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2024.09.10
アジア経済
米中関係
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アジア金融政策
中国経済
中国貿易は駆け込みの動きと内需の弱さを反映する展開が続く
~「中国包囲網」の動きが広がるなか、世界経済にはけん引役不在となる可能性が高まっている~
西濵 徹
- 要旨
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- このところの中国経済は内・外需双方で不透明要因が山積する。外需を巡っては、欧米に加えて新興国の間でも中国製品に対する関税引き上げを模索する動きがみられる。足下の輸出はそうした影響の掻い潜りを模索する動きがみられ、8月の輸出額も前年比+8.7%に加速している。中国の過剰生産が懸念される分野を中心に企業が受注の掃き出しの動きを強めており、駆け込みの動きが下支えする動きがみられる。
- 内需を巡っては不動産不況とディスインフレ圧力が重石となる動きがみられる。一方、欧米などが経済安全保障を理由に包囲網の動きを強めるなかで内製化に向けた動きを活発化させており、半導体や生産設備などの輸入量は堅調な推移をみせる。ただし、先行きの生産下振れを警戒して素材・部材などの輸入量は軒並み下振れしており、市況低迷の動きも相俟って輸入額に下押し圧力が掛かっているとみられる。
- 先行きの外需は欧米やカナダのほか、新興国の間でも中国に対する関税引き上げの動きが広がり、人民元安による価格競争力向上にも拘らず弱含むと見込まれる。内需の弱さも相俟って当面の景気は力強さを欠くなか、世界経済にけん引役の存在せず、世界経済や金融市場のかく乱要因となることが見込まれる。
このところの中国経済を巡っては、内・外需双方に不透明要因が高まる展開が続いている。内需を巡っては、若年層を中心とする雇用回復が遅れていることに加え、不動産市況の調整による資産デフレをきっかけに幅広い分野でバランスシート調整圧力が強まり、家計消費や企業部門による設備投資需要など民間需要を中心に力強さを欠く推移が続いている。他方、こうしたなかで景気は外需への依存度を強めることが見込まれるものの、ここ数年の世界経済の分断の動きを追い風に世界的なサプライチェーンの見直しの動きが活発化するなど外需を取り巻く環境は厳しさを増している。さらに、中国国内における過剰生産が世界的な需給悪化を招くことを警戒して、欧米やカナダが不公正な競争環境や経済安全保障を理由に中国製品に対する追加関税を課す動きをみせる。また、ここ数年の世界的な分断に際して欧米による強硬姿勢に追随しなかった新興国の間にも中国の過剰生産による『デフレの輸出』を警戒する向きが広がり、中国製品に対する関税引き上げを模索する動きもみられる。このように『中国包囲網』とも呼べる動きが広がるが、足下の輸出はそうした状況の掻い潜りを模索する動きが確認された(注1)。8月の輸出額も前年同月比+8.7%と前月(同+7.0%)から伸びが加速するとともに、当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比も3ヶ月ぶりに拡大するなど、上述のように包囲網の動きが広がるなかで駆け込みの動きが加速している様子がうかがえる。国・地域別では、EU向け(前年比+13.4%)や米国向け(同+4.9%)が堅調な推移をみせるとともに、ASEAN向け(同+9.0%)や中南米向け(同+19.7%)など新興国向けも旺盛な推移が続いている。さらに、ここ数ヶ月は頭打ちの兆しがみられたロシア向け(前年比+10.4%)も底入れの動きを強めており、受注の掃き出しに向けた動きが加速している可能性が考えられる。こうした動きは財別の動きにも現れており、電気機械関連(前年比+11.9%)やハイテク製品関連(同+9.1%)で堅調な動きがみられるほか、包囲網の対象となっているアルミ(同+24.1%)や鉄鋼製品(同+6.8%)などの輸出額が引き続き旺盛に推移していることに現れている。よって、足下の景気は外需に対する依存度を一段と強める展開が続いていると捉えられる。

