかがえる。金融市場においては、上述のようにRBNZが年内にも利下げに動くとの観測が強まるとともにNZドルの対米ドル相場は頭打ちする一方、足下では米FRBによる利下げが意識されるなかで米ドル高圧力が後退したことで底打ちに転じる動きが確認されてきた。しかし、先行きについてはRBNZが大きくハト派に傾いていることが確認されたことでNZドルの対米ドル相場は上値の重い展開となる可能性が高まっている。さらに、日本円に対しては米ドル/円相場の動きも相俟って大きく調整する展開が続いたものの、米ドルに対して底打ちしたことに加え、円高(米ドル安)の動きに一服感が出ていることも重なり底打ちしているが、当面は金融政策の方向性の違いを反映して上値が重くなる可能性は高まっていると判断できる。



注1 7月10日付レポート「ニュージーランド中銀はタカ派姿勢を後退、NZドル相場の行方は」
注2 7月17日付レポート「インフレ鈍化でニュージーランド中銀はどう動く?NZドルは?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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