インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

オーストラリア、物価鈍化も粘着度は高く、豪ドル相場も見通せず

~補助金が鈍化を促す一方で粘着度を窺わせる動きも、RBAの早期利下げは見通しにくい展開が続く~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀(RBA)は高金利政策に加え、タカ派姿勢を維持する展開をみせる。しかし、金融市場では米ドル高の再燃の動きも相俟って豪ドル相場は頭打ちの動きを強める一方、日本円に対しては方向感を欠く推移が続く。これは景気頭打ちや物価鈍化の動きが確認されるなか、RBAが早晩利下げに動くとの観測がくすぶることが影響している。足下のインフレも補助金の効果を反映して一段と鈍化して目標域で推移するなど落ち着きを取り戻している。一方、コアインフレは目標域を上回る推移が続き、堅調な雇用環境がサービス物価を押し上げるなどインフレの粘着度を窺わせる。RBAが重視するインフレ指標もまちまちの動きをみせており、これを以ってRBAが早期に利下げに動くと判断することは難しい。当面の豪ドルの対米ドル相場は米FRBの動向に揺さぶられるほか、日本円にも方向感が乏しい展開が続くと予想される。

オーストラリアでは、準備銀行(中銀:RBA)が高金利政策を維持するとともに、9月の定例会合においても先行きの政策運営に関連して、利下げを検討していないとの考えを示すなど『タカ派』姿勢を強調している(注1)。こうした状況ではあるものの、国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を受けた米ドル安の動きが一巡するとともに、足下では米国経済の堅調さが確認されるなかで米ドル高の動きが再燃する動きがみられる。結果、金融政策の方向性は米国(緩和)とオーストラリア(引き締め維持)の間で真逆の方向に向いているにも拘らず、豪ドルの対米ドル相場は米ドル高の動きを反映して頭打ちの動きを強めている。他方、日本円に対しては日銀の政策運営の方向感に対する不透明感が高まるなか、豪ドルの対米ドル相場の上値が抑えられる一方、日本円の対米ドル相場が調整の動きを強めるなかで双方が綱引きする展開が続いており、結果的に横這いで推移している。豪ドル相場がこうした動きをみせる背景には、上述のようにRBAはタカ派姿勢を強調する考えをみせているものの、足下の景気が頭打ちの動きを強めていることに加え、インフレ率も頭打ちの動きを強めていることも重なり、国際金融市場においてRBAが早晩利下げに動くとの観測がくすぶっていることも影響している(注2)。なお、足下のインフレ頭打ちを巡っては、アルバニージー政権が今年度から実施している電力料金を対象とする補助金政策によりエネルギー物価が押し下げられていることが影響している一方、不動産価格は引き続き上昇傾向にあるほか、雇用環境も底堅さがうかがえるなど、基調インフレの動向にこれまで以上に注意を払う必要性が高まっている。こうしたなか、RBAが重視する四半期ベースのインフレ率も7-9月は前年比+2.8%と前期(同+3.8%)から鈍化して3年半ぶりに目標(2~3%)の域内に回帰している一方、コアインフレ率(トリム平均値)は同+3.5%と前期(同+4.0%)から鈍化するも引き続き目標を上回る推移が続いている。前期比も+0.14%と前期(同+0.94%)から上昇ペースが鈍化しており、補助金政策の影響でエネルギー価格が下振れするとともに、輸送コストの低下を反映して幅広く財価格が下押しされる一方、雇用環境の堅調さがサービス物価を押し上げる動きが確認されるなど、物価を巡る動きは二極化している様子がうかがえる。そして、月次ベースのインフレ率をみると9月は前年比+2.1%と前月(同+2.7%)から一段と鈍化して3年2ヶ月ぶりの伸びとなるとともに、目標域の下限に一段と近付いている。なお、コアインフレ率は前年比+3.2%と前月(同+3.4%)から鈍化するも依然として目標域の上限を上回る推移が続く一方、RBAが注視する価格変動の多い財と観光関連を除いたベースでは前年比+2.7%と前月(同+3.0%)から鈍化して2年9ヶ月ぶりに目標域に回帰しており、基調インフレに対する見方を難しくさせることが予想される。他方、足下では補助金政策に加え、政権が今年度から実施している所得税減税の効果も重なり家計消費の底入れが確認されるとともに、頭打ちの動きを強める企業マインドや家計マインドも底打ちに転じており、堅調な雇用環境を下支えすることによりインフレ圧力を増幅させることも考えられる。よって、足下のインフレ鈍化の動きを受けてRBAが早々に利下げに動く可能性が高まったと判断するのは難しく、豪ドルの対米ドル相場については引き続き米FRBの政策運営に対する見方に左右されるほか、日本円に対しても方向感の定まらない展開が続くと見込まれる。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