- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- ニュージーランド準備銀が利下げを加速、NZドル相場の行方は?
- Asia Trends
-
2024.10.09
アジア経済
アジア金融政策
ニュージーランド経済
為替
ニュージーランド準備銀が利下げを加速、NZドル相場の行方は?
~米ドル高一服に加え、RBNZのハト派姿勢が上値を抑える展開となる可能性は高まっている~
西濵 徹
- 要旨
-
- ニュージーランド準備銀行は9日の定例会合で政策金利を50bp引き下げて4.75%とする決定を行った。同行は8月の前回会合でコロナ禍後初の利下げに動き、2会合連続の利下げに加えて利下げ幅を拡大させるなどハト派姿勢を強めている。足下の景気は力強さを欠く推移が続き、雇用も頭打ちの動きを強めるなか、同行は先行きのインフレが目標域に収束するとの見方を示す。その上で、今回の会合では25bpと50bpの利下げを検討したが、50bpの利下げが政策目標に合致するとともに、短期的なサプライズへの対応余地もあるとの見解を示している。先行きは経済動向次第としているが、8月会合時点に比べてハト派姿勢を強めていることは間違いない。NZドルの対米ドル相場は米ドル安を反映して底入れしたが、足下では頭打ちに転じており、当面は中銀のハト派姿勢が重石になるほか、日本円に対しても同様の展開が続くであろう。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、9日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を50bp引き下げて4.75%とする決定を行った。RBNZは8月の前回会合においてコロナ禍後初の利下げに動くとともに、先行きについても継続的な利下げを示唆する考えを示したものの(注1)、その際に示したペースを上回る利下げに動いた格好である。ニュージーランドでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、米ドル高を受けた通貨NZドル安による輸入インフレも重なり、インフレ率は一昨年後半に一時30年ぶりの水準に昂進する事態に直面した。よって、RBNZは物価と為替の安定を目的に累計525bpもの利上げを実施し、インフレ率も一昨年末を境に頭打ちに転じたものの、直近4-6月も前年比+3.33%、コアインフレ率も同+3.45%と丸3年ぶりの水準となるも、依然としてRBNZが定めるインフレ目標(1~3%)の上限を上回る水準で推移している。こうした状況ではあるものの、RBNZは先行きのインフレは目標域に回帰するとの見方を示した上で、先行きのOCRについても断続的な利下げを見込むなど、それまでタカ派姿勢を示してきた流れを一変させた。その背景には、物価高と金利高の共存状態が長期化するなかで内需が鈍化しているほか、中国の景気減速懸念などが外需の足かせとなるなか、足下の景気が力強さを欠く推移をみせるなど不透明感が強まっていることがある(注2)。さらに、昨年の総選挙を受けた政権交代後に実施されたRBNZ法改正に伴い、RBNZの政策目標は物価安定のみに変更されており、労働党政権下で付与された持続可能な雇用の最大化という政策目標は取り下げられているものの、足下の雇用の拡大ペースは鈍化するとともに、失業率も悪化の度合いを強めるなど雇用を取り巻く環境は厳しさを増す動きが確認されている。こうした状況を反映して、足下の企業マインドは一段と下振れするなど景気の弱さを示唆する動きもみられるとともに、需要の弱さが物価の重石となる可能性が高まっていることを受けて、RBNZは想定を上回る利下げに舵を切ったものと捉えられる。会合後に公表した声明文では、世界経済について「長期的なトレンドを下回る推移が続いており、今後1年間同様の展開が続く」との見方を示すとともに、同国経済についても「過剰生産能力が物価鈍化を招くとともに、家計、企業部門の需要の弱さが景気の足かせとなっている」との認識を示した上で、「利下げにより家計部門のキャッシュフローに影響を与えることが期待される」との見通しを示している。