資金循環統計(2024年4-6月期)

~拡大の続く企業の資金余剰~

星野 卓也

要旨
  • 家計部門は2四半期連続で資金余剰が続いた。4-6月期の個人消費は自動車販売の増加で比較的高い伸びとなる一方、賃上げや定額減税の効果で所得側も増加しているとみられ、余剰幅は横ばいに落ち着いたものとみられる。 企業部門は資金余剰が拡大傾向にある。趨勢的には海外部門の資金不足(日本の経常黒字)に対応して、資金余剰幅を拡大させている。原油価格の落ち着きや円安による対外投資収益の増加が経常黒字を拡大させており、企業の資金余剰に結びついている構図である。政府部門の資金不足は趨勢としては緩やかに赤字を縮小させているが、次四半期には定額減税による税収減の影響から縮小傾向を一服させる可能性があろう。

  • 新NISA開始などを受けた株式や投信のフローは変わらず堅調である。4-6月期の家計からの株式・投資信託受益証券へのフローは3.5兆円のプラスで1-3月期の2.0兆円から拡大した。前回レポートでも指摘した点だが、新NISA影響も含めコロナ後の家計のリスク性資産投資の増加に合わせて、生命保険など保険のフローが減少しており、趨勢としては“保険から投資へ”の絵姿となっている。 24年6月末の家計の金融資産残高は2,212兆円と前期(2,186兆円)から+25.8兆円増加、過去最高を更新した。内訳をみると現預金が+8.5兆円、株式等・投資信託受益証券が+9.7兆円、対外証券投資が+4.1兆円の増加。ドル円レートは3月末151円→6月末161円と円安が進んでおり、外貨建て資産の為替を通じた評価額増が主な要因になっているとみられる。

  • 民間非金融法人企業の資産側フロー(4四半期移動平均値)は直近+15.9兆円となった。対外直接投資が+4.9兆円と大きいウェイトを占める構図も不変。負債側フローでは貸出が増加傾向にあり、コロナ前の水準感を上回るようになっている。足もと、企業の設備投資は緩やかに上向いており、資金需要が増していることを映じている可能性がある。

  • 一般政府債務のGDP比(2024年6月末)は総債務が235.5%(前期末:241.7%)と低下、純債務86.4%(前期末:93.8%)へ低下した。政府総債務/GDPは政府赤字を名目GDPの増加が相殺する形で低下、純債務は円安などによる政府資産増を背景にさらに低下傾向が明確になっている。また、政府による基金事業の増加などに伴って、政府の現預金も高い水準での推移が続いており、総債務と純債務の水準感が以前より乖離するようになっている。なお、足元の円高進行を踏まえると、次四半期には純債務GDP比は上昇に転じる可能性が高そうだ。   

  • 中央銀行(日銀)の金融資産は6月末時点で785.9兆円(前期末:796.9兆円)と減少した。内訳をみると、債務証券は576.3兆円(前期588.5兆円)へと減少。日本銀行の国債保有比率は46.93%(前期47.39%、国庫短期証券を含む)へ低下した。日銀は7月会合で国債買い入れの段階的な減額方針を決めており、先行きも同様の傾向が続きそうである。

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星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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