一方、上述したように内需は力強さを欠く推移が続いており、その一因となっている不動産不況の脱却の道筋が描きにくい状況にあるとともに、資産デフレの動きが重石となるなかでディスインフレ基調が強まる動きも確認されるなど、不透明感が一段と高まっている様子がうかがえる(注2)。こうした状況を反映して8月の輸入額は前年同月比+0.5%に留まるとともに、前月(同+7.2%)から伸びが鈍化しているほか、当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比も2ヶ月ぶりの減少に転じている上、中期的な基調も減少傾向で推移するなど頭打ちの動きを強めている。なお、『中国包囲網』の動きは中国国内における過剰生産による輸出拡大の動きに加え、中国国内における生産活動にも及んでおり、欧米などは経済安全保障の観点から先端半導体をはじめとする生産設備などの輸出を制限する動きをみせている。こうしたなか、習近平指導部は製造業強国や中国式現代化の実現に向けて様々な製品の内製化を目指す動きを強めているほか、素材や部材の輸入を前倒しで活発化させる動きもみられる。そうした動きを反映して、輸入量ベースでは半導体(前年比+23.9%)や集積回路(同+14.5%)などの輸入が大幅に前年を上回るなど旺盛な推移をみせているほか、機械製品関連(同+8.2%)も堅調に推移するなど需要を活発化させている様子がうかがえる。また、今夏は異常気象の頻発を理由に中国国内における農業生産に下押し圧力が掛かるとともに、食料インフレの動きが顕在化する動きがみられるなか、そうした悪影響を緩和させるべく農産品の輸入を活発化させており、数量ベースで大豆(前年比+29.7%)の輸入量が大きく上振れするなど底入れする動きもみられる。一方、夏場にかけてのエネルギー需要拡大の動きが一巡することを見越す流れを反映して石炭(前年比+3.4%)の伸びは大きく鈍化しているほか、原油(同▲7.0%)の輸入量もともに下振れしており、このところの市況調整の動きも相俟って輸入額を下押ししている。さらに、先行きの生産鈍化を見越した原材料需要の下振れの動きを反映して鉄鉱石(前年比▲4.7%)や銅鉱石(同▲4.6%)、プラスティック原材料(同▲7.1%)の輸入量はともに前年を下回る伸びに転じている上、鉄鋼製品(同▲20.5%)や銅製品(同▲12.3%)の輸入量もともに下振れするなど需要自体が弱含んでいる様子がうかがえる。これらの製品の輸入量が下振れしている背景には、中国国内における過剰生産の動きが進んでいるにも拘らず、内需の低迷により在庫が積み上がっており、玉突き的に悪影響が及んでいる可能性が考えられる。よって、中国向け輸出依存度の高い国々にとって景気の足かせとなることは避けられないとみられる。

先行きの外需については、上述のように欧米やカナダが追加関税を発動させていることに加え、新興国のなかからもインドをはじめ、インドネシアやタイ、マレーシア、ベトナムといったASEAN諸国のほか、トルコなども中国製品に対する関税引き上げを検討する動きをみせており、昨年来の人民元安による価格競争力向上の効果を相殺することが見込まれる。他方、内需については足下では米ドル安の動きを反映して人民元相場の底入れにより資金逃避の懸念が幾分後退しているほか、ディスインフレ圧力が強まるとともに、不動産不況による資産デフレへの対応を理由に金融市場では一段の政策対応を期待する向きが強まっているものの、現実には小出しの対応が続く可能性が高いと見込まれる。よって、当局は今年の経済成長率目標を5%前後と設定しているものの、その実現のハードルは着実に高まっていると見込まれる。他方、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米など主要国景気の勢いにも陰りが出ており、当面の世界経済にとってはけん引役不在の状態となる可能性が高まっており、そうした状況は世界経済、ひいては国際金融市場のかく乱要因となるものと予想される。
注1 8月8日付レポート「中国、7月貿易統計は「駆け込み」の動きを反映している模様」
注2 9月9日付レポート「中国の不動産不況とディスインフレ脱却の道のりは容易でない状況」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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