インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

オーストラリア中銀、当面の金利据え置き示唆でタカ派姿勢を維持

~豪ドルは米ドルに対して強含みしやすい一方、日本円に対しては難しい局面が続くか~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀行は24日の定例会合で政策金利を7会合連続で4.35%に据え置いた。ここ数年のインフレ昂進を受けて同行は累計425bpの利上げに動いたが、一昨年末をピークにインフレは頭打ちに転じているほか、足下の実体経済は頭打ちが確認されている。他方、足下のインフレは依然目標を上回る推移が続き、不動産価格も大都市部を中心に上昇が続く。同行からはブロック総裁をはじめタカ派的なスタンスを示す発言が相次ぐ一方、金融市場では実体経済の頭打ちを理由に早期の利下げ観測がくすぶる。与党の労働党内から利下げを求めるけん制の動きも顕在化しており、同行の見方に注目が集まっている。

  • 会合後に公表した声明文では、物価動向や実体経済、先行きの政策運営に対する見方について従来からのタカ派姿勢をあらためて強調する考えを示している。なお、同行のブロック総裁は政府による生活支援策が短期的なインフレ鈍化を促すとの見方を示す一方、基調インフレの動向を注視するとして慎重姿勢を崩さない。その上で、当面の政策運営を巡っては現行水準での据え置きを示唆する考えを示した。追加利上げのハードルは高まっていると判断される一方、当面の豪ドル相場は金融政策の方向性の違いが米ドルに対して比較的堅調な推移を促すと見込まれるが、日本円に対しては上値が抑えられる展開が続こう。

オーストラリア準備銀行(RBA)は、24日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利(オフィシャル・キャッシュ・レート)を7会合連続で4.35%に据え置く決定を行った。ここ数年の同国では、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を反映した通貨豪ドル安による輸入インフレも重なり、インフレは大きく上振れした。RBAは物価と為替の安定を目的に累計425bpの利上げに動くとともに商品高の一巡も追い風に、一時は33年ぶりの水準に昂進したインフレは昨年以降に頭打ちの動きを強めてきたものの、足下においても3年以上に亘って中銀目標(2~3%)を上回る推移が続いている。なお、足下のインフレ動向を巡っては、月次ベースでみると伸びが一段と鈍化する動きが確認されているほか(注1)、実体経済も金利高と物価高の共存が長期化していることを受けて家計消費や企業部門の設備投資など内需を中心に頭打ちするなど(注2)、インフレ鈍化に繋がる動きが確認されている。他方、金利高の長期化により不動産供給が細る一方、移民をはじめとする外国人来訪者数の堅調な流入を反映した需要拡大を受けて不動産市況は大都市部を中心に上昇が続いている。アルバニージー政権は昨年以降に不動産需要の抑制を目的に移民政策を転換させるなどの強硬策に動いているものの、足下の不動産価格は全土平均で1年半以上に亘って上昇が続くなど最高値を更新する展開をみせている。ただし、足下では8つある州、および特別区の州都のうちキャンベラ、メルボルン、ダーウィン、ホバートの4都市において不動産価格は下落に転じるなど、地域ごとに跛行色が強まっている様子がうかがえる。よって、RBA内ではブロック総裁を中心にタカ派姿勢を繰り返し主張する動きをみせる一方、金融市場においては実体経済の頭打ちに加え、不動産市況を取り巻く環境にも変化が生じていることを受けて早晩RBAが利下げに動くとの見方がくすぶる。さらに、アルバニージー政権を支える与党労働党内からは、チャーマーズ財務相が「高金利政策によって国内経済が打撃を受けている」と発言しているほか、スワン元財務相も「RBAが家計に打撃を与えており、合理的な意思決定よりも教義(ドグマ)を優先している」などと述べるなど批判が強まる動きもみられる。そして、連邦議会下院において『第3極』の立場を取る緑の党は、政権が提出したRBA改革法案を巡って支持と引き換えに利下げを要求する動きをみせるなど、RBAに対する『政治的圧力』が強まる動きもみられる。こうしたことから、RBAの物価や景気に対する見方に注目が集まっている。

