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2026.07.07
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フィリピン・サラ副大統領への弾劾裁判開始
~弾劾の行方は不透明だが、経済を無視した政局争いを市場はどうみるか~
西濵 徹
- 要旨
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フィリピン元老院は7月6日、サラ・ドゥテルテ=カルピオ副大統領の弾劾裁判を開始した。サラ氏はドゥテルテ前大統領の長女で、2028年大統領選の最有力候補とされており、解職が決定すれば公職資格を失い出馬が困難となる。同国政界におけるマルコス大統領派とドゥテルテ派の確執が背景にあるものの、現時点においてその結果は不透明と考えられる。
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弾劾を巡っては2025年に機密費不正使用疑惑等を理由とする申し立てが行われ、代議院で可決されたものの、元老院は一旦弾劾訴追を差し戻し、同一年内の複数回弾劾を禁じる規定により申し立て自体も無効化された。その後最高裁が手続きの違憲性を認めつつ再申し立てを可能とする判断を下したことを受け、市民団体が改めて申し立てを行い、代議院で圧倒的多数で可決、今回の裁判開始に至った。サラ氏は初日の審理を欠席し、弁護団のみが出席。機密費不正使用疑惑(計6億ペソ)について全面的に争う姿勢を示している。
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経済面では、中東情勢緊迫化による原油高から「エネルギー国家非常事態」を宣言する事態となったが、米イラン停戦を受け原油高は一服し最悪期を脱しつつある。一方、エルニーニョによる干ばつ・水不足で食料インフレリスクが上昇し、ペソ安による輸入インフレ懸念も強まっている。中銀は資本取引規制の強化を示唆しており、今後の政策対応が注目される。
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フィリピン国会の上院(元老院)は、7月6日にサラ・ドゥテルテ=カルピオ副大統領の解職の是非を審理する弾劾裁判を開始した。サラ氏はドゥテルテ前大統領の長女であり、2028年に実施される次期大統領選への出馬表明を行っており、出馬が取り沙汰される候補のうち最も支持率が高く、次期大統領の最有力候補とされる。仮に解職となれば、公職に就く資格を失う可能性があり、次期大統領選への出馬が困難になる。フィリピン政界ではここ数年、マルコス大統領(マルコス家)とサラ氏(ドゥテルテ家)の確執が鮮明になっている。解職には3分の2以上の賛成が必要となるものの、元老院(総議席数24)においてマルコス派は3分の2にわずかに届かない水準にとどまる。このため、現時点においてはその行方は不透明と考えられる。
サラ氏を巡っては2025年、副大統領府と教育省の機密費の不正使用疑惑と出所不明の蓄財疑惑を理由に、市民団体が弾劾の申し立てを行った。さらに、その審理結果を待たないタイミングで、マルコス大統領夫妻と大統領の従兄弟であるロムアルデス前下院議長に対する殺害予告を理由に別の弾劾申し立てが行われた。国会下院(代議院)は2025年、これらの申し立てを受理したうえで、賛成多数で可決した。その後、元老院は弾劾裁判所を一旦設置したものの、審理の末に弾劾訴追そのものを代議院に差し戻す決定を行った。さらに、弾劾裁判所では、現行憲法における同一の公職者に対する弾劾手続きを1年以内に複数回行うことを禁じる規定を理由に、申し立て自体を無効とする動議が提出され、賛成多数で可決された。その後に最高裁判所は、弾劾手続きの違憲性を理由に無効とする一方、訴追内容自体を免責するものではないとして、再度の申し立てや訴追を可能とする判断を下した。
最高裁による判断を踏まえ、市民団体はあらためて代議院にサラ氏に対する弾劾申し立てを行った。その後、代議院は弾劾訴追に正当な理由があると認定したうえで、圧倒的多数による賛成で可決された(注1)。今回の弾劾裁判所はこの決定に基づく形で設置されており、マルコス家とドゥテルテ家を巡る政局争いは裁判の場へと移った。なお、サラ氏は初日の審理には出席せず、弁護団のみが出席した。サラ氏側は、弾劾事由となっている計6億ペソの機密費の不正使用疑惑について、根拠がないとして全面的に争う考えを示している。
同国経済を巡っては、中東情勢の緊迫化を受けた原油高をきっかけに「エネルギー国家非常事態」を宣言するなど厳しい状況に直面している。足元では、米国とイランによる停戦合意を受けて原油高は一服するなど落ち着きを取り戻しており、最悪期を過ぎつつある。一方、エルニーニョ現象の発生により、同国では干ばつと水不足を理由とする農業被害が懸念されるなど食料インフレのリスクが高まっている。金融市場においては、ペソ相場に調整圧力がかかるなど輸入インフレの懸念も高まっている。同国では、元々資本取引に一定の制限がかかっているものの、中銀はペソ安の進行を受けて規制強化の可能性を示唆しており、強力な政策対応に舵を切る可能性にも注意が必要になっている。

注1 5月21日付レポート「フィリピン議会下院、サラ副大統領への弾劾訴追を再び可決」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