そして、物価動向についても「継続的に鈍化しており、企業の価格設定行動を勘案すれば7-9月には目標域に収束するとともに、中長期的には目標域の中央値(2%)近傍に留まる」との見方を示している。また、今回の決定に際して「国内外のリスクを考慮した」とした上で、「足下の市場のリスク評価は経済の下振れに対するサプライズに敏感と評価できる」としつつ、「物価動向についても想定外の事態が起こるリスクがある可能性」を考慮したとしている。その上で、今回会合では「25bpの利下げと50bpの利下げのメリットをそれぞれ協議した」としつつ、「低位で安定したインフレ維持という目標には50bpの利下げが最も合致する」と判断したとした上で、「見通しは8月会合時の声明と概ね一致しているが、50bpの利下げ実施にも拘らず依然として抑制的であり、短期的なサプライズにも対応可能」との見解を示している。他方、先行きの政策運営については「経済に対する評価次第」とするなど明確なスタンスは示さなかったものの、『ハト派』姿勢に傾く展開が続くことが予想される。NZドルの対米ドル相場を巡っては、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を受けた米ドル安の動きを反映して底入れする動きがみられたものの、足下では米国経済の堅調さが確認されるとともに、米ドル安の動きが巻き戻されていることを反映して頭打ちの動きを強めている。当面はRBNZのハト派姿勢の強さが意識される形で上値が抑えられる展開が続くと見込まれるほか、日本円に対しても同様にRBNZのハト派姿勢の強さが重石になる可能性に留意する必要があろう。



注1 8月14日付レポート「ニュージーランド準備銀が利下げに舵、先行きも継続的な利下げを示唆」
注2 9月19日付レポート「ニュージーランドの景気減速はRBNZの断続利下げを後押しするか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
フィリピン中銀、物価・為替安定を優先で3会合連続の利上げ ~インフレ高止まりとペソ安への警戒続く一方、景気減速が追加利上げのハードルに~
アジア経済
西濵 徹
-
ウォン高を後押しする韓国中銀のタカ派傾斜、2会合連続の利上げ決定 ~ドットプロットは追加1回利上げが最多、当面は様子見も、物価・為替の安定へタカ派維持か~
アジア経済
西濵 徹
-
タイ中銀、景気の急ブレーキ、バーツ安一服を受け、様子見姿勢を継続 ~インフレ鈍化やバーツ相場持ち直しの一方、先行きも難しい政策運営は続く~
アジア経済
西濵 徹
-
強含みする豪ドル、追加利上げ観測が引き続き堅調さを促すか ~RBAの「タカ派」姿勢の後押し材料は多く、ワーホリ規制の動きが影響する可能性も~
アジア経済
西濵 徹
-
米国がイランへの制裁強化発表も、事態打開の見通しは立たず ~米国は二次制裁の拡大を発表、イランも徹底抗戦の構え、事態のさらなる長期化も~
新興国経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
フィリピン中銀、物価・為替安定を優先で3会合連続の利上げ ~インフレ高止まりとペソ安への警戒続く一方、景気減速が追加利上げのハードルに~
アジア経済
西濵 徹
-
ウォン高を後押しする韓国中銀のタカ派傾斜、2会合連続の利上げ決定 ~ドットプロットは追加1回利上げが最多、当面は様子見も、物価・為替の安定へタカ派維持か~
アジア経済
西濵 徹
-
タイ中銀、景気の急ブレーキ、バーツ安一服を受け、様子見姿勢を継続 ~インフレ鈍化やバーツ相場持ち直しの一方、先行きも難しい政策運営は続く~
アジア経済
西濵 徹
-
強含みする豪ドル、追加利上げ観測が引き続き堅調さを促すか ~RBAの「タカ派」姿勢の後押し材料は多く、ワーホリ規制の動きが影響する可能性も~
アジア経済
西濵 徹
-
円と対照的な値動きをみせるウォンの行方を左右する韓国中銀人事 ~「タカ派」の上級副総裁の交代後も追加利上げの可能性は残り、ウォンは強含みが続くか~
アジア経済
西濵 徹

