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2024.07.17
アジア経済
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インフレ鈍化でニュージーランド中銀はどう動く?NZドルは?
~貿易財で物価下落も非貿易財・サービスで物価上昇続くが、年内利下げ観測の高まりが影響を与える~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランドでは過去3年以上インフレ率が中銀目標を上回る推移が続く。インフレの粘着度が意識されるなかで中銀は5月に利上げに言及するタカ派姿勢をみせたが、今月の定例会合では将来的な利下げに言及するなど一転してハト派に傾く動きをみせた。こうした見方を反映してNZドル相場は下振れしたが、4-6月のインフレ率は前年比+3.33%、コアインフレ率も同+3.45%とともに丸3年ぶりの伸びに鈍化している。貿易財で物価が下落する一方、非貿易財やサービス物価に上昇圧力がくすぶり、金融政策の影響を受けにくい分野を中心にインフレの粘着度の高さを示唆する動きがみられる。こうした状況ながら金融市場ではインフレ鈍化を受けて中銀が年内にも利下げに動くとの観測が強まることが予想され、当面のNZドル相場は上値が抑えられる展開が続き、日本円に対しては米ドル高一服の動きも重石になるであろう。
ニュージーランドでは3年以上に亘ってインフレ率が中銀目標を上回る推移が続いている。中銀は2021年10月以降に物価と為替の安定を目的に累計525bpの利上げに動く一方、一時は30年ぶりの水準に昂進したインフレも昨年以降は頭打ちに転じる動きをみせてきたものの、上述のようにインフレは高止まりしている。よって、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる展開が続いており、昨年後半の同国経済は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッションに陥るなど厳しい状況に直面している。なお、今年1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+0.71%と3四半期ぶりのプラス成長に転じるなど底打ちしているものの、中期的な基調を示す前年同期比ベースでは+0.3%とゼロ近傍に留まるなど力強さを欠く推移が続く。こうした状況ながら、年明け直後のインフレを巡っては非貿易財やサービス物価を中心に上昇圧力がくすぶるなどインフレの粘着度の高さを示唆する動きが確認された。よって、中銀は5月の定例会合において政策金利を据え置く決定を行う一方、利上げの可能性を議論した旨を明らかにするとともに、これまでの想定に比べて長期に亘って抑制的なスタンスを維持する必要があるとの認識を示すなど『タカ派』姿勢を強調する動きをみせた(注1)。他方、その後は中東情勢の不安定化などを理由に昨年以降底入れの動きを強めた国際原油価格は頭打ちに転じているほか、異常気象を理由に上振れした穀物価格の動きにも一服感が出るなど、生活必需品を中心とするインフレ懸念の後退に繋がる動きがみられる。さらに、国際金融市場を巡る状況を動かす一因となってきた米FRB(連邦準備制度理事会)の政策運営に対する見方が変化していることを反映して米ドル高圧力に一服感が出ており、輸入インフレ圧力の後退に繋がることも期待される。こうした物価を巡る動きの変化を反映して、中銀は今月の定例会合でも政策金利を据え置く一方、先行きの政策運営について想定通りにインフレが鈍化すれば抑制度合いは時間を掛けて緩和されると将来的な金融緩和を示唆するなどタカ派姿勢を後退させており、スタンスがハト派に傾きつつある様子がうかがえる(注2)。オセアニアにおいては、隣国のオーストラリア中銀が先月の定例会合において同行のブロック総裁があらためてタカ派姿勢を強調する考えをみせており(注3)、中銀が対照的にタカ派姿勢を後退させたことを反映して足下のNZドルは豪ドルに対して弱含む展開が続いている。こうしたなか、4-6月のインフレ率は前年同期比+3.33%と引き続き中銀目標(1~3%)を上回る推移が続くも前期(同+4.02%)から一段と鈍化して丸3年ぶりの伸びとなるなど一段と頭打ちの動きを強めている様子が確認されている。前期比も+0.39%と前期(同+0.64%)から上昇ペースが鈍化しており、昨年後半以降における国際原油価格の底入れ一服を反映してエネルギー価格の上昇ペースが鈍化しているほか、食料品価格も落ち着きを取り戻す動きをみせるなど、生活必需品を中心にインフレ圧力が後退していることが影響している。なお、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率も前年同期比+3.45%とインフレ目標を上回る伸びが続くも、前期(同+4.06%)から一段と鈍化してインフレ率同様に丸3年ぶりの伸びとなるなど頭打ちの動きを強めている。前期比も+0.32%と前期(同+0.88%)から上昇ペースが鈍化しており、貿易財を中心とする財価格の下落が物価の重石となる動きが確認される一方、非貿易財やサービス物価については上昇が続くなどインフレの粘着度の高さを示唆する動きもみられる。これは住宅価格の高止まりを受けた家賃上昇や住宅建設費の押し上げのほか、地方税の上振れや保険料の高止まりなど、過去に中銀が金融政策の動向を受けにくいとした分野を中心にインフレ圧力がくすぶることも確認されている。足下のNZドル相場を巡っては、上述のように中銀が将来的な利下げを示唆する動きをみせたことを受けて、対米ドルでは上値が抑えられる展開が続いてきたほか、日本円に対しては米ドル高一服の動きを反映した円安の流れが変化していることも重なり大幅に調整する動きをみせている。金融市場においてはインフレ鈍化を受けて中銀が年内にも利下げに動くとの観測が強まることが予想されるとともに、そうした見方がNZドル相場の重石となる展開が続く可能性は高まっている。



注1 5月22日付レポート「ニュージーランド中銀、タカ派姿勢強調でNZドル相場はどうなる」
注2 7月10日付レポート「ニュージーランド中銀はタカ派姿勢を後退、NZドル相場の行方は」
注3 6月18日付レポート「オーストラリア中銀はタカ派姿勢堅持、豪ドルの底堅さを促すか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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