図1 インフレ率の推移
図1 インフレ率の推移

図2 コアロジック住宅価格指数の推移
図2 コアロジック住宅価格指数の推移

なお、会合後に公表した声明文では、足下の物価動向について「目標を依然上回るとともに、持続的な状況にある」との認識を示した上で、先行きについては「連邦政府や州政府による生活支援策の影響で一時的な鈍化が見込まれる」としつつ「直近の見通しではインフレが持続的に目標域に回帰するのは2026年以降」との見通しを示している。また、見通しについて「依然として極めて不透明」とした上で、足下の景気動向について「弱さを裏付ける動きがみられる」としつつ「家計消費は弱含む一方で来訪者の流入が消費を下支えする展開が続いている」ほか、「賃金上昇圧力は幾分緩和するも、労働生産性は底入れするも低い伸びに留まる」、「労働需給は依然タイトな状況が続いている」との見方を示す。その上で、足下の状況について「政策は想定通り機能している一方、労働市場や企業の価格決定行動、賃金の動向などを巡って不確定要素もくすぶる」としたほか、「海外経済の先行きに対する不透明感もくすぶる」として「中国経済の行方や地政学リスク」を注視する考えを示している。先行きの政策運営についても「インフレを目標域に戻すことを最優先」とする従来からの考えを強調しつつ、「インフレは一時的な下振れが見込まれるが、基調インフレは依然として高すぎる」とし、「インフレが持続的に目標域に収束するにはしばらく時間を要する」、「足下のデータはインフレ上振れのリスクに対する警戒維持を示唆している」とした上で「如何なる状況も容認も否定もせず、インフレ抑制が確信されるまで十分に引き締め姿勢を維持する必要がある」と従来からのタカ派姿勢を維持した格好である。その上で、政策判断についても従来通り「データとリスク次第」としつつ、「インフレを目標域に戻す断固とした決意は変わらず、この実現に向けて必要なことを行う」という従来からの考えをあらためて強調している。そして、会合後の記者会見に臨んだ同行のブロック総裁は、当面の政策運営について「足下の経済指標が政策見通しに実体的な影響を及ぼしていない」との見方を示した上で、「しばらくは据え置かれる」との考えを示している。その上で、物価動向について「短期的な見通しを幾分弱めており消費を巡るリスクも幾分抑制されている」「基調インフレも緩やかな鈍化が見込まれる」とした上で、政策運営について「明示的な形で利上げの検討は行っていない」「今回の会合では議論の形式を変更した」とするなど、これまでに比べてややタカ派姿勢が後退している可能性が考えられる。ただし、物価動向を巡っては「月次データはかなり振れている」とした上で、政府による生活支援策について「エネルギー価格の下落が生活コストの抑制に繋がると期待される」「インフレ率は目標域に回帰が見込まれる」としつつ、「基調インフレに影響を与えるものではない」との見方を示している。そして、金融政策についてはあらためて「国内環境に拠って決まるもの」との考えをみせる。なお、金融市場との対話を巡って「対話の仕方の変更について議論を行った」とした上で、「短期的に利下げを検討していない」としつつ「データ次第でどちらの方向にも対応できるよう準備する」、「最終的にどれくらいの規模で利下げするかは考えていない」、「時が来ればその程度になるか議論する」と現状ではない考えをあらためて示した。また、豪ドル相場について「他の国々が利下げに動くなかで金利を据え置けば下支え要因になる」との見方を示す一方、景気動向について「リセッションの回避を目指しているが保障できるものではない」として、あくまで物価抑制を重視する可能性を示唆したものと捉えられる。足下の豪ドル相場は米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げを織り込む形で米ドル安が進むなか、対米ドルでは年初来の高値水準となるなど底入れしており、当面はRBAのタカ派姿勢を反映した底堅い展開が続く可能性が高まっている。他方、日本円に対しては日本銀行が追加での金融引き締めに動く可能性を崩しておらず、一方でRBAが追加利上げに動く可能性が低いことを勘案すれば、上値の重い展開となる可能性に留意する必要があろう。

図3 豪ドル相場(対米ドル、日本円)の推移
図3 豪ドル相場(対米ドル、日本円)の推移

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